Thursday, February 20, 2020

ガソリンエンジンとディーゼルエンジン、ナニが違うの? - カルモマガジン

クルマのエンジンにはガソリンを燃料とするガソリンエンジンと、軽油を燃料とするディーゼルエンジンがあります。日本の乗用車はガソリンエンジンが主流でしたが、最近は「クリーンディーゼル」という名前とともに、輸入車を中心にディーゼルエンジンのクルマが増え始めたのは、なんとなく皆さんもご存じでしょう。

今回はあらためてガソリンエンジンとディーゼルエンジンの違いについて解説します。

軽油はディーゼル用であって軽自動車用ではありません

軽油はディーゼル用であって軽自動車用ではありません

クルマに使われる燃料は軽油、レギュラーガソリン、ハイオクガソリンの3種類です。燃料電池車用の水素や、タクシーで使われるLPガスもありますが、ここでは触れません。

軽油はディーゼルエンジンに、ガソリンはガソリンエンジンに使います。同じエンジンという名前が付いていますが、使っている燃料の違いはエンジンの構造の違いです。軽油はガソリンエンジンに使えません。逆もしかりです。

念のため申し上げると軽自動車に軽油を入れてはいけません。軽自動車はすべてガソリンエンジンを搭載しています。冗談のような話ですが、実は燃料入れ間違いによるJAF(日本自動車連盟)への救援要請は2018年12月の1ヵ月間に390件もありました。2015年12月が269件ですから3年間で1.5倍に増加をしています。

都市部での自動車保有率の減少、それに歩調を合わせるかのようなカーシェアリングなどの普及も原因なのでしょう、入れ間違いの理由には「うっかりしていた」「乗り慣れないクルマだった」というものが並んでいます。しかし、それらに混じって「軽自動車は軽油と思った」という理由も堂々ランクイン。この記事を読んでいる賢明なる読者諸兄におかれましては、ぜひとも周囲の方々への啓発をお願いしたいところです。

重たい商用車やクロカン四駆にはディーゼルエンジン、速さと快適性を求める乗用車にはガソリンエンジンが常識だった

重たい商用車やクロカン四駆にはディーゼルエンジン、速さと快適性を求める乗用車にはガソリンエンジンが常識だった

ガソリンエンジンとディーゼルエンジンが存在する理由は、その特性の違いにあります。大雑把に書くとガソリンエンジンは高回転まで回してパワーを稼ぎ、ディーゼルエンジンは低回転から力強さを発揮します。重たいトラックやバスのエンジンがディーゼルエンジンであることからも、その特性の違いをうかがい知ることができます。

乗用車の世界でもトヨタランドクルーザーや三菱パジェロなどの重たいSUVには、昔から(SUVと呼ばれる以前のクロカン四駆の時代から)ディーゼルエンジンが搭載されていました。重たいことに加えて悪路を低速で走る機会の多いクロカン四駆には、低回転域から力強いディーゼルエンジンの特性がマッチしていたこと、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも頑丈に作る必要があり、また点火装置が不要など、信頼性が高かったことなども理由です。

いっぽう多くの乗用車がガソリンエンジンを搭載してきた理由は、ディーゼルエンジンに比べて高回転まで回ること、振動が少なく静粛性に優れること、重量が軽いこと、コストが安いことなどが挙げられます。

ディーゼルエンジンは重たい反面、燃焼効率に優れるため燃費が良く、日本においてはガソリンに比べて軽油の税額が低いこともあって、前述のように大型商用車やSUVにはディーゼルエンジンが使われてきました。また欧州ではディーゼルのCO2排出量の少なさと好燃費が支持され、一時期は乗用車の半分以上がディーゼルということもありました。しかし北米は燃料コスト自体が安いこともあって乗用車用のディーゼルはほとんど普及しなかったのです。

排気ガス規制を乗り越えたクリーンディーゼル

排気ガス規制を乗り越えたクリーンディーゼル

一時期、日本ではディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)や窒素酸化物(NOx)が問題視され、世界的に最も厳しい法規制によってディーゼル乗用車は絶滅状態となりました。

その後、コモンレール式高圧インジェクター、排気再循環システム(EGR)、ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)、高性能触媒、そして尿素SCRなどの技術革新によりディーゼルの排気ガスは改善され、クリーンディーゼルとして復活を果たします。

ただしこのディーゼルの排気ガス対策システムはコストが高く、またクリーンディーゼルの必須装備となりつつある尿素SCRは一定走行距離での高品位尿素水「AdBlue(アドブルー)」の補給が必要となります(マツダ独自の低圧縮比ディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」は現状、北米向けを除いて尿素SCRなしのシステムです)。

お互い歩み寄ってきたが、燃費のディーゼル、快適性のガソリンは変わらない

最新のガソリンエンジンとディーゼルエンジンを乗り比べると、両者が歩み寄っているような印象を受けます。ガソリンエンジンもダウンサイジングターボに代表されるように高回転ではなく低中速回転域でのトルクを重視したものが増え、ディーゼルもずいぶん振動や音が少なくなり快適性が増しています。

ガソリンエンジンにしてもディーゼルエンジンにしても、燃費や排気ガスなどの環境性能が重視されるようになってきたことが理由でしょう。

それでも依然、ガソリンエンジン車のほうが音や振動が少なく、ディーゼルエンジン車のほうが低回転域の力強さや燃費の良さで優れる、という基本的な傾向は変わりません。

マツダ以外だとSUVしか国産ディーゼル車は用意されていない

マツダ以外だとSUVしか国産ディーゼル車は用意されていない1

今日、日本で買うことができるディーゼルエンジン車は、国産メーカーだと輸入車よりはるかに少ない状況です。最新のクリーンディーゼルはガソリンハイブリッドと同じくらい高価で、ハイブリッドが普及している日本だとディーゼルに積極的なメリットを見いだしにくいのも理由でしょう。トヨタがランドクルーザープラドとハイラックス、三菱がデリカD:5とエクリプスクロスなど、いずれもSUVに搭載しています。

マツダ以外だとSUVしか国産ディーゼル車は用意されていない2
マツダは国産メーカーのなかで最もディーゼルエンジンに熱心です。マツダは高価な触媒や尿素SCRを(現状では)必要としない独自のディーゼルエンジンのおかげでコストアップもそれほど大きくありません。フラッグシップのマツダ6からコンパクトカーのマツダ2まで、ロードスターとOEM車を除くすべての車種にディーゼルエンジン車をラインナップしています。

ガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車の細かな違い

ガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車の細かな違い

みなさんにとってなじみがあるのはガソリンエンジン車だと思いますが、ディーゼルエンジンとは、燃費や音・振動以外にも細かな違いがあります。

軽油は低温時の燃料凍結の心配があるので、スキーなどで寒冷地に向かう場合は現地での給油をおすすめします。軽油は販売されているエリアや時期によって5種類に分かれており、北海道はもちろん、東北と中部山岳地方で冬期に売られている軽油も関東や関西のものより低温に強くなっています。

一方でガソリンに比べて揮発性の低い軽油は、ガソリンスタンドでの給油時に溢れさせてこぼしてしまった時などに(やや)安全です。軽油がやや安全というよりガソリンが非常に危険といったほうがいいでしょう。

ちなみにガソリンスタンドの給油機のノズルは赤色がレギュラーガソリン、黄色がハイオクガソリン、そして緑色が軽油と決まっています。賢明なる読者のみなさんの知り合いが、万が一軽自動車に緑のノズルで給油しようとしていたら、全力で止めてあげてくださいね。

※記事の内容は2020年2月時点の情報で制作しています。

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1 comment:

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