Thursday, January 16, 2020

エンジン音だけで度肝を抜く! フォードVSフェラーリは、絶対に映画館で観るべき1本だ。 | Penの選んだ今月のシネマ| Topics - Pen-Online

エンジン音だけで度肝を抜く! フォードVSフェラーリは...

ジェームズ・マンゴールド

エンジン音だけで度肝を抜く! フォードVSフェラーリは、絶対に映画館で観るべき1本だ。

青木雄介 編集者

監督は『LOGAN/ローガン』をはじめ大作を手がけてきたハリウッドのヒットメイカー、ジェームズ・マンゴールド。『グラン・プリ』や『栄光のル・マン』など60年代、70年代の映画からインスピレーションを得て、臨場感のある映像を完成させた。 ©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

まずオープニングからしてマット・デイモン演じる、キャロル・シェルビーが駆るアストンマーティンDBR1のみなぎるような、生々しいエンジン音で度肝を抜かれてしまう。『フォードvsフェラーリ』はタイトルの通り、すべてが対照構造でできている。世界的なモータリゼーションの担い手であるフォードと、モータースポーツに生涯を捧げたエンツォ・フェラーリ率いるフェラーリ。企業規模や成り立ちも哲学も違えば、自動車文化としての差異もある。
アメリカの大排気量V8エンジン文化と、フェラーリのV12エンジンに象徴される高回転型レースエンジンの理想を追い求めるあまり、狂気をはらんだプロダクトも辞さないイタリアのモータースポーツ文化。その差異を、フォードGT MK2とフェラーリ330 P3のバトルを通してエンジン音や勝負の回転数など、リアリティの積み重ねによって鮮明に見せてくれているのが、とにかく秀逸。クルマ好きはシェルビー自身の手によるシェルビーコブラが全編にわたって走りまわる、その姿だけでも観る価値があるね。
そもそもテキサス出身のレーサーだったキャロル・シェルビーはシェルビーコブラを筆頭に、フォードではマスタングをベースにしたシェルビーGT500、クライスラーではダッジ・バイパーの開発にも携わった。アメリカの自動車業界ではもちろん、モータースポーツの世界でも輝かしい実績を残した国民的なカーガイなんだな。この映画はカーガイ列伝としても面白くてエンツォ・フェラーリはもちろん、稀代のマーケッターとして知られるリー・アイアコッカや後に、F1のコンストラクターになるマクラーレンを創業したブルース・マクラーレンも、ドライバーとして登場する。この辺も現在にも続くF1やスーパースポーツ市場におけるライバル関係として、あわせて観るとより面白さが増すはず。
物語は心臓の持病によりレースを引退したシェルビーが、フェラーリ買収に失敗したフォードの特命を受けて、ル・マン24時間レースでの勝利を義務づけられる。1965年当時はシェルビーがハンドルを握って優勝した1958年とは、勢力図が一変していた。英国車が表彰台の常連だったのに対し、フェラーリが連続タイトルを獲得。当時のフェラーリに勝利するのは無謀と思われていたんだ。そこでファーストドライバーとしてシェルビーが白羽の矢を立てたのが、クリスチャン・ベイル演じる英国バーミンガム出身のケン・マイルズなのね。訛りが強く、レーサーではなく整備士を自任し、直情的で負けん気の強いマイルズが、こだわりの強いMG(英国のスポーツカーブランド)の代理店を異国のアメリカでしている辺りの設定も、もともと英国のモータースポーツと関係が深かったシェルビーとの関係性を示唆していて心にくい。
映画は1966年のル・マン24時間レースを再現すべく、大がかりなロケが行われ、昨今のクルマ映画のようなCGもほとんど使っていない。臨場感のある視点、リアルなクラッシュなど没入感が圧倒的でもある。フォードとフェラーリのエピソードは有名なので、アメリカ人のつくったアメリカ車礼賛のプロパガンダ映画なのかと思いきや、ちょっと様相が違っていた。フォードの内情は醜いし、巨大企業の論理に苦しめられながら戦う現場のエキスパートたち、それを支える愛ある家族像などハートフルなアメリカ映画としても見ごたえ充分。映画『アバター』が美しすぎて、その世界から抜けられないアバター症候群なんて言葉があったが、これはエンジン音だけで現実逃避できるモーターヘッドな映画。映画館で観ないと絶対後悔するはめになる!

『フォードvsフェラーリ』
監督/ジェームズ・マンゴールド
出演/マット・デイモン、クリスチャン・ベイルほか
2019年 アメリカ映画 2時間33分 全国の映画館にて公開中。
http://www.foxmovies-jp.com/fordvsferrari/

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御年78歳、いまだ攻めます!軽いと見せて過激なセルジオの音。

セルジオ・メンデス

御年78歳、いまだ攻めます!軽いと見せて過激なセルジオの音。

栗本 斉 音楽ライター

1941年、ブラジル生まれ。世界的なボサノヴァ・ブームの旗手。2006年には、ブラック・アイド・ピーズのウィル・アイ・アムをプロデュースに、R&B/ヒップホップの豪華アーティストをゲストに迎えた『タイムレス』を発表し、ヒットを記録した。

