Monday, September 6, 2021

世界的な半導体不足によって自動車メーカーとハードウェアメーカーがチップの取り合いをしている状況についてハーバード大学教授が解説 - GIGAZINE

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行や暗号資産の高騰によって、世界規模の半導体不足が発生しており、自動車・GPU・家電製品といった製品の生産に影響が出ています。この半導体不足のさなかに生じた自動車メーカーとハードウェアメーカーの間の「チップの取り合い」について、チップや半導体のサプライチェーンに関する専門家であるハーバード・ビジネス・スクールのウィリー・シー教授が解説しています。

Why the global chip shortage is making it so hard to buy a PS5 - The Verge
https://www.theverge.com/2021/8/31/22648372/willy-shih-chip-shortage-tsmc-samsung-ps5-decoder-interview

Harvard Professor Explains Global Chip Shortage Affecting Industries | iPhone in Canada Blog
https://www.iphoneincanada.ca/news/harvard-professor-explains-global-chip-shortage-affecting-industries/

2020年に発生したCOVID-19の流行による工場の一時閉鎖や暗号資産の高騰によるマイニング用GPUの需要増の影響による世界的な半導体不足は2021年に入ってからも続いており、2021年8月には半導体を注文してから実際に納品されるまでのリードタイムが20週を突破しました。この半導体不足によって、TSMCが半導体価格を最大20%値上げしたり、アメリカの自動車大手ゼネラルモータースが8工場を一時的に稼働停止したりするなど、製造各社は対応に追われています。

チップや半導体のサプライチェーンについて教えるシー教授によると、世界的な半導体不足は年間生産台数がアメリカの倍以上の2500万台に達するという中国の自動車産業が起点となったとのこと。中国の自動車産業は2018年から売上減にあえいでいましたが、2020年初頭にCOVID-19のパンデミックが直撃して大幅な販売台数減を記録。その後COVID-19の波及を受け、アメリカ・ヨーロッパでも販売台数が大きく落ち込みました。

2020年の自動車販売・生産は新型コロナの影響で記録的な減少(米国) | 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2021/6693a935851b2c72.html


販売台数の記録的減少を受けて、倒産を避けたいという思惑から自動車メーカーの間で「支出を控える」という動きがみられたとのこと。この動きによって生じたのが、労働者のレイオフや工場の一時閉鎖、そして「半導体の買い控え」でした。

しかし他方ではCOVID-19による巣ごもり需要を受け、PCやゲーム、薄型テレビ、家電製品などの需要が急増していました。こうした状況から、自動車メーカーが買い控えた半導体が家電業界に流れるという現象が発生しましたが、2020年夏頃から自動車の販売台数が回復。家電業界に流れていた半導体を慌てて買い戻そうとした自動車メーカーによって、今回の半導体不足が生じたとのこと。


この半導体不足には自動車メーカーだけでなく、アメリカの中国企業制裁や相次ぐ半導体企業の事故なども大きく寄与したとシー教授。シー教授によると、アメリカの中国企業制裁は2020年末に発効されるものが多かったため中国製半導体の駆け込み需要が生じた他、旭化成エレクトロニクスの生産センターでの火災や記録的寒波によるSamsungのアメリカ工場閉鎖、自動車用マイクロコントローラーのシェアを40%も占めるというルネサスの那珂工場火災などが大きな影響を与えたとのこと。

このような状況の中、各メーカーが行っている「買いだめ」も半導体不足を加速させる一因となっています。半導体を買いだめできたメーカーと買いだめできなかったメーカーがある場合、半導体を買いだめできなかったメーカーはプロダクトの製造が不可能ですが、買いだめできたメーカーはプロダクトを製造してシェアを一方的に伸ばし続けられます。つまり半導体不足のさなかにおいては半導体の保有量がシェアに直結するといえるため、各メーカーは「安全在庫の構築のため」と言い訳しつつ半導体の追加注文を続けている状況とのこと。

シー教授によると、こうした状況の中で半導体業界と自動車業界は共同歩調をとるようになってきているとのこと。これまで半導体業界と自動車業界は商売敵であったため、ある種敵対的な関係だったわけですが、今回の半導体不足を機に「チップメーカーと戦略的パートナーにならなければ」という自動車メーカーが登場。シー教授いわく、「トヨタは半導体不足前から常にこうしたアプローチをとっており、今回のパンデミックでもはるかにうまくやっていた」そうです。

以上のように半導体を各メーカーが取り合っている状況ですが、各国政府の要請から半導体製造各社は自動車メーカーに対する割り当てを増やしており、半導体最大手のTSMCは「車載用半導体を前年比6割増」という目標に向けて動いており、こうした経緯から「GPUやゲームハードなどがワリを食っている」とシー教授は解説しています。

台湾TSMC、21年の車載用半導体6割増産 米に協力: 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM21E2D0R20C21A5000000/

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