自動車を停車時、駐車時にアイドリングをすることは都道府県の条例などで禁止されている。駐停車時は必ずアイドリングストップというのは、いまの時代に生きるドライバーにとっては常識だ。しかしながら、エンジンを大事にしたいドライバーにとっては、エンジンが冷えている状態で走るのはノーサンキュー。しっかりと暖機をして走り出したいと考えているだろう。
ところで、エンジンを暖機する必要はなぜあるのだろうか。
暖機運転は地球環境問題とトレードオフの関係にある
ご存知のように、エンジンというのは多くの金属パーツによって構成されている。そして金属は温度が上がると膨張してサイズが変化する。エンジンというのは各金属パーツが適切に膨張した状態できちんと回るように設計されているものだ。
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つまり、暖機というのはエンジンを設計通りに回すために必要な行為だと見ることができる。たしかに環境問題を考えるとアイドリングで駐めておくのがNGな時代なのは理解できても、せめて水温計の針が動くくらいまではアイドリングさせて暖機をしたいと思っている人は多いだろう。じつは水温計の針が動くのを目安にするのは、本質的には正しい判断基準とはいえない部分もある。冷却水の流れるウォータージャケットはエンジンの外側に近い部分にあり、燃焼室の温度が上がれば水温は高くなる。
大切なのは油温チェック! エンジンだけじゃなくトランスミッションなどにも気を使いたい
エンジンを構成する金属パーツの中でも、とくに重要な動くパーツというのはエンジンの中心部にあったりする。表面が暖まっていても、中が冷えているのでは十分に暖機できたとは言えない。そこで参考にしたいのが油温計だ。
エンジンの潤滑性を守るために欠かせないエンジンオイルというのは、まさにエンジンの中心部で各摺動部をなめらかにする役割を果たしている。つまり、油温が上がり始めればエンジン内部の金属パーツが暖まってきたと判断できるのだ。
また、エンジン内部パーツのダメージを抑えるにもエンジンオイルが適温になっていることは重要で、水温だけ上がっていても意味がない。暖機の目的がエンジン保護なのであれば本来は油温を重視すべきだ。
では、エンジンオイルの温度がしっかりと上がるまでアイドリングをするのがベストかといえば、少なくとも市販車レベルでいえばそういうわけでもない。たしかにエンジンは長時間のアイドリングで暖めてやることはできるかもしれないが、ほかにも暖めるべき部分はあるからだ。
たとえばトランスミッションもオイルが冷えているうちはシフトチェンジがしにくかったりするし、ショックアブソーバー(ダンパー)もその中にはオイルが封入されている。車体全体の暖機として考えると、こうした部分も暖めてやる必要がある。
より適切な暖機運転はクルマを走らせながら行うことが大切
では、トランスミッションやサスペンションを暖めるにはどうすればいいのかといえば、いくら長時間アイドリングしてもダメで、クルマを動かすしかない。クルマ全体での暖機を考えると、停まっているのはナンセンスで、ゆっくりと走らせることがベターな方法となるのだ。
長時間のアイドリングでエンジンだけを暖めるよりも、すぐさま走り出して、トランスミッションやサスペンションも動かすことでクルマ全体を暖めることが重要といえる。もちろん、その段階でアクセルペダルを大きく踏み込んだり、無理なシフトチェンジをしたり、急ハンドルを切って足回りに負担をかけるのはもってのほか。
極端にゆっくりと走っているのでは各部が暖まるのに時間がかかってしまうが、暖機のためには適度な負荷をかける必要があるのだ。結論からいえば、旧車であっても市販状態であれば、市街地で流れに乗る程度の走りを目安に、ゆっくりと加減速するイメージで走れば暖機を意識した走りとしては十分といえる。
長時間のアイドリングが有用になる特殊な場合もあるので注意!
なお、ピストンクリアランスを大きく取っているエンジンについては、この限りではない。その場合は、エンジンをしっかりと暖めないと、オイル上がりといってエンジンオイルが燃焼室に入り込んでしまう。その状態でガンガン走ってしまうとオイル消費も早くなり、また燃焼室のコンディションも悪化してしまうことがある。
そのようなシビアなエンジンチューニングを受けたエンジンであれば、しっかりと油温が上がるまでアイドリングで暖機をしないとトラブルにつながってしまうこともあるが、あくまで特殊事情であって、一般論に落とし込んでノーマルエンジンのクルマが長時間のアイドリングをする必要はないだろう。
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