- 2020/03/23
- MotorFan編集部
ホンダ新型フィットのe:HEV(i-MMD)をジャーナリスト、世良耕太が試乗。ホンダ独自の2モーターハイブリッドは、通常はモーターで走行、エンジンの効率がいい領域はエンジン直結モードで走行する。シリーズハイブリッドの日産e-POWERと比べたら実際はどうなのか? ジャーナリスト世良耕太が工学博士畑村耕一氏とともに実験試乗した。
TEXT & PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
もっとバッテリー容量があれば、それに比例して楽しさも増すのに
『Motor Fan illustrated』で連載している『博士のエンジン手帖』では、4月15日に発売予定のVol.163でフィット・ハイブリッドを取り上げる。今回は、用賀駅(東京都世田谷区)に集合して東京ICから東名高速に乗り、小田原厚木道路経由で箱根ターンパイクを利用。標高1011mの大観山で折り返して編集部(東京都新宿区)に戻った。
博士(畑村耕一・工学博士)が「タコメーターが欲しい」とメッセージを送ってきたので、ハイブリッド車を試乗するときにいつもそうするように(たまに忘れたりするのだが)、準備した。ハイブリッド車の常で、エンジン回転数を表示するメーターの設定はない。そこで、OBDIIのポートからエンジン回転の情報を拾い、スマホ画面に表示させるようにした。今回のドライブでは、主に助手席からエンジン回転の様子を観察。復路の一部は自分でステアリングを握った。
フィット・ハイブリッドはe:HEVと呼ぶハイブリッドシステムを搭載している。最高出力109ps・80kWの走行用モーターと発電用モーターを備えた2モーターのシステムだ。最高出力39.6kWのリチウムイオンバッテリーは、ラゲッジルームの床下に搭載する。
このクルマは1.5ℓ直4自然吸気エンジン(最高出力98ps・72kW)を搭載しているが、基本的には発電専用だ。フィット・ハイブリッドは基本的に、モーターで走行する。この点だけを切り取れば、電気自動車(EV)と同じだ。強く加速する際や、上り坂に差し掛かって車速を維持するときなどにアクセルペダルを踏み込むと、バッテリーの出力だけでは足りなくなるので、エンジンが始動し、発電用モーターを駆動して、走行用モーターに電力を供給する。バッテリー残量が少なくなった際も同様だ。
いずれの場合も、エンジンが発生した力はタイヤに伝わらない。発電機を回して電気を作る作業に徹する。つまり、シリーズハイブリッドとして機能するわけだ。充電の要らない電気自動車ともいえる。日産ノートe-POWERと同じ仕組みだ。
フィット・ハイブリッドがノートe-POWERと異なるのは、エンジン直結モードを持っていることである。高速クルージング時など、モーターよりもエンジンで走行したほうが効率的に良い状況では、クラッチをつないで、エンジンの動力を駆動系に伝えて走行する。原理的には、エンジン直結モードを持ったシステムの方が、効率は高い。
7インチフルカラー液晶パネルの表示をエネルギーフローに切り替え、バッテリーからモーター、エンジンからバッテリーへの電力供給の様子を観察していると、ほぼ一定速で走っている限り、60km/hを少し超えるあたりからエンジン直結モードに切り替わるのがわかる。前輪左右を結ぶラインとエンジンとバッテリーを結ぶラインが交差する部分に現れる歯車のマークが、エンジン直結の証だ。
スマホの画面を確認すると、エンジン回転数は70km/hで1600rpm、100km/hで2400rpm程度だった。どちらの速度域でも、ロードノイズなどの走行音にマスクされるため、エンジン音は気にならない。2016年末に『手帖』の取材でノートe-POWERに乗ったときの記録を振り返ってみると、100km/h走行時のエンジン回転数はフィット・ハイブリッドと同じで約2400rpmだった。
