Saturday, January 4, 2020

ホンダ社長の目には今後もずっとエンジン車が主役の未来が見えるらしい - EVsmartブログ

元記事:『Honda CEO Peers Into The Future, Sees Nothing But Piston Power From Here To Eternity』by Steve Hanley on『CleanTechnica』

心の底からBEVが欲しい人なんているのでしょうか?

本田技研工業株式会社の代表取締役社長、八郷隆弘氏は年末にAutomotive News Europeの取材に応じ、自動車業界の将来について自らのビジョンを披露しました。その内容とは生産効率アップ、自動運転システムの推進、そして今後も大量にエンジンを作り続けること。八郷氏によると自動車の将来のカギは燃費にあり、優れた燃費を達成するにはハイブリッドこそが王道なのです。また、2030年までにホンダの販売する車の3分の2をハイブリッドにしたいとも言っていますが、その中にPHEVモデルが含まれるかは触れませんでした。

「ハイブリッド車は今後重要な役割を担うと信じています。我々の目標は燃費の向上であり、クルマの電動化そのものではありません。そして様々な環境規制に対応するにはハイブリッド車が最も適していると考えています」

東京モーターショー2019のプレスカンファレンスに登壇した八郷社長

BEV(バッテリー式のEV)について聞かれると八郷氏はこのように答えています。

「本当に心の底からBEVが欲しい人なんているのでしょうか? インフラ面でもハード面でも様々な問題があるため、私にはそうは思えません。だからBEVの需要が大幅に伸びるとも思えませんし、どの国でも同じ状況だと思います。国によって排ガス規制は異なり、それぞれに対応する必要があるためBEVの研究開発は継続しなくてはなりませんが、主流になるのはもっと遠い未来の話でしょう」

もちろんテスラやVWは真逆の立場をとっています。しかしどちらが正しいかは消費者の行動を見守り、アダム・スミスの言う「見えざる手」に委ねるしかありません(編注※自由競争に任せるしかないの意)。2020年にテスラの電動SUV「モデルY」が登場してホンダCR-Vハイブリッドに真っ向勝負を挑むことでこの勝負の行方が見え始めることでしょう。

それにしても地球温暖化がますます進み、その大きな要因のひとつとして内燃エンジンが取り沙汰されているのに、環境問題に対する八郷氏の消極的な姿勢には Clean Technica ファンも落胆しているでしょう。

個人的な話ですが、私はホンダの立ち位置に非常に失望しています。50年前、ホンダは燃費はいいけどおもちゃのような小さな車を販売しているスタートアップ企業と笑われていました。そんな中、私はシビックがアメリカで販売されるとすぐに手に入れ、友人たちがガソリンスタンドで長蛇の列に並んでいるのを横目にどこにでも自由に走り回ったものです。

1972年に発売された初代シビック。

その数年後、シビックを下取りに出して初代アコードを購入しました。休みになると東海岸を北から南まで運転して回るだけでなく、この車でレギュラリティーラリーやオートクロスにも参戦し、勝利を上げました。本当に素晴らしい車で、あの頃から私はホンダ車に愛着を持っていました。

現在、妻がシビックSiに乗っていますが、この車には様々なメディアで取り上げられたi-VTECエンジンと6速MTが備えられているため、いつもは控えめなコンパクトカーですが、ひとたびアクセルを全開にすると可変バルタイ機構が作動していることを知らせるダッシュボードの小さな赤いランプが点灯し、伸びやかに加速していきます。

しかし、最近のホンダは方向性を見失っています。ハイブリッドスポーツカーのCR-Zは見た目こそ派手ですが、大胆なスタイリングに見合ったパフォーマンスはありません。奇抜なデザインのインサイトも燃費こそ優れているものの、個性的すぎてほとんどのドライバーに敬遠されています。シビックハイブリッドは技術的な問題に悩まされ、マーケティングは大失敗に終わりました。トヨタがハイブリッド競争のトップを走る中、ホンダは後塵を拝するばかりです。

現在のラインナップは3気筒ターボエンジンにCVTを組み合わせたものが主流で、燃費は確かに優れているのですが、走りは全く面白みがありません。にも関わらず、ホンダは八郷社長の指示の下、今後も燃費を社是としていくそうで、2020年に導入される新型グローバルプラットフォームで開発期間を3分の2に短縮し、生産効率も10%向上させるとのこと。なんてエキサイティングなんだ!

