エンジンの進化とともにハンドリングと乗り心地の進化にも驚く
421PS/500Nmというとてつもないパワーを受け止めるには、FFではもう無理。従って、メルセデスAMG A 45 S 4MATIC+はこれまで同様に駆動方式は4WDなのだが、その4WDも大きく進化してリアの左右トルク配分が電子式となった。この効果は抜群で、コーナーにターンインしてからアクセルを踏み込むと、フロントを起点にリアがスルスルと曲がり込むように横に移動する。つまり、コーナリング中のリア外輪のトルクが大きくなっているのだ。
さらに強くアクセルを踏み込むと明らかにリアがスライドし、少ない操舵角で巻き込むように曲がっていく。しかしスピンするほどの状況には陥らず、電子制御のスピンコントロールもちょうどいいレベルで、介入した際のコントロール性はすこぶるよいのだ。この時、明らかにリアデフの左右トルク配分が効いていることを実感する。これはドライブモードを「Sport+」にした時のハンドリングの話で、「Comfort」モードではこれほどエキセントリックなことは起きない。
このドライブモードの変更は、新世代の「AMGパフォーマンスステアリング」と呼ばれる非常にメカニカルなステアリング上の左右に配された「AMGドライブコントロールスイッチ」によって容易に変更することができる。そのドライブモードはComfort、Sport、Sport+、Slippery、RACEの5種類から瞬時に切り替えることができる。さらに、自分だけのオリジナルモードを記憶できるIndividualが設定されている。
トランスミッションは8速のAMG スピードシフト DCT、デュアルクラッチトランスミッションだ。Sport+モードで走行した時のシフトアップダウンの素早さ、シフトチェンジした時のクラッチのつながりが瞬時なので駆動感に切れがなく、常にタイヤをコントロールしている感覚が嬉しい。このDCTのダイレクト感が4MATIC+のリア左右駆動配分に対してとてもリアリティがあり、右足でアクセルをコントロールしてコーナリングする感覚がリアルに伝わってくる。
例えば、100Rをコーナリングしている際のシフトアップダウンに対しても、この駆動の切れのないフィーリングがブレのないコーナリングを約束してくれる。AMGドライブコントロールスイッチのESPを長押しすることによってESPを完全にOFFにすることができ、こうすることで100RではまるでFRマシンのようにリアをスライドさせる超スポーティな走りが可能。とはいえ、誰でも試していいレベルとは限らないので、一般道でESP OFFを使うことは控えた方がいいだろう。
足まわりには専用の「AMG RIDE CONTROL サスペンション」が採用されている。こちらは専用開発のスプリングサブフレームなどを採用していて、キモは電子制御ダンパー。これまでのA 45 AMGに対して明らかにホイールストロークがスムーズで、路面をしっかりとつかんでいる感覚がある。しかも乗り心地がいい。以前のようなレーシングカートチックなフロントの反応は少なくなってしまっているけれども、速い操舵、遅い操舵、それらをミックスした操舵にしっかりと反応するので、奥の深い玄人受けするハンドリングに成長した。従って、ドライバーの扱い方次第でアンダーにもニュートラルにもオーバーにもコントロールすることが可能だ。筆者自身はエンジンの進化に驚愕することよりも、このハンドリングと乗り心地の進化に驚いている。
冒頭に戻ると、262km/hを記録したスピードから1コーナーを曲がる速度まで減速するのに使う、6ピストンのフロントブレーキの力強い減速感に感心した。周回を重ねるにつれ、若干スポンジーなフィーリングに変化するものの、メルセデスAMG A 45 S 4MATIC+のブレーキは減速フィールがほとんど落ちないのだ。これはサーキットを走るのに一番重要なことだろう。
新しくなったメルセデスAMG A 45 S 4MATIC+は、普段使いも苦にならないスーパーコンパクトマシンだ。
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December 30, 2019 at 07:00AM
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