●CX-30とヴェゼルはどういったクルマなの?
全幅1800ミリ以下・全長4400ミリ以下の国産コンパクトSUVジャンルで、2019年4〜9月の期間、最も売れたのがホンダ・ヴェゼル(28,829台)です。そのジャンルに飛び込んだ、10月24日発売開始のマツダCX-30は、なんと発売からたった1週間で、ヴェゼル(2,815台)と、C-HR(2,554台)とほぼ同等の2,525台を売り上げました(10月単月の販売台数で自販連による統計を参照)。
美しいクロスオーバーデザインをまとった「CX-30」と、その新型車を迎え撃つコンパクトSUVの雄こと「ヴェゼル」。今回はこの2台を取り上げ、3回にわたって2台を比べながら詳細にチェックしてまいります。
★マツダCX-30 20S L package 2WD
車両本体279万4000円+付属品合計13万6380円 (10%税込)
★ホンダヴェゼル ツーリングHonda SENSING 2WD
車両本体295万6800円+付属品合計12万8740円 (10%税込)
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■キャビンはヴェゼルの方が圧倒的に広い
■最小回転半径は同じでも体感上はヴェゼルがよく曲がる
■タイヤ1スペックで勝負をするCX-30、お客様の要望に広く応えられるヴェゼル
■ホンダの遊び心ある1.5L i-VTECターボに、マツダのスカイアクティブ-Gは対抗なるか?
■キャビンはヴェゼルの方が圧倒的に広い
マツダCX-30のボディサイズは4,395×1,795×1,540(全長×全幅×全高[mm])、車両重量は1,400kg、ホイールベースは2,655mm、最小回転半径は5.3メートル。
対するホンダヴェゼルは、4,340×1,790×1,605(全長×全幅×全高[mm])、車両重量は1,360kg、ホイールベースは2,610mm、最小回転半径は5.3メートル。
全幅と全長はほぼ近しいこの2台、サイドビューで写真を重ねて見ると、CX-30はAピラーが立ち上がる位置がヴェゼルよりも後方にあり、ロングノーズのデザインが強調されています。エンジンフードを上げると、ストラットタワーが見えないヴェゼルに対し、CX-30は視認できるほど。また2台のウィンドウガラス下端の高さはほぼ同じですが、CX-30の方が、65ミリほど全高が低い分、キャビンはさらに小さく感じます。
クロスオーバーSUVを謡うCX-30は、そのスタイリングと裏腹にキャビンが狭く、特に後席にそのしわ寄せがきています。ヴェゼルの方が室内は広く、また荷室も使い勝手が良いです。後席居住性や荷室については、第2レポートにて詳しくご紹介していきます。
■最小回転半径は同じでも体感上はヴェゼルがよく曲がる
最小回転半径はヴェゼルが5.5m、CX-30が5.3m。実はこの数字を見るまで、ヴェゼルとCX-30の最小回転半径は、ほぼ同じだと思っていました。駐車場での切り返しやUターンなどの際、2台に特に差を感じなかったのです。
その理由は、試乗したヴェゼルのツーリンググレードには、上級グレードに標準装備されるVGR(可変ステアリングギアレシオ)が装備されており、これによって、ヴェゼルではハンドル角が少なくて済んだことと、加えて、CX-30では、おそらくスローなギア比のために、より多く回す印象があったため、と考えられます。
マツダ3も筆者はスローなギア比だと感じましたが、マツダ3に比べるとCX-30の方が切り返し時に曲がる量が多いように感じます。これはホイールベースがマツダ3の2725ミリに対して、ヴェゼルは2655ミリと、70ミリ短縮化されていることも関係していると思われます。
■タイヤ1スペックで勝負をするCX-30、お客様の要望に広く応えられるヴェゼル
CX-30のタイヤは、215/55R18 TOYO PROXES R56。ヴェゼルは、225/50R18 ミシュランPRIMACY3。サスペンションや車体の差もありタイヤ単体での比較はできませんでしたが、ロードノイズが静かなCX-30のタイヤに対して、コーナリングでのグリップがより高く感じたのは、ヴェゼルツーリングのタイヤでした。
ちなみにヴェゼルにはグレード毎に、16インチ、17インチ、18インチと、複数のタイヤが採用されており、上級グレードになるほど、ゴツゴツした硬めの足回りになるものの、顧客のニーズに応じたグレード設定を行っています。CX-30は、最も廉価な20Sの2WDには215/65R16をオプションで選択できますが、原則、すべてのグレードは上記の18インチタイヤを装着しており、足回りは1スペックで設計されています。
一般的には、グレードごとに装着タイヤを分けて販売価格をコントロールすることが多いのですが、足周りが変われば、それごとに実車適合実験をする必要があり開発費が高騰、販売価格に響いてしまいます。装備内容から考慮して、CX-30の販売価格が異常ともいえるほどにリーズナブルなのは、こうした思い切った判断が実を結んだ結果でしょう。
■ホンダの遊び心ある1.5L i-VTECターボに、マツダのスカイアクティブ-Gは対抗なるか?
ヴェゼルツーリングに搭載される直列4気筒1.5リットルi-VTECターボエンジン(172ps/22.4kgm)は、その軽快なサウンドとスムーズでパワフルなエンジンフィールにより、決して軽くはない車体を、スルスルと加速させていきます。まさに「元気なSUV」という呼び方にマッチする加速を見せてくれます。燃費は17.6km/L(JC-08モード)。個人的には、乗り始めた瞬間から、「これはいい!」と感じさせてくれるエンジンです。
対するCX-30 20Sの「SKYACTIV-G 2.0」と呼ぶ、直列4気筒2.0リットルのエンジン(156ps/20.3kgm)は、滑らかで静かな音質と過不足ない加速を提供してくれます。ヴェゼルに対して、より静かに加速するため、良い意味で、加速感を伴わずにスルスルと速度が上がっていく印象があります。燃費は15.3km/L(WLTCモード ※JC08モード表記は無し)。実質的には、2台の燃費性能は同等のレベルにあります。
小排気量で元気に回るエンジンのヴェゼルか、静かで滑らかなエンジンのCX-30か、好みによって選ぶことになりそうです。
なお、CX-30には今後、次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」の搭載が予定されています。ガソリンエンジンの伸びのよさと、ディーゼルエンジンの優れた燃費・トルク・レスポンスを両取りしたエンジンですが、昨今のマツダの設計ロジックに習うならば、「キビキビしたエンジン特性には決してしない」と、筆者は予想しています。
■まとめ
エンジンフィールに価値を感じられる方にとっては、ホンダのVTECターボは大変魅力的だと思います。エンジン回転上昇に伴う盛り上がり感やエンジンサウンドは、ホンダならではの特徴です。対するCX-30は、パワートレインの主張を抑え、静かで滑らかな走行特性としており、走りはあくまで静かにしたい、という方には、CX-30の方がおススメです。
次回は、両者のインテリアの特徴やシートの座り心地、荷室の使い勝手についてレポートしていきます。
(文:吉川賢一/写真:鈴木祐子)
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January 01, 2020 at 06:03AM
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