「SNATCHER(スナッチャー)」は1988年にPC-8801版が最初にリリースされ、次いでMSX2版がリリースされたコマンド式アドベンチャーゲームだ。ジャンルとしてはサイバーパンクとなる。これらPC版は当時から大人気だったが、発売時の事情により、物語はACT2までしか収録されておらず、完結していなかった。
それから4年後の1992年、PCエンジン版「SNATCHER」が発売された。PCエンジンへの移植では、豊富なアニメーションや音声によるセリフのやり取りも注目されたが、最も重要なポイントはPC版ではACT2までしか収録されたなかった物語が、ついに完結編となるACT3を収録した完全版となっているところだ。
つまりパソコン版でしか「スナッチャー」を知らなかった人は、物語のクライマックスをこのPCエンジン版で楽しむことができたのだ。
舞台は2042年のネオ・コウベ・シティ! あと22年後か……
物語は1991年のモスクワで密かに開発されていた細菌兵器が大気に流出するバイオハザードが起こり、東欧諸国、ユーラシア大陸の約80%、世界の半数が死滅したというエピソードが語られ、そこから50年後、2042年のネオ・コウベ・シティでのお話だ。
この時代、バイオロイド「スナッチャー」が人間を殺してその人間になりきるという事件が世界を震撼させていた。主人公の「ギリアン・シード」は3年前、妻のジェミーとともにシベリアで記憶喪失の状態で発見され、それ以前の記憶を失っていたが、「JUNKER(Judgement Uninfected Naked Kind & Execute Rangerの略)」と呼ばれるスナッチャー壊滅のための組織に配属されるところから物語は始まる。
本作の舞台となる「ネオ・コウベ・シティ」のビジュアルは何度か街全体のビジュアルが表示されるが、映画「ブレードランナー」などの雰囲気が感じられる。またブラスターなどの武装や、VTOLで離着陸してするトライサイクルなど、ビジュアル面でもサイバーパンク感が満載だ。
また、主人公をサポートするメカの名前が「メタルギアmk-II」というのもジョークが効いていて面白い。「メタルギア」は「スナッチャー」以前にMSXで開発、発売されていたゲームの名前だからだ。
本作は「ACT1 SNATCH」、「ACT2 CURE」、「ACT3 JUNK」の3部構成となっており、ACT3のみPCエンジン版でのみ追加された新作のエピソードという事になる。
本作はコマンド式アドベンチャーながら、次にやるべきコマンドを選択しても、物語が進行しない場合がある。これはコマンドの回数で状況が変化するという動きも入っているためで、これにより時間経過で物事が動き出すような演出にもなっているのは面白いところだ。
ストーリーの進行に合わせて敵とのバトルシーンもある。バトルモードでは、画面を9分割して、カーソルの方向キーを入れながらボタンを押すことで、ブラスターを発射できるので、これでターゲットを撃つだけと操作はシンプル。体力がなくなるとゲームオーバーとなるが、ほとんどのバトルではよほどの事がなければ負ける事はないだろう。なお、バトルモードに入った直後はブラスターを構えておらず、ブラスターを構えるためにSELECTボタンを押す必要があるので、そこは注意したい。
バトルモードはほとんどのシーンにおいて、楽勝の戦闘が多いのだが、ACT2の終盤に出現するインセクターとのバトルだけは要注意だ。ここだけ難易度がやたらと急上昇しており、非常にハードな戦いが待っている。実際に筆者はここだけで何十分と繰り返し、カーソルキーを押す左手の親指がかなり痛くなったほどだ。
深みのあるストーリーを声優さんたちの名演技とともに!
ストーリーの内容についてはこれ以上触れずに話をするが、全てのストーリーを見終わって振り返ってみると、ACT3が公開されないままACT2で物語が終わってしまうと、区切りこそ悪くないものの、物語の根本的な謎が解決されないままのため、若干もやもやっとした印象になる。
ACT3まで見ることで、ようやく物語の全貌が明らかになるので、PCエンジン版の発売で、この素晴らしい物語の終焉が確認できたのは、本当にありがたい。ムービーは昨今のもののようにアクションシーン満載で動き回る、といったものではなく、静と動のメリハリの効いた動きの少ない動画となっており、作品の雰囲気にあった緊迫感がある。
最後に、本作も豪華な声優さんたちのキャスティングがすばらしい。本作で個人的に気に入ったのは小山茉美氏のメタルギア mk-IIが最高だった。声の質が玉川紗己子氏とも似ているからか、最初に聞いた時は、「攻殻機動隊」のタチコマを思い出させられた。
あとは前半の出番は少なめだったが、主人公ギリアンの奥さんであるジェミーの井上喜久子氏の声はいつ聴いても最高だった。また、バウンティハンターのランダム・ハジルの声を演じた塩沢兼人氏の声を久々に聴けたのもうれしいところだ。
「SNATCHER」は今見直しても色褪せない深みのあるストーリーを味わえる。未体験の人も、PC版のみプレイしていてACT3の存在を知らなかった人も、是非プレイして物語の結末を体感してみてほしい。
©Konami Digital Entertainment
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March 18, 2020 at 10:00PM
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