賃金を可能な限り引き上げながら、雇用を維持することが重要だ。政府は、中小企業の支援に万全を期してほしい。
厚生労働省の中央最低賃金審議会は、今年度の最低賃金について、時給を28円引き上げて、全国平均で930円とするという目安をまとめた。過去最大の引き上げ幅だという。
最低賃金を早期に全国平均1000円とするというのが、安倍政権以来の目標である。昨年度は、新型コロナウイルス流行の影響を考慮して目安を示さなかった。今年度は一転して、コロナ禍前の引き上げ水準に戻した形だ。
審議会は、経済指標に改善がみられるうえ、ワクチン接種が進み、昨年とは状況が異なると判断したという。経営側の委員が「現状認識が違う」と反発し、労働側や有識者の委員との協議がまとまらず、異例の採決となった。
賃金を底上げしようという姿勢自体は妥当だろう。非正規労働者の生活は厳しくなっており、収入が増えれば、消費拡大による経済活性化も期待できる。
そもそも、日本の最低賃金は主要先進国と比べ、見劣りする。英国やドイツ、フランスは1300円前後で、コロナ禍にあっても引き上げている。審議会は、こうした動向も考慮したとみられる。
問題は、引き上げの幅とタイミングである。
飲食業や宿泊業などは、依然として厳しい経営状況にある。地方ではなおさらだ。企業が賃上げに耐えられず、人員を削減したり、倒産したりすることになれば、雇用の場を失うことになる。
識者の一部には、最低賃金の大幅な引き上げによって、生産性の低い中小企業を統廃合すべきだという意見がある。しかし、新たな雇用の受け皿がなければ、失業を増やし、社会の安定を損なうことにもなりかねない。
日本商工会議所などは今回、「雇用に深刻な影響が出る」という見解を発表した。こうした懸念を重く受け止めるべきだ。
政府は、賃金引き上げと同時に設備投資を行った中小企業に、最大450万円を補助する制度を設けている。だが、手続きが煩雑で、利用は低調だ。書類を減らして使い勝手を良くし、補助額の引き上げも検討してもらいたい。
また、資金面の支援だけでなく、IT化の推進や成長分野への進出などを促す対策を講じ、中小企業の経営基盤の強化によって賃金の引き上げが可能になるような環境づくりが大切だ。
からの記事と詳細 ( 最低賃金アップ 雇用維持との両立が前提だ - 読売新聞 )
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