ただしノートの場合は駆動軸直結ではなく、発電中のエンジン回転数だ。車速と連動しているわけではなく、エンジンにとって最も効率のいい(燃料消費が少ない)回転数で運転しているにすぎない。追い越しなどで強くアクセルペダルを踏み込むと、エンジンを高回転まで引き上げるのはノートもフィットも一緒だ。ただし、フィットは有段変速のATのように、エンジン回転数を段階的に制御する(その際はエンジン直結を解除し、モーターで走る)。全開加速をすると、フィットのエンジン回転は6000rpm近くに達するのが、アプリのメーター表示で確認できた。
7インチ液晶パネルの左端には、バッテリー残量を示す目盛りがある。10段階だが、その目盛りを見ていると、減るのも早いが、溜まるのも早い。バッテリー容量が少ないんじゃないか、あるいは容量はあっても、実際に使っているSOC(満充電から完全放電のうち、実際に電気を出し入れする領域)は狭いのではないかと勘ぐらせる目盛りの動きだ。下り勾配を利用して(目盛り上は)フル充電状態にしても、数百メートルEV走行を堪能すると、目盛りが3つほどに減って発電のためにエンジンが始動する。
目盛りが3つまで減ったので、回生によって電気エネルギーを蓄えようと下り勾配を惰性で走ると、あっという間に目盛りが増えてフル充電状態になる。そうしてフル充電状態になると、モーターが発電する際の抵抗力を利用した回生ブレーキは使えなくなるので、エンジンブレーキに頼ることになる。Dレンジでは1000rpm+αを基本に低い回転数で推移したが、ブレーキ力を強めに制御するBレンジにすると、一気に回転数は跳ね上がり、減速力は増した(運転席でも体感した)。
復路の小田原厚木道路・小田原西IC〜厚木IC間(31.7km)はいつも、走行車線を基本に走行し(制限速度70km/h)、車載メーター上で区間燃費を確認している。この間、ステアリングを握るのは、いつも筆者だ。フィット・ハイブリッド(車重1200kg)の燃費は27.8km/ℓだった。『手帖』で乗った主なハイブリッド車の小田厚燃費は以下のとおりである。
プリウス(1390kg):28.0 km/ℓ
クラウン・ハイブリッド(1750kg):24.0 km/ℓ
ソリオ・ハイブリッド(990kg):23.7 km/ℓ
セレナe-POWER(1760kg):21.6 km/ℓ
オデッセイ・ハイブリッド(1890kg):18.1km/ℓ
小田厚を一定車速で走っていると、バッテリー残量計の目盛りが3になったところでエンジンが始動し、エンジン直結走行を行ないながら充電を始める。目盛りが5か6になるとエンジンを止めてEV走行に移行。少しEV走行をして目盛りが3になると再びエンジンを始動させて、エンジン直結&充電走行に移る。その繰り返しだった。フル充電させないのは、回生した際のエネルギーを蓄える「空き」を残しておくためだろう。
乱暴に結論づければ、EV走行の楽しさはバッテリー容量に比例する。コストやパッケージングの面で現状に落ち着いたのだろうが、「もっとバッテリー容量があれば、それに比例して楽しさも増すのに」というのが、フィット・ハイブリッドを走らせ、バッテリーとEV走行に着目した際の願望である。
【Specifications】
<ホンダ・フィットe:HEV LUXE(FF)>
全長×全幅×全高:3995×1695×1540mm ホイールベース:2530mm 車両重量:1200kg エンジン形式:直列4気筒DOHC 排気量:1496cc ボア×ストローク:73.0×89.4mm 圧縮比:13.5 エンジン最高出力:72kW(98ps)/5600-6400rpm エンジン最大トルク:127Nm(13.0kgm)/4500-5000rpm モーター最高出力:80kW(109ps)/3500-8000rpm モーター最大トルク:253Nm(25.8kgm)/0-3000rpm WLTC総合モード燃費:27.4km/L 車両価格:232万7600円
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March 23, 2020 at 09:48AM
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