2024年度上期をめどに市中に出回る予定の新紙幣の印刷が1日、国立印刷局東京工場(東京都北区)で始まった。紙幣のデザインが変わるのは04年以来で、この日は新1万円札の実物が初めてお披露目された。
デザインが刷新されるのは1万円、5千円、1千円の3種類のお札。流通枚数が少ない2千円札は刷新が見送られた。表面に描かれる肖像画は1万円札が「日本の資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一、5千円札が津田塾大学を創設した津田梅子、1千円札が血清療法を確立した北里柴三郎となる。1万円札の肖像の変更は、1984年に聖徳太子から福沢諭吉に変わって以来、40年ぶり。裏面も一新され、1万円札はいまの鳳凰(ほうおう)像から東京駅の丸の内駅舎に、5千円札は燕子花(かきつばた)図から藤の花、1千円札は富士山と桜から葛飾北斎の富嶽三十六景「神奈川沖浪裏(なみうら)」となる。
この日は新しい1万円札の印刷が始まり、立ち会った麻生太郎財務相らがお札の刷り上がりを確かめた。麻生氏は「今の時代にふさわしいデザインになった」と話した。
流通開始が2年半以上も先なのに、印刷が始まったのは、ATMや自動販売機、お店のレジなど新紙幣を扱う機器のテストを入念にし、障害やトラブルが起きないようにするためだ。日本銀行が用意したテスト会場に機器を持ち込み、貸し出された紙幣を使ってテストを繰り返すという。
財務省などによると、偽造防止対策などで、紙幣のデザインは、約20年ごとに変更している。今回は、肖像が立体的に動いて見える最先端のホログラムを使い、すかしもより精細なものを取り入れた。年齢や障害の有無に関係なく、誰でも使いやすい「ユニバーサルデザイン」も意識された。額面の数字を大きくし、指の感触でお札の種類がわかるよう工夫しているという。(吉田貴司)
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