夢のエンジンの仕組みとは?
夢のエンジン、SKYACTIV—X(スカイアクティブ・エックス)搭載車を中心とするマツダ3の試乗会がさる11月半ば、箱根で開かれた。マツダ3、ほれぼれするほどスタイリッシュな、マツダの主力モデル、アクセラの後継車である。アクセラ時代からと同じく、名前は「ファストバック」に変わったけれど、5ドア・ハッチバックと4ドア・ノッチバックの2種類のボディがある。
【主要諸元】全長×全幅×全高:4460×1795×1440mm、ホイールベース2725mm、車両重量1440kg、乗車定員5名、エンジン1997cc直列4気筒DOHC(180ps/6000rpm、224Nm/3000rpm)、トランスミッション6AT、駆動方式FWD、タイヤサイズ215/45R18、価格344万6463円(OP含まず)。
エンジンは、1.5リッター&2.0リッターの直列4気筒ガソリン、マイルド・ハイブリッド仕様のSKYACTIV-X2.0、それに1.8リッターの直列4気筒ディーゼルターボの4種類。ただし、1.5リッターはファストバックのみで、その1.5リッターと、スカイアクティブX 2.0には6MTの設定もある。Be a driver. さすがマツダだ。駆動方式は、4WDもある。セダンはATのみで、ファストバックより大人向けという位置付け。主力モデルだけに、豊富なバリエーション展開で、いろんな需要に応えようという戦略である。
注目のスカイアクティブXは、排気量1997ccで最高出力180ps/6000rpm、最大トルク224Nm/3000rpmを発揮する。従来型スカイアクティブGの2.0ガソリンは、156ps /6000rpm と199Nm/4000rpm。これだっていいエンジンだけれど、スカイアクティブXは全域で10%以上もぶあついトルクを生む。
スカイアクティブX搭載車のアルミホイールはブラックメタリック。
テールゲートには「スカイアクティブX」のエンブレム付き。新世代エンジン搭載車の主張はさりげない。
従来型2.0の圧縮比も量産ガソリン・エンジンとしては稀有な13.0:1という高圧縮である。スカイアクティブX 2.0はさらに高い、15.0:1というディーゼル並みをガソリンで実現している。軽油同様、ガソリンも高温で圧縮すると自然着火する。その性質を生かせば、燃料1に対して空気はその14.7倍というガソリン・エンジンの理論空燃比以上の薄さで燃やすこと、すなわちリーンバーンが可能になる。
ガソリンは軽油に較べ、圧縮着火しにくいことが大問題である。これを解決するためにマツダの開発陣が考案したのがSPCCI(SPARK CONTROLLED COMPRESSION IGNITION=火花点火制御圧縮着火)だ。着火は、ディーゼル・エンジンとは異なり、点火プラグでおこなう。点火プラグのまわりは混合気の状態をつねにガソリン濃いめにしておく。シリンダー内のセンサーが燃焼状態をつねにモニターしていて、マレリの高燃圧噴射システムが適宜適量、爆発1回につき最大3度、ピピッと正確な分量のガソリンを筒内に直接噴射する。
点火プラグによる着火で爆発した濃いめの混合気が膨張火炎球となって、薄い混合気を上から圧縮する。これをマツダは「エア・ピストン」と呼ぶ。下からはピストンが圧縮する。そうするとたまらず、残りのガソリンがドッカーンと瞬時に爆発する。
搭載するスカイアクティブXは、1997cc直列4気筒DOHC(180ps/6000rpm、224Nm/3000rpm)。
リーンバーンで問題となるNOx(窒素酸化物)は、常識とされていた理論空燃比の2倍をはるかに上まわる空気を入れてやると、NOxが出ない温度・圧力で燃えてしまうという。高負荷時は理論空燃比の1:14.7、それ以外のときは1:36.8のリーンバーンで、状況に応じて切り替える。そのプログラム、マッピングをつくることがもっとも困難な仕事だったという。
もうひとつの特徴として、スカイアクティブXはイートン製ルーツ式スーパーチャージャーを備えている。これは燃焼室内に新しい空気と一緒に排ガスを押し込む役割を果たしている。そうやって燃えにくくしてやらないと、エンジン本体が吹っ飛ぶほど強力な爆発力を生み出してしまうからだ。「エアサプライ」という名称をつけたのは、スーパーチャージャー本来の目的とは異なる「燃えにくくする」という仕事をさせているからだそうだ。
ボディカラーはオプションのソウルレッドクリスタルメタリック(6万6000円)。
