Monday, May 3, 2021

ガソリンエンジン車の究極の姿か アウディ「RS5クーペ」(Vol.617) - 読売新聞

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 ドイツのアウディ「A5」シリーズのうち、もっとも高性能な車種のひとつが「RS5クーペ」である。車名にクワトロと付かないが、同社が得意とする四輪駆動を採用している。

 搭載のガソリンエンジンは、排気量2893ccのV型6気筒でターボチャージャーにより過給され、最高出力は450馬力に達する。8速の自動変速機に加え、運転席も体全体をしっかり支えるバケットシート形状のため、実際に座ると、これから高性能車を走らせるのだという思いを強くする。

 エンジンを始動させると腹に響くような排気音だ。でも、いざ走りだして市街地の交通の流れにのる程度の速度であれば室内はいたって静かだ。高性能車ということを忘れてしまいそうで、想像以上の快適な乗り心地に驚かされた。見るからに高速走行に向いた扁平(へんぺい)タイヤを装着するが、路面の凹凸を巧みにいなし、体に衝撃を伝えないサスペンション設定となっている。

 山間部の屈曲路に入り、アクセルペダルを深く踏み込むと、たちまちエンジンがうなるように力を絞り出し、瞬く間に高速域へと導いていく。高鳴るエンジン音とともに景色は後ろに飛び去っていく。

 一方で、恐怖心を覚えさせないのは、タイヤが的確に路面をとらえているとの感触が伝わってくるからだろう。さらに、市街地で路面の凹凸をいなすように走ったサスペンションの仕立てのよさ、四輪駆動であることも影響していると思われる。

 ブレーキは、わずかなペダル操作の強弱にも反応し、正確に制動力を加減する。そして速度を整え、カーブを曲がる際は、あらかじめ決められたレールをなぞるかのように、きれいに曲がり、カーブを終えて再びアクセルペダルを踏み込むと、透き通った排気音が山間にこだました。運転者の操作通りに動き、まさしくクルマと一体となったかのような快い運転を楽しむことができた。

 試乗後、アウディ日本法人の広報部長が「ガソリンエンジン車を楽しむのもそろそろ最後かもしれない」と語った。脱炭素時代を控え、ガソリンエンジン車の究極の姿の一つを味わい尽くした思いになる。今回感じた感覚は、同社の電気自動車(EV)「e‐tron」の試乗時の感動に相通じるものがある気がした。エンジン、モーターのどちらが優れているかといった議論を超え、いかにクルマとして完成度の高い領域に近づいているかどうかが、運転者を喜ばせるのだろう。

 アウディの企業精神は「技術による先進」だが、単に技術的に優れているだけでなく、人が喜びを覚える走りを提供できるかどうかが、その言葉には含まれていると思う。その精神は、このクルマで確認できた。

 「いい運転の一日だった」と、試乗後に思えた日であった。

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