Sunday, January 5, 2020

運転領域の限定でエンジンは変わる、CASEが握る高効率化への鍵とは - 日経テクノロジーオンライン

 2030年を目標としたエンジン研究において、AICEでは、電気自動車(EV)と同等のCO2削減量を、内燃機関を搭載する電動車の目標値に定めた。それを実現するために必要なのがCASE技術の活用だ。エンジンを深化させるための考え方と、核となる技術の要素について解説する。(編集部)

 「新車の乗用車のWell-to-Wheel(1次エネルギーの採掘から走行まで)におけるCO2排出量を2010年と比較して2050年には90%削減する」――。経済産業省が「自動車新時代戦略会議」で掲げたこの目標は、各自動車メーカーにとってCO2排出量の削減に向けた1つの指針となっている。将来のゼロエミッション時代に向けての通過点として、各社とも技術開発を進めている状態だ。

 本連載の第1回で説明したように、国際エネルギー機関(IEA)による将来のパワーソース予想では、2050年時点でも内燃機関とモーターを搭載する電動車(以降、ハイブリッド車:HEV)が70%程度を占める。今後も内燃機関を搭載する必要があるという同予想を踏まえると、2050年の目標値に向けて内燃機関も技術開発を進めることが必須といえる。

 とはいえ、2050年は少し先の話だ。技術的戦略を考える上では期間がやや長い。具体的にどのように開発を進めるべきかを考えるためには、もう少し手前の時期を見据えたシナリオが必要だ。

 そこで、自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)では、HEVでゼロエミッションを実現するための技術的シナリオを想定することにした。

 そもそもHEVを普及するためには、比較対象となりがちな電気自動車(EV)と同じ土俵に立ち、顧客に選んでもらう必要がある。そのためには、EVとHEVの環境に対する性能(Well-to-WheelのCO2排出量)を同等にすることが求められる。環境性能が同じであれば、自動車メーカーは、車種やユーザーからの需要などに合わせてパワーソースを選択しやすくなり、HEVをラインアップに加えやすくなるからだ。

 日本国内のEVのWell-to-WheelにおけるCO2排出量の削減シナリオはどのようになっているのか。自動車新時代戦略会議の資料によると、2010年時点でのガソリンエンジンのCO2排出量を100%とした場合、2015年時点でのEVの排出量は46%。これを2030年までに、約31%に引き下げるといった計画だ(図1)。その後2050年に向けて、10%以下を目指す見込みとしている。

図1 電気自動車(EV)のゼロCO2に向けたロードマップ

経済産業省の「自動車新時代戦略会議」によると、2030年時点での電気自動車(EV)のWell-to-Wheel(1次エネルギーの採掘から走行まで)のCO2排出量は、2010年時点のガソリンエンジン車の排出量の比で31%とするのが目標だ。(出所:AICE)

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 このことからAICEは、HEVのCO2排出量の目標をEVと同等となる「2030年に2010年比で30%以下」に定めることにした。

 では、何を足掛かりにして目標達成を目指すのか。EVとHEVを比較した際に差が生じる、走行中(Tank-to-Wheel)のCO2排出量に着目した。

 EVの場合は、走行中に排出するCO2量はゼロだ。Well-to-Wheelで考えた場合は、発電時に発生するCO2の排出量が大きな比率を占める。そのため、2030年に31%を目指すには、発電時のCO2削減対策が主となる。

 他方HEVは、Well-to-WheelのCO2排出量のうち、ほとんどを走行中のCO2が占める。それだけに、走行中のCO2排出量の削減、つまり内燃機関の改良が2030年30%以下の目標を達成するための鍵となる注1)

注1)2030年以降は、車の軽量化やバイオ燃料の利用が進むことなどによって、EVとHEVともに、さらなるCO2排出量の削減が期待できる。また、現在研究が進んでいるCO2の回収・貯蔵技術が2050年ごろまでには実現できそうな点も考慮しておきたい。CO2の回収・貯蔵技術は、火力発電所の排ガスからCO2を分離し回収したり貯蔵したりするCCS(CO2 Capture Sequestration)と、大気中からのCO2を直接分離して回収するDAC(Direct Air Capture)などがある。これらの技術は、発電所だけでなく、内燃機関向けにも適用できる技術で、CO2削減のシナリオにも含められると考える。他に、2030年以降は、EVでは再生可能エネルギー利用のさらなる促進が期待できる。HEVでは燃料製造時のCO2排出量削減策として、再生可能エネルギーによる電力とCO2、水素(H2)などから燃料となる炭化水素鎖をつくる「e燃料(e-Fuel)」への取り組みも期待される。これらの技術に関しても準備が必要だ。今後どのように取り組むかについて、AICE内で検討している。

 HEVの場合、ブレーキ回生や、モーターとの共生によって熱効率の良い運転条件が多用できるようになったなどの電動化の効果によって、2015年時にはWell-to-WheelのCO2排出量が2010年比で約50%まで削減できたと考えられている(図2)。ここから先、内燃機関を深化させるためには、図2に示したように、4つの開発要点がある。

図2 内燃機関を搭載する車のゼロCO2に向けたロードマップ

電動化や熱効率の向上、エコ運転の制御などにより、CO2の排出量の削減が見込める。AICEでは2030年時点におけるWell-to-Wheel(1次エネルギーの採掘から走行まで)のCO2排出量の目標値を、電気自動車(EV)の目標と同等の、2010年比で30%以下とした。(出所:AICE)

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