IHIが民間向け航空エンジンの整備事業に必要なデジタル変革(DX)に動きだした。瑞穂工場(東京都瑞穂町)に加え、鶴ケ島工場(埼玉県鶴ケ島市)が稼働し、一連の作業に伴うデータを一元管理できるようにする。作業待ちの防止や品質の徹底を目指す。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた整備需要の回復を見据えて、DXで先手を打つ。(孝志勇輔)
航空エンジンをめぐっては米ゼネラル・エレクトリック(GE)などの欧米3強が大半のシェアを握る。IHIは数%のシェアにとどまるが、成長が見込まれる分野だ。整備需要も拡大する見通し。「整備は(航空会社から)エンジンを預かる時間が競争力の一つ」(山本政彦デジタルトランスフォーメーション推進部部長)で、顧客に返却するまでに最短で1―2カ月、長いと半年ほどかかるケースもあるという。そこでIHIはエンジンを的確に整備しつつ、“世界一早く”顧客に返せる工場を目指す。
一方で、エンジンには非常に多くの部品が使われており、配線や配管も複雑で、IHIが預かる際の状態も千差万別だ。
分解や検査、修理、組み立てなどの工程にエンジンを流していく上で「適切な指示に基づいて作業し、記録にも誤りがなく、(データを)検索できる」(同)ことが必要。作業の後戻りや作業待ちの防止、徹底した品質確保を重視し、データを一元管理する体制を整える。
IHIは整備事業を手がけてきた瑞穂工場に加え、鶴ケ島工場も開設した。両工場の運営で相乗効果を創出するためにも、DXの活用がカギとなりそうだ。
同社は23年3月期までの3カ年の経営方針で、航空輸送システムを成長分野に位置付けている。コロナ禍で大きな打撃を受けたものの、中長期で収益の柱の一つだ。「(現場で)エンジンと必要なデータが粛々と流れるようにする」(同)ことで整備事業の拡大につなげる。
日刊工業新聞2021年7月1日
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