
ブランドイメージを一新した直列5気筒の代え難い存在感
世界広しと言えども、今やアウディしか作っていない直列5気筒エンジン。モータースポーツを出自にもつこの特異なレイアウトのエンジンは、電動化まっしぐらの自動車業界にあっても筋を通し続ける。(Motor Magazine 2021年11月号より) 【写真はこちら】こだわりの5気筒エンジン。そしてこれを搭載する現行モデル3車種(全4枚) かつて直列5気筒エンジンはそれほど珍しいものではなかった。有名なところではメルセデス・ベンツの5気筒ディーゼル、ボルボ 850に積まれてデビューした5気筒ガソリンがラインナップされていたほか、国内メーカーでもホンダが5気筒ガソリンをビガー/アコードインスパイアに搭載し、トヨタにも5気筒ディーゼルがあった。 ところが1990年半ばにそのほとんどが生産を終了。私が調べた範囲では、国内市場最後となるボルボの5気筒も2014年式のV40を最後に姿を消した。アウディを唯一の例外として・・・。 なぜ、直列5気筒エンジンは作られなくなったのか。 1990年代といえばヨーロッパなどで排出ガス規制が次第に厳しくなっていった時期。これに対応するため、自動車メーカーは排出ガス処理装置や電子制御システムを高度化していったが、ここで用いられるソフトウェアが急速に複雑化し、モデルごとのキャリブレーションに多大なコストと労力を必要とするようになった。 そうした中、4気筒エンジンと6気筒エンジンのすき間を埋めるために誕生した5気筒は、どちらかに集約される形で消えていったというのが私の見立てだ。一方でボルボの5気筒が生き延びたのは、エンジン横置き専業メーカーのボルボはV8や直6に早々と見切りをつけ、「高級エンジン」を5気筒に絞っていたことと関係がありそうな気がする。
では、なぜアウディだけが5気筒エンジンを作り続けているのか
アウディ初の5気筒エンジンは1976年にアウディ100に搭載されて誕生。実は、これが自動車産業界初の5気筒ガソリンエンジンでもあった。このユニットはやがて200にも搭載されたほか、フォルクスワーゲンでも採用されるようになるが、その最大のターニングポイントとなったのは初代クワトロへの搭載だった。 1980年に誕生したUrクワトロ(ドイツ語でUrは「最初の」の意味で、Urクワトロは初代クワトロを指す)は、それまで地味な印象がつきまとったアウディのブランドイメージを一新。スポーティで先進テクノロジーを積極的に採り入れる自動車メーカーとの印象を人々に与えることになった。 しかも、クワトロの開発を指揮したのは、その後フォルクスワーゲングループの会長にも登り詰めたフェルディナント・ピエヒ氏その人。一説によれば、5気筒エンジンの開発にピエヒ氏は深く関わっていたとのことで、これが5気筒エンジンを連綿と作り続けるひとつの理由とされる。 そんなアウディの5気筒エンジンも1997年に当時の搭載モデル(A6とS6)が生産終了になると一時的に姿を消したが、2009年にはTT RSに採用されて復活。 そして2014年になると、エンジンブロックをそれまでの鋳鉄製からアルミ製に一新した新世代に生まれ変わる。現行のRS3、RS Q3、TT RSに搭載されているのは、すべてこの新型ユニットとなっている。 その特徴は、4気筒並みのコンパクトさと、6気筒に迫るパフォーマンスを両立した点に尽きるだろう。現行のアウディ5気筒エンジンは400psと480Nmを発揮。RS3スポーツバックであれば、0→100km/h加速を4.1秒で走りきり、最高速は実に280km/hまで到達する(いずれも本国発表データ)。 しかも、ただパワフルなだけでなく、スムーズな中に5気筒特有のビート感が加わっているところが魅力的でもある。5気筒になることで、音楽でいうところの変拍子に近くなり、その軽い違和感がエンジンにただならぬ迫力を与えているとも説明できる。 ちなみにRS3、RS Q3、TT RSの3台は、RSであるにもかかわらずマイルドなシャシセッティングが施されている点が特徴。ちなみに次期型RS3は5気筒を積んだまま、4WDながらドリフトモードが装備されるようだ。(文:大谷達人/写真:井上雅行、アウディAG)
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