Thursday, January 30, 2020

最大トルク発生回転数は3000rpm、この低回転エンジンは頼もしい存在だ。/モト・グッツィ・V9 BOBBER SPORT - MotorFan[モーターファン]

イタリアの名門ブランド、『モト・グッツィ』は伝統の縦置きVツイン・エンジンとシャフトドライブの組み合わせに定評がある。新しくはSOHC 1.4Lを搭載するカリフォルニアがあるが、日本に導入されている現在のラインナップは744ccのV7系と、853ccのV9(含むV85)系の2タイプのみ。今回の試乗車はV9 BOBBERをよりアグレッシブしたスポーツカスタムである。

REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO⚫️山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

 モト・グッツィ・V9 BOBBER SPORTが国内市場で販売開始されたのは2019年2月の事。既にリリースされていたV9 BOBBERをベースに、より低く設定されたシングルシーターへ改造された。リヤの2本ショックはスプリングのプリロードはもちろん、油圧ダンパーの伸び圧それぞれに減衰調節できるリザーバータンク付きのオーリンズ製に換装。
 セリアーニタイプのフロントフォークには摺動部分を傷付きから保護するゴム製の黒いフォークブーツを装備。
 ステアリング周辺パーツも変更されてドラッグバーハンドルと組み合わせることで、独自のライディングポジションを構成。低い着座位置ながらもどこかアグレッシブな雰囲気が醸し出されている。

 もともとBOBBERは、スタンダードスポーツのV9 ROAMERに対してマット仕上げのブラックマフラーや極太前後タイヤのマッチングで少しワイルドなキャラクターが主張されていたが、同SPORTはさらに強調された。
 オリジナルのフロントフェアリングやサイドカバー、そして後端がスラッシュカットされたスリップオンマフラーもアルミ製。フロントフェンダーはさらにコンパクトなデザインを採用。細部からクロームパーツを削減してマットブラックを強調する重厚感のあるデザインも新鮮である。
 
 タンク&シートレールがストレートにデザインされたスチールパイプ製ダブルクレードルフレームに搭載されたエンジンは伝統の空冷OHV 2バルブの縦置き90°Vツイン。ちなみに縦置きとはクランク軸の配置方向を示している。バイクやクルマの主流は今や横置きだが、動力取り出し回転方向の関係で、シャフト駆動とは相性が良い。
 ボア・ストロークは84×77mmのショートストロークタイプで、排気量は853cc。マレリ製の電子制御式燃料噴射装置を採用。ひとつのスロットルボディで左右バンクへの燃焼ガス供給を担っている。最高出力は55HPを6250rpmで発揮。62Nmの最大トルクは3000rpm。いずれも低めな回転域で発揮されるところがモト・グッツィらしい特徴と言える。

 試乗車を目前にすると、奇をてらわない如何にもオーソドッスな手法でデザインされた全体のフォルムに、どこかホッとする気持ちになる。もともとは鮮やかな色でアクセントをあしらうオシャレなカラーデザインが印象的なブランドだったが、マットブラックを主体とするカラーリングに、改めて新鮮な味わいを覚える。
 スチールパイプ製ダブルクレードルのフレームワークも懐かしいし、空冷OHVの90°Vツインユニットも基本を変えぬところに古くから培われた同ブランドに対する信頼と安心感が感じられるのである。

 細部に目をやると、例えば造形にこだわって造られたステップホルダーを始め、各部の使用ボルト/ナット類、ワッシャーやスペーサー等のパーツひとつひとつが吟味されている。シングルメーターをカバーするフロントのミニフェアリングやサイドカバーもアルミ製が奢られている等、作り手の気持ちが丁寧に表現されており、チョットした贅沢を楽しみたい大人の感性がくすぐられる。
 しかもシングルメーターには液晶マルチインフォメーションを内臓。ステアリングヘッドパイプの右脇にはUSBコンセントを装備する等、新し要素の採用も忘れていない。

 785mmと低めのシートに跨がると両足は楽に地面を捉えることができ、210kgの車体を支えるにも不安は感じられない。ステップは脛の前に位置し、リラックスした乗り味を直感するが、ほぼフラットで絞りの少ないハンドルバーを握ると、アグレッシブな雰囲気も感じられる。シート前方に座り両肘を張って軽く前傾姿勢を決めると、僅かながらモタード系の匂いもしてくるから不思議。

 エンジンの出力特性はモリモリと中低速域のトルクが太い。故に早め早めのシフトアップが相応しい。市街地での通常加速でもシフトアップを促すパイロットランプが直ぐに点灯する。ピークトルクは僅か3000rpmだからそれも納得である。
 発進後は切れ味の良いクラッチを操作して早めのシフトアップを試みる。増速後のクラッチミートでググッとさらに強力な加速力を発揮。シフトアップした方がさらにトルキーな加速感を披露する乗り味に、このVツインエンジンならではの特徴と魅力が感じられるのである。

 タコメーターが無いので点火パルスをセンシングする外付けの回転計を装備してチェックするとアイドリングはだいたい1250rpm。ローギヤで5000rpm回した時のスピードは52㎞/h。6速100㎞/hクルージング時のエンジン回転数は換算値で約3400rpmだった。ちなみにシフトアップを促すパイロットランプは3800rpmで点灯していた。

 全体的にドッシリと重い乗り味で、サスペンションも固めなセッティングながら、作動性は悪くなく、落ち着きのあるユッタリした心地よさを満喫できる。前後16インチサイズながら偏平率の少ないビッグフットも安心のグリップ感を発揮。
 どんな場面でも悠然とした気分で走れるところに心地よさと大きな価値を覚えた。
 早起きしてのひとっ走り、日没前の散策。そしてウィークエンドのツーリング等、一人自由な時間を楽しむに相応しい魅力が感じられたのである。

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January 30, 2020 at 07:31PM
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