「脱中国」を志向する製造業の受け皿になってきたベトナムが、感染力の強い新型コロナウイルスのデルタ株の広がりで、世界的な部品供給網のリスクになり始めた。背景には、ワクチン接種の遅れから、感染封じ込めの切り札として導入された「工場隔離」がある。(ハノイ=宋光祐)
そう・こうすけ 1977年生まれ。昨年1月からハノイ支局長。外出制限が続く今は、アパートの屋上で縄跳びが日課。
「ほかにも私たちみたいな会社はありますか? 『工場隔離』の追加手当は1日2万ドン(100円)」
ハノイ郊外の工業団地にある日系電子部品メーカーの工場で働くヒウさん(34)は8月9日、フェイスブックでこう問いかけた。3日後、工場のコロナ対策として、従業員が寝泊まりしながら働く工場隔離が始まることになっていた。いつ家に帰れるかは分からない。迷った末の行動だった。
「手当が安すぎる。他の仕事を探した方がいい」「会社も今は厳しい。働けるだけマシ」。多くのベトナム人から賛成や反対の意見が相次いだ。
しかし、実はヒウさんに選択肢はなかった。タクシー運転手の夫はコロナによるロックダウン(都市封鎖)で失業中。小学生の息子が2人おり、収入がなければ暮らせない。「家族から離れて働くなんて誰もやりたくない。でも今はやらざるを得ない。子どもに会えないのがとにかく寂しい」。隔離を始めて数日後、そう打ち明けた。
世界で新型コロナの感染が拡大した昨年、ベトナムは感染者数を抑えて、世界保健機関(WHO)からコロナ対策の「優等生」と称賛された。しかし、今年4月末からデルタ株の蔓延(まんえん)で感染が急拡大。7月に入って最大都市ホーチミンがある南部で連日、数千人規模の感染者が報告されるようになった。そこで政府が導入を決めたのが工場隔離だ。感染地域の工場は、従業員が敷地内などの特定の宿舎に寝泊まりして働くことが操業の条件となった。
ところが数百人分の宿泊場所…
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