さらにもうひとつ、近頃の高効率エンジンはアクセルをオフしても回転がなかなか落ちない、とお嘆きの貴兄に朗報である。スカイアクティブXはISG(Integrated Starter Generator)とリチウム電池からなる24Vの「M(マイルド)ハイブリッド」を搭載していて、ISGがアイドリング・ストップからの再始動時にはスターター・モーターとして働き、アクセル・オフ時には発電機となってエネルギー回生をする。この発電負荷を活用して、昔のエンジンみたいに、スッと回転を落としているのだ。
近頃48VのISGがドイツ・メーカー等で流行っているけれど、Mハイブリッドのシステムは24Vで、モーターはEV走行できるほど強力ではない。スカイアクティブXはエンジンの特性として初期応答性が高くて、良好な燃費性能を持っているから、大きなモーターは不要とマツダは考えたのだ。
懐かしいフィーリング
スカイアクティブXはこのように、バルブを独立して動かす、というような複雑な機構を用いることなく、「私、失敗しませんから」というリーンバーンを実現した。
筆者はスカイアクティブXを搭載するマツダ3ファストバックのAWD、6速MTと6速ATに試乗した。白い霧に包まれた伊豆スカイラインを走っていると、実に不思議な気分に包まれた。最新モデルなのに、なんだか懐かしい。1980〜90年代のヨーロッパ車みたいなのだ。プジョー「205」とメルセデス・ベンツ「190」を足して2で割ってシェイクしたみたいな……。
WLTCモード燃費は17.2km/L。
トランスミッションは6AT。
スカイアクティブX2.0はあの頃のガソリン・エンジンを思い出させるフィーリングだったのだ。内燃機関のファンなら、加山雄三のように呟きたくなるに違いない。
「僕は死ぬまで君を離さないぞ」
ビュンビュンまわるスポーツ・エンジンというわけではない。排気量2.0にして2.5リッター、控えめにいっても2.3リッターぐらいのトルクがあって、マニュアル6速トップ、1000rpm でゆるい坂道を登っちゃうようなフレキシビリティを持つ、実用車のエンジンの鑑のようなエンジンだ、と私は思った。それでいて、十国峠〜宇佐美〜十国峠、往復約50kmを走ったマツダの実測値で燃費はこれまでの2.0ガソリンが15.1km/L、X は18.2km/Lで、Xが21%優れていた。
最小回転半径は5.3m。
SPCCI(SPARK CONTROLLED COMPRESSION IGNITION=火花点火制御圧縮着火)の状態は、インフォテインメント用モニターに表示される。
スカイアクティブXは夢のエンジンといっても、エンジンである。内燃機関の改良型なだけに、じつは地味〜な、わかりにくい技術ではないか? と、筆者は思う。買って毎日使わないと、そのよさがわからない。という類のよさだ。それがおなじ排気量2.0同士で、価格は50万円以上も高い。試乗したX バーガンディ・セレクション AWDなんて、4WDということもあるにせよ、368万846円もする。同じ仕様の1.8ディーゼルと較べても40万円ほどお高い。
筆者的にはファストバックの1.5、2WDの6MTの、ちょっと遅いけれど、軽快さがマツダ3のベストだと思う。こんなにカッコよくてスポーティなハッチバックが231万5989円なのだから、お値打ちです。
もちろん、筆者とは異なるご意見もあるでしょう。けれど、せっかく新しいモノが出たのだ。そっちを選ばないでどうする?
インテリア・デザインは、ほかの内燃機関モデルとおなじ。
7インチのTFTカラー液晶画面付きのメーターパネル。
Lパッケージのシート表皮はレザー。運転席は電動調整式。
これ、1.5でスカイアクティブXをつくって、マツダ「ロードスター」に搭載したらセンセーションを巻き起こすのでは? マツダのエンジニアの方にそう申し上げたら、まずは量産エンジンでやることが重要だったそうだ。CAFE(会社別平均燃費基準)に対応しなければならないからだ。
マツダによると、2030年の時点でも地球上にある90%の自動車が、依然、内燃機関搭載車だと予測されるという。その内燃機関のトルクが10%も増えて、燃費が20%も向上した。こんなにスゴいスカイアクティブX、『ドクターX〜大門未知子〜』みたいな大ヒット作になると、ま、Xがおなじというだけのことですけど、そうなると、自動車界の未来は明るい。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)
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December 16, 2019 at 07:00PM
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