中国の不動産大手・中国恒大集団が巨額の負債を抱え、経営危機に陥っています。北京や上海など一部の大都市で住宅価格が異常に高騰する「不動産バブル」の様相を呈する中国。そもそも「社会主義市場経済」を掲げて個人には土地の所有権がない中国で、不動産価格の高騰とはどういう現象なのでしょうか。急成長を遂げてきた恒大集団は、なぜ今、経営難に直面しているのでしょうか。中国の不動産や金融業界に詳しい日本総研の関辰一主任研究員に聞きました。
社会主義国家での不動産売買とは?
――土地は国のもので、個人は所有できない中国において、不動産売買の仕組みとはどうなっているのでしょうか?
不動産というと、土地とその上物である建物の大きく二つがありますが、日本では両方とも個人の所有が可能です。中国の場合、土地の所有権は国が持っており、売買されるのは建物になります。ただ、建物を買った人にはその土地の使用権が与えられます。その使用権が建物価格の中に含まれているという形です。使用権は、用途によって年限が限られています。住宅は70年、工場用地は50年、などです。形式上、建物を買った人は期限が来たら土地の使用権と共に国に返さなければなりませんが、住宅用地使用権の期限が満了した場合は自動更新となります。そもそも、住宅の売買、つまり住宅の私有化が始まったのは1990年代です。
――北京や上海など一部の都市では不動産価格が高騰しています。
全国規模で見れば、政府が厳しく不動産市場を管理していることで、不動産は妥当な価格にコントロールされています。ただ、確かに一部の都市では住宅価格が実体経済に比べ非常に高いバブルの様相が見られます。
バブルの定義では、実体経済から資産価格がどれだけ乖離(かいり)しているかが重要です。実体経済の指標として分かりやすいのは平均世帯年収です。不動産の場合、一般の住宅価格が年間の平均世帯年収の5~6倍くらいが適正範囲と言われますが、上海や北京の中心部では数十倍というところも少なくなく、所得に比べ極めて高いと言えます。
日本でも、今、都心のマンションは高騰していると言われ、特に六本木などは非常に高くなっています。ある民間調査によると、港区六本木の中古住宅の平均価格は1平方メートルあたり134万円でした。70平方メートルだとおよそ1億円になります。一方、上海にある六本木のような高級住宅街「南京西路」の中古住宅の平均価格は、1平方メートルあたり、日本円にして225万円です。住宅価格はあまりにも高く、バブルが見られる状況です。ただ、全国平均でみると、住宅価格は世帯年収の6倍前後で落ち着いています。住宅価格がこれだけ世帯年収と乖離せずに低い価格で抑えられているのは、日本のバブル期では考えられないことです。
――なぜそうなっているのですか。
何が起きているかというと、中国政府が買い手側に住宅を購入するにあたっての様々な条件を課し、買いにくくしているのです。需要を抑えれば、価格は高騰しない。もしくは、供給を適度に増やせば価格は高騰しないので、不動産開発企業にどれだけ土地を持たせて、住宅を供給させるのかを調整してきました。アクセルとブレーキを頻繁に踏んで需給のバランスを調整してきたのです。
――需要を抑えるために課される住宅購入のための条件とは、どのようなものがあるのでしょうか?
例えば、不動産企業は、住宅…
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