ランボルギーニのテストドライバー兼開発エンジニアだったクラウディオ・ザンポーリは、1980年代にロサンゼルスに渡り、エキゾチックカーの整備ビジネスで成功を収めた。しかし、彼の夢はそれだけでは終わらない。自身でスーパーカーを作ることを夢見ていたザンポーリは、1980年代後半に音楽プロデューサー兼作曲家のジョルジオ・モロダーとチームを組み、未だかつて存在しなかったマシンを造ろうと決意した。
ザンポーリは画期的なスーパーカーを造りたいと考えていた。その答えが、革新的なV-16である。ランボルギーニミウラのエンジンレイアウトにインスパイアされ、5段マニュアルギアボックスを備えた6.0リッターV型16気筒を横置きで搭載した。見事なボディワークは、ランボルギーニミウラやカウンタック、ランチアストラトス、その他の多くの名車をデザインしたことで知られる伝説的なデザイナー、マルチェロ・ガンディーニが手掛けたものである。
「ディスコの父」として知られるジョルジオ・モロダーは、当時のベストセラーアーティストと仕事を共にし、キャリアを通じて合計3つのアカデミー賞と4つのグラミー賞を受賞した人物だ。モロダーはロサンゼルスのエキゾチックカーの修理店でザンポーリと出会い、スポーツカーに対する共通の話題から意気投合し、新しいスーパーカー製作に関する議論へと発展した。出資車であるモロダーとのザンポーリのパートナーシップは、最初のプロトタイプの作成後に解消されたため、量産車からは「モロダー」の名前は削除されている。
最終的には、生産上の課題と複雑なメカニズムのために、生産された車両はわずか9台で、プロトタイプを含めても10台が生産されたに過ぎないと言われている。しかし、ザンポーリにとっては、チゼータは成功したといえるだろう。自身のデザインによるスーパーカーを生産するという夢が叶ったのだから。
モロダー本人が所有していたV16T
チゼータ・モロダー V16Tシャシーナンバー001は、1988年12月5日にロサンゼルスで開催されたイベントで初めて一般公開された。この車両は1989年のロサンゼルスモーターショーとジュネーヴモーターショーに展示され、チゼータ・モロダーはワールドデビューを果たしたのである。
パールホワイトにレッドレザーのインテリアで仕上げられたプロトタイプカーは、“完全に機能する”状態だった。プロダクションカーのV16Tとは多くの細かな違いが見られるが、それによってシャシーナンバー001それ自体が唯一無二の存在となっている。
外観上の違いとしては、大きなサイドエアインテーク、リアバンパーデザインとつながる下部ボディワークの折り目、さまざまなターンシグナルとフォグランプやサイドミラーなどが挙げられる。インテリアも、ダッシュボード、センタートンネル、ステアリングホイール、ドアパネル、シートがすべて量産車のV16Tとは異なっている。
ジョルジオ・モロダーは、ショーの終了後もシャシーナンバー001を保有し続けていたが、ジェイ・レノの勧めで、カリフォルニア州スコッツバレーのブルース・カネパでフルレストアを受けることにした。カネパのチームは、たとえ機能的なプロトタイプであったとしても、本格的に走らせるためには改善する必要のある箇所がいくつかあることを発見した。たとえば、燃料タンクの周囲には遮熱材が追加され、メカニカルな整備も必要だった。レストア完了後にはカネパ・チームによってテストされ、路上走行ができる状態に戻っていることが確認されている。
チゼータ・モロダー V16Tは、めったに見られないが非常に興味深いスーパーカーであり、数少ない16気筒の車両のひとつでもある。信じられないほどのパフォーマンス、見事なデザイン、魅力的なヒストリー、そして最高にエクスクルーシブなV16Tは、どこへ行っても際立つことは間違いない。チゼータ・モロダーのネームプレートを装着する唯一のシャシーをもつこの車両は、コレクターにとって見逃すことができない一台である。
画像ギャラリーにも多くの写真を掲載している。ぜひチェックしてみてほしい。
Patrick Ernzen (C) 2021 Courtesy of RM Sotheby's
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