自動運転システムもホンダの喫緊の課題で、現在GMの傘下にある自動運転スタートアップ企業の Cruise に出資したことは記憶に新しいです。しかしこの分野でもすくみ足のアプローチで、まるで崖から谷底を覗き込んで地獄でも見てきたかのような慎重さです。

「ホンダの全体目標は事故のない車を作ることです。その達成のために、ヒューマンエラーを減らし運転の疲労を軽減することで、より快適に運転できる車を作らなくてはなりません。だから当社はホンダセンシングに注力しており、今後もホンダセンシングの各要素を改善してまいります。

現在、当社は技術面では自動車線変更とハンズオフステアリング(手放し運転)で成熟した技術を有しています。これらの技術は確立しましたが、同時に社会的なニーズと法的環境についても考慮しなくてはなりません。今こそこれらのサービスをどのように提供するか検討する時期であり、現在導入する車種とタイミングを見計らっているところです。

ホンダセンシングはシビックやアコードといった大衆車まで普及させたいと思っています。そのためレーダーやLiDARといった高価な機器を使わずに、お求めやすい価格でこうした機能を実現しなくてはなりません。一方、レベル3になるとより高価なADASシステムが必要になります。そのためどの車種で導入するか慎重に判断する必要があります。したがって、レベル3の自動運転については時期や車種について一切お話しできる情報はありません」

「検討する時期」「慎重に判断」。こうした言葉が現在のホンダの企業文化を表しています。イーロン・マスクであれば検討したり慎重に立ち位置を選んだりしないでしょう。とはいえ将来のことは誰にも分かりません。もしかしたら八郷社長が正しいのかも知れません。もしかしたらテスラを始めとするEV推進派のメーカーは消費者に受け入れられず大失敗に終わるかも知れません。

しかしホンダの創始者、本田宗一郎氏は絶対に八郷社長のような姿勢で未来に臨まなかったでしょう。彼は1960年代にF1で大きな賭けに出てホンダを一躍世界的な企業に育て上げたのです。そして宝石のように美しいホンダ製のエンジンと比べると他チームのレースエンジンはまるで戦前の骨董品のようでした。

ホンダがF1で初勝利を挙げた1965年、アメリカGPでロニー・バックナム選手(左)、リッチー・ギンサー選手(右)に言葉を掛ける本田宗一郎氏。(ホンダメディアサイトより)

自動車業界の歴史を振り返ると、一世を風靡した企業がその後、変化に柔軟に対応できなくなって廃業したケースはたくさんあります。もしかしたら次に墓標に名前を刻むのはホンダかも知れません。もし八郷社長の言う通り、今後も数十年に渡りエンジン車が主流であり続けるなら人類が遅かれ早かれ滅亡の縁に立たされますが、八郷社長はその事実に向き合うつもりはないのでしょう。

訳者あとがき

今後、ますます厳しくなる排出ガス規制に対して各メーカーが今必死に開発を進めている頃だと思います。規制値をクリアするために部品点数は増え、CO2を1%削るために必要なコストは増え、キビキビ走る車を作るのは難しくなってきています。一方、EVはワクワクするような走りを体感できるし、先日の記事『カナダの東西をつなぐ、テスラのトランスカナダスーパーチャージャー網がついに完成』でも紹介したようにインフラやハード面でも問題ない水準まで到達しつつあります。

八郷社長が守りたいのは本田宗一郎が作ったエンジンなのか、それともホンダらしいドライビングの愉しさなのか。今後ホンダのEVラインナップが電費重視のつまらないものばかりにならないか気がかりで仕方ありません。

(翻訳・文/池田 篤史)

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