軽くて楽しいブラジル音楽。悪口と思われるかもしれないが、これは最大限の褒め言葉だ。セルジオ・メンデスほど、軽やかで人懐っこい楽曲を生み出す音楽家はいないと思ってしまうほど、5年半ぶりの新作『イン・ザ・キー・オブ・ジョイ』は軽い。今の音楽シーンがディープな方向に向かっていることを思うと時代に逆行しているようだが、けっして懐古趣味ではなく現在進行系の音楽を作り上げている。
セルジオ・メンデスはブラジル音楽界の重鎮だ。1950年代よりピアニストとしての活動を始め、その後ブラジル'66というグループを率いて「マシュ・ケ・ナダ」や「ルック・オブ・ラブ」などの名曲を世界中でヒットさせた。80年代にはブラジル音楽に縛られないAORタイプの楽曲で高く評価されたし、92年にはプリミティヴなブラジルのリズムと対峙した傑作アルバム『ブラジレイロ』でグラミー賞を受賞した。また、2006年にはブラック・アイド・ピーズなどとコラボレートして復活を遂げ、若い世代へその名を知らしめたのも記憶に新しい。今回の新作は、いわばその若者向けシリーズの一環ともいえる。実際、コモン、カリ・イ・エル・ダンディー、シェレーエといった各国の人気アーティストが参加し、日本盤にはSKY-HIがリミックスを手掛けた楽曲もある。
だが、こんなことだけ抜き出しても幹は見えない。今作はカヴァーを廃してオリジナル曲で勝負しており、セルジオ自身も積極的にソングライティングに関与して時代の音を追求。しかもゲストに、前衛音楽家として知られるエルメート・パスコアールまで名を連ねていることに驚かされる。このように攻めの姿勢を取りつつも、ポップなサウンドに徹しているのが痛快。御年78歳の過激で軽いポップ職人。それがセルジオ・メンデスの本質であり魅力なのだ。

『イン・ザ・キー・オブ・ジョイ』
セルジオ・メンデス 
UCCO-1216 
ユニバーサル クラシックス&ジャズ 
¥2,750(税込)

御年78歳、いまだ攻めます!軽いと見せて過激なセルジオの音。
西日の向こうと現実が、重なるとき。

碧南市藤井達吉現代美術館

西日の向こうと現実が、重なるとき。

赤坂英人 美術評論家

photo by Sakiko Nomura

photo by Sakiko Nomura

個展タイトルである「GO WEST」は、かつてアメリカ圏で「西部を目指せ」というキャッチ・フレーズで使われていた。またその後、「(同性愛者に理解のある)カリフォルニアに行こう」の意味ももった一方で、「お陀仏」「死」を指すこともある。野村は子ども時代から漠然と西方の夕日の向こうの世界に憧れがあったと言う。しかし、彼女の写真表現にいわゆる抹香臭さ、宗教性を感じることは少ない。 photo by Sakiko Nomura

写真家・野村佐紀子の代表的な展覧会だと、きっと将来言われるであろう個展『GO WEST』が開催される。本誌連載「創造の挑戦者たち。」の野村が撮る静謐なポートレート写真を通して、彼女のことを知っている人はおそらく多いだろう。
彼女は1967年山口県下関市生まれ。九州産業大学芸術学部写真学科を卒業後、写真家の荒木経惟に師事。90年代から積極的に写真集を出版、展覧会も開催している。彼女の撮るポートレート写真は既によく知られるところだが、野村の撮影する独特の雰囲気を漂わせるモノクロの男性ヌード写真は、他の写真家の追従を許さない彼女独自のものだ。彼女しか撮りえないエロスの世界がそこにはある。野村は、まさに現代を撮る気鋭の写真家だ。
今回の個展『GO WEST』は、野村が初めて公立美術館で開く展覧会で、新作100点を中心に約290点で構成。展示のスタイルはインスタレーション感覚の斬新なものであり、そこにはキュレーターを務めた藤木洋介のアイデアが反映されている。
個展タイトルを見た時、「西方浄土」を思い浮かべたものの、まさか関係はないだろうと思ったのだが、聞くと野村は子ども時代、なぜか夕方の西日を浴びた風景をよく見ていたと言う。そして西方の“向こうの世界”を漠然と感じていたそうだ。
この個展の中で、野村が撮った男性ヌードや美術館が位置している愛知県碧南市の町の風景、生まれ故郷である下関の夕日の光景、西へ西へと彼女が旅して撮った日本や世界各地のスナップ写真の断片が交錯する。なかでもモノクロの風景写真が特に印象的だ。それは野村が子ども時代に感じた西日の向こうにある幻の原風景の記憶と、いま彼女が生きる現実の風景とが重なり交差した、一瞬のときを捉えた記録なのである。

『野村佐紀子写真展  “GO WEST”』
開催期間:12/21~2020年2/24 
会場:碧南市藤井達吉現代美術館
TEL:0566-48-6602 
開館時間:10時~18時 ※入館は閉館の30分前まで 
休館日:月(2020年1/13、2/24は開館)、12/29~2020年1/3、1/14 入場無料 
http://www.city.hekinan.lg.jp/museum/

西日の向こうと現実が、重なるとき。
西日の向こうと現実が、重なるとき。

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