回転デトネーションエンジン(RDE)と呼ばれる新型エンジンが実用化に近づいている。現在開発中のものはミサイル向けだが、将来は宇宙ロケットや超音速旅客機への搭載が期待される。コンコルド運航停止の要因だった高コストや騒音を解決し、超音速旅客機を再び就航させられるだろうか。
1960年代、世界中の技術者が、回転デトネーションエンジン(RDE)と呼ばれる新型ジェットエンジンのアイデアをひねくり回していた。だが、このエンジンはその後も実験の域を出ることはなかった。
その状況が変わろうとしているようだ。ジェットエンジンの世界的大手、米GEエアロスペースが2023年12月に、RDEの実用化に取り組んでいると発表したのだ。
10月には米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)が、別の米航空宇宙大手RTX傘下のレイセオンと、「ギャンビット」というRDEの開発契約を結んだ。DARPAは同社に2900万ドル(約41億円)出資する。
GEエアロスペースとレイセオンのRDEは、いずれもミサイル推進用だ。ロケットや既存のジェットエンジンなど、現行の推進システムが持つ航続距離や速度の限界を打ち破ることができる。
それだけでなく、両社が実用化に成功したなら、RDEは航空分野で幅広い役割を担うようになるかもしれない。超音速旅客機の復活につながる可能性がある。
制御された爆発を推力に
米セントラルフロリダ大学の先進航空宇宙エンジンの専門家、カリーム・アーメド氏は、RDEは、ひとことで言うと「燃焼の代わりに制御された爆発(デトネーション)を使う」と説明する。
詳しく言うと、ジェットエンジンは酸素と燃料を燃焼させて推力を得る。亜音速で進行するこの反応を、科学者はデフラグレーションと呼ぶ。他方、デトネーションは、反応が超音速で波及する高エネルギーの爆発だ。そのため、デトネーションのほうが強力な推力を生み出すことができる。効率も高まる可能性がある。
従来のジェットエンジンには可動部品が多い(図参照)。ブレードが回転して空気を取り込み、圧縮する。その空気に燃料を混ぜ、燃焼室で点火すると、高温の気体が急激に膨張し、後方から吐き出される。この排気がタービンを回し、プロセス全体を持続させる。
RDEはもっと単純だ。前方から取り込まれた空気は2重の円筒の間の隙間に押し込まれる。そこに注入された燃料が空気中の酸素と混じって爆発すると、超音速の衝撃波がらせん状に生じ、後方から出ていく。ひとたびデトネーションが起きると、反応は自動的に継続する。
この記事は有料会員登録で続きをご覧いただけます
残り1700文字 / 全文2795文字
【初割・2カ月無料】お申し込みで
人気コラム、特集…すべての記事が読み放題
ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題
バックナンバー12年分が読み放題
この記事はシリーズ「世界鳥瞰」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
からの記事と詳細 ( 新型エンジン「RDE」が紡ぐ 超音速旅客機の夢再び - 日経ビジネスオンライン )
https://ift.tt/mIc0BwA
0 Comments:
Post a Comment