最もパワフルで大排気量の空冷ボクサーエンジン
BMWの代名詞ともいえるフラットツインエンジン。ボクサーエンジンとも称されるこのエンジンの歴史は古く、様々なマシンに搭載され、多くのライダーに愛されてきた。
オートマチック・スタビリティ・コントロール、エンジン・ドラッグ・トルク・コントロールを標準装備。ファースト・エディションには取り回しをしやすくするリバース・アシストやヒル・スタート・コントロール機能も備わった。
© STUDIO GOICO
絶対性能だけでいえば、決してトップレベルの性能を有しているとは言えないだろう。左右に張り出したシリンダーは軽量、コンパクトとは言い難く、出力も驚くようなものはない。しかし、世界中のライダーを虜にする何かが間違いなくあるのは確かである。
革新的テクノロジーを真っ先に投入することの多いBMWにとって、このレトロなエンジンを使い続けること自体が珍しいことのようにも思われるが、事実、過去にはボクサーエンジンの製造をやめようとしていたことがあったという。
全長2465mm、全幅(ミラー含む)950mm、全高(ミラー除く)1130mm、シート高は690mmとなる。ダブルループ鋼管フレームを採用した。
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かつて、主力であった空冷ボクサーから水冷4気筒(3気筒も同時ラインナップ)へ。その水冷のKシリーズが次世代のBMWを担うエンジンとして計画された。しかし、多くの熱狂的ファンの支持もあって、ボクサーエンジンは生き残ったのだ。それだけではなく、その後もBMWモトラッドのアイデンティティとして、時代にあったアップデートを繰り返しているである。さらに、2013年には水冷化され、主力モデルの心臓として搭載されているのだ。
一方、空冷ボクサーも消えゆくことなくR nine Tに受け継がれ、こちらも異なるキャラクターで人気となっている。BMWはこの遺産をこれからも大切にしていくことを決意しているようである。
2020年に登場したクルーザーセグメントのフラッグシップ、R18。ベーシックモデル(254万7000円)に加え、導入時より期間限定のファースト・エディション(297万6500円 写真)をラインナップする。
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そして今回、そんなボクサーエンジンに新たなファミリーが加わった。R18に搭載された新型ボクサーエンジンは従来型を焼き直したものではなく、完全新設計。空冷ながら排ガス等の環境問題をクリアするのは当然ながら、過去最大となる排気量を誇っている。
ファースト・エディションはクラシックなブラックにホワイトのストライプをペイント、クロームパーツなどが備わっている。ちなみにR18は他モデルよりカスタムしやすいデザインになっているとのことだ。
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豊かなトルクでコーナリングも楽しめる
落ち着いた佇まいを見せるR18であるが、それはこのジャンルの先駆者でもあるハーレー的なものとは異なる、ドイツ流の美しさと無骨さが共存している。跨ってみれば大柄ではあるものの、足つき性は悪くなく、膝周りもタンクにピタリとフィットする。
ボクサーエンジンならではの低重心ということもあり、身長165cmの筆者でも意外な一体感を感じさせてくれる。
ディスプレイを組み込みつつも、クラシカルなデザインの円形メーターを備えた。
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エンジンを始動すると、いきなりマシンがグラリと左側に倒れる。トルクリアクションという挙動であるが、こんなにハッキリと感じられるマシンは他に記憶がない。これはなかなか手強いかもしれない……、と気を引き締める。
やや緊張しつつ丁寧にクラッチミートをしてマシンを発進させると、先ほどの暴力的挙動から一変。じつに滑らかな吹け上がりでみるみる緊張感が溶けていくのを感じる。それは片側約900ccにもなるビッグボアのピストンが左右に「ドンドコ」動いていることがイメージ出来ないほどである。
最高出力91ps/最大トルク158Nmの駆動力は、BMW伝統のシャフトドライブで伝達される。ドッグクラッチ式6速トランスミッションを搭載した。
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ロングホイールベースのマシンにありがちな、前後のホイールがバラバラに動いてしまうような剛性不足など微塵も感じさせない。BMWらしいと思わせる、しっかりした剛性がこのマシンにも備わっている。
攻めるということでなければ、コーナーリングも意外なほど楽しめる。ゆっくりコーナーに進入して身体をマシンに預けると、しっかりとした接地感が感じられ、マシンのノーズは想像以上にイン側を向いてくれる。向きが変わったところで、豊かなトルクを使って立ち上がっていく。
乗らされているといった印象はなく、コントロールしているという満足感で頼もしい。
1923年に生産が開始されたという空冷ボクサーエンジン、完全新設計の1801cc水平対向2気筒エンジンを搭載。
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低重心で路面に張り付くような独特の加速
しかし、意外にもジェントルなR18であるが、ひとたびアクセルをワイドオープンすれば、このマシン、新型ボクサーエンジンの底力を味わせてくれる。
驚かされるのは、その加速力の凄さ。ボクサーエンジン独特の低重心で路面に張り付くような感触と、排気量からくるトルクの分厚さが相まって、マシンを一気にワープさせる。一方、高速道路で巡航させれば、非常に滑らかでどこまでも走り続けることが出来そうなフィーリング。ツーリングバイクを得意とするBMWモトラッドならではだが、過去のツーリングバイクたちとは違うキャラクターであったのも興味深い。
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非常にシンプルなマシンながら、ライディングモードは3種類(ロック、ロール、レインという呼び方がいかす)から選択できトラコンも装備と、やはり現代のマシンである。ライディングモードはロックがとにかく強烈。アイドリング時でも違いがわかるほどで、ユッサユッサと車体全体を揺らすエネルギーが感じられる。対してレインはジェントルさが際立つ。その名称ながらドライ路面でも重宝するパワー特性である。そして、ロールはその中間とも言えるいいとこ取りの印象。これらをこまめにチョイスすることで、マシンの魅力はより広がりを見せてくれる。
BMWらしさと共に、あのBMWが? といった意外性も持ち合わせているR18。スタイリング同様、唯一無二の贅沢で特別な時間を提供してくれる1台だ。
文・鈴木大五郎 写真・ビー・エム・ダブリュー 編集・iconic
からの記事と詳細 ( 伝統と革新を併せもつ、ボクサーエンジンとプレミアムクルーザー、BMW モトラッド R18 - GQ JAPAN )
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