86年に追加された「944S」で4気筒エンジンはDOHC化(さきにDOHC化した928のV8を半分にして使った)。88年の「944S2」は、そのエンジンの排気量を従来の2.5リッターから3リッターへと拡大して、出力をさらに上げたのが特徴だ。 たしかにパワフルだった。大きなカーブや直線では、大きく盛り上げるトルクによる力強い走りが味わえた。サスペンションシステムは硬すぎず、適度に快適。ブレーキは剛性が高く、ステアリングホイールは重めだが、しっかりとした操舵(そうだ)力を持っていた。 スポーツカーで大事なマニュアル変速機のシフトフィールをとっても、カチッカチッとゲートに入る正確性と剛性感がすばらしく、ポルシェ以外でほとんど味わえないフィールなのだ。 4気筒エンジンをフロントに搭載して後輪を駆動するスポーツカーとしては、944のあと、ポルシェは92年に「968」を発表。カブリオレやクラブスポーツなど、エレガンスと同時にスポーティーな志向の顧客も満足させるラインアップ構成も引き継いだ。 ただし収益性は高くなく、製造コストや人件費の高さも足を引っ張り、やがて90年代にポルシェは経営危機に陥るのだ。業績が上向くようになるのは、ベンデリン・ビーデキングという新しいCEOを迎え、トヨタから学んだリーン生産方式などを実行した93年以降である。2000年代後半には、会社の業績は大きく向上している。 この時点で、ポルシェからフロントエンジンのスポーツカーはなくなった。ポルシェのスポーツカーを代表するのは911で、その下にミドシップの「ボクスター」(1996年)が配され、そしてやがてドル箱になるSUV「カイエン」(2002年)が送り出された。 もちろん、ポルシェがつぶれてしまっては元も子もなかったので、ビーデキングCEOの選択は、あの時点では正しかったのだろう。EV化が進む今だけに、あらたに4気筒のスポーツカーを出す計画はなさそうだ。それゆえ、余計、スポーツカーの見本のような944シリーズに、懐かしさを覚えるのだ。 【スペックス】 車名 ポルシェ944S2 全長×全幅×全高 4300x1735x1290mm 2990cc直列4気筒 後輪駆動 最高出力 211ps@5800rpm 最大トルク 28.6kgm@4000rpm (写真=Porsche AG提供) ■著者プロフィール 小川フミオ モータージャーナリスト クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。
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