Monday, October 16, 2023

航空業界、偽部品一掃に躍起-安全な空の旅を揺るがす大胆な不正発覚 - ブルームバーグ

misaltag.blogspot.com

ポルトガル航空の整備子会社のエンジニアらは今春、修理のために運び込まれた航空機エンジン「CFM56」の周りに集まっていた。年間100基余りのエンジンを扱う同社にとって、このむき出しにされたタービンも単なる通常の作業のように思われたが、今回だけは警戒する原因があった。

  作業員は交換部品である振動を減らすダンパーに摩耗の兆候があることに気付いたが、付属の書類にはその部品が製造ラインから出荷されたばかりの新品であることが明記されていた。ポルトガル航空は6月21日、米ゼネラル・エレクトリック( GE)と共にCFMエンジンを製造しているフランスの航空宇宙企業 サフランにこの食い違いを指摘した。

  サフランはすぐに書類が偽造されていたことを突き止めた。署名が同社の従業員のものではなく、部品の参照番号と発注番号も合致しなかった。

Airside Operations With TAP Portuguese Airline

ポルトガル航空の整備格納庫(リスボンの国際空港)

Photographer: Thomas Meyer/Bloomberg

  これまでにサフランとGEは同様に偽造された他の証明書90余りを 発見。偽の部品は126基のエンジンに見つかり、それら全てがロンドンの同じ部品販売業者、AOGテクニクスとつながっていた。若い起業家のホセ・アレハンドロ・ザモラ・イララ氏が8年前に創業したほぼ無名の企業だ。

  エンジニアは出どころの怪しい部品を見破る訓練を受けているが、「そうした部品を目の当たりにするのはいつもショックだ」と今回の発見に詳しい関係者1人が社内協議を理由に匿名で語った。

  リスボンの作業員による偽部品の発見で航空業界における大掛かりな不正が露呈し、航空機エンジンメーカーとその顧客は影響を食い止めようと躍起になっている。不適切な書類が添付された何千もの部品が世界中の航空会社や流通業者、整備工場に出回り、そうした部品を使ったジェットエンジンが自社の運航する航空機に搭載されていることが航空各社で相次ぎ発覚している。

  この記事は、法的書類や企業の届け出、規制当局の開示資料、ソーシャルメディアアカウントに加え、業界幹部およびザモラ氏の経歴に詳しい複数の関係者から得た情報に基づいている。関係者はデリケートな関係性を理由に匿名で語った。

Bogus Parts in the World’s Most Widely Flown Engine

Exposed to extreme temperatures, some parts are spinning at more than 10,000 rpm

Sources: Shutterstock image, Heico Corporation, Bloomberg research

  米航空大手全てと他の6社で、航空機にAOGの問題部品が搭載されていることが判明。エンジントラブルによる緊急事態はこれまで発生していないものの、数年間にわたる大胆な不正が世界で最も安全な交通手段となった航空システムの危険なギャップを浮き彫りにしている。安全プロトコルがいとも簡単に破られたことで、数十年来のシステムに憂慮すべき抜け穴が突然露呈した航空業界の自己分析にもつながっている。

  リサイクル航空部品を販売するミネアポリス近郊の企業、フィルモア・アビエーションを経営するティム・ゼマノビッチ氏は「不正をしようと思っている人々を止めるのは難しい。それは信用が大きく関わっているからだ」と述べた。

  ブルームバーグがこのスキャンダルを最初に報じた8月下旬以降、旧世代のエアバスA320やボーイング737に使われた未承認の疑いのある部品が航空各社で相次ぎ発見された。CFM56エンジンは現在も2万2000基余りが搭載されており、偽造証明書が付けられた部品は今や米国から中国、オーストラリアに至る世界各地に拡散している。

Widely Flown

US carriers are among the biggest operators of aircraft with CFM56 engines

Source: Cirium

  今回の騒動の背後にいるAOGのウェブサイトによると、同社は英国とシンガポール、フランクフルト、マイアミに倉庫を持ち、「顧客を飛ばし続ける」使命を掲げる「世界有数の航空機支援サービス提供会社」と称していた。同サイトは現在は削除されている。

GE Profit Exceeds Estimates as Order Backlog Rises

「CFM56-7B」ジェットエンジンの組み立て作業(ノースカロライナ州ダラム)

Photographer: Jim R. Bounds/Bloomberg

  しかし、それは全くの茶番劇だった。規制当局や業界幹部によれば、AOGは航空業界の大物をだまし、耐空性記録を偽造して何千ものジェットエンジン部品を販売。修復された中古部品を新品だとする書類付きで販売する過程で多額の利益を得たケースもあるとされる。同社は、批評家が指摘する航空規制システムにおける数十年来の盲点を悪用することで、それを実現した可能性がある。

  サフランのオリヴィエ・アンドリーズ最高経営責任者(CEO)は、「幽霊会社が偽の証明書類で予備の部品を供給することが容認されるのは少し不思議だ。そうした部品を誰に販売したのか、全ての航空会社が確認作業を行っていたのか、われわれには分からない」と述べた。

Opening Day of Paris Air Show 2023

サフランのオリヴィエ・アンドリーズCEO

Photographer: Benjamin Girette/Bloomberg

  歴史的に、規制当局は航空会社と各社が運航する航空機に目を光らせてきた。ジェット機の修理の際に交換される個々の部品はいずれも入念に記録されている。そうした書類の束からは点検・修理の歴史と、その部品がまだ安全に使用できるかどうかが読み取れる。

  安全性と記録管理への強いこだわりも、航空業界に部品供給という基本的に自主規制型で極めて利潤の多い市場が存在するという事実を覆い隠すことはできない。ここでは仲介業者がメーカーや航空会社、修理工場の間で毎年何十万もの部品を流通させている。個人的なつながりが幅を利かせ、調達スペシャリストは知り合いのベンダーと売買を行う。

  この排他的な世界に、ベネズエラ出身の若いパートタイムDJが足を踏み入れた。AOGの記録によると、ザモラ氏は2015年、ロンドンから電車で約1時間のホーブで創業。その後数年にわたりネットワークを広げていった。最終的にロンドンの高級オフィスに本拠を移したが、実際はシェアオフィス業者から住所をレンタルしたに過ぎなかった。

  ザモラ氏の言い分を聞こうと試みたが、同氏は応じなかった。10月5日に電話で短時間の接触に成功したものの、相手が記者だと知ったザモラ氏にすぐに切られた。妻のサラ・レディンさんは、ブルームバーグが「彼を悪人か何かに仕立て上げようとしている。情報は良くてもでっち上げのため、夫は誰とも話したがらない」と電話で語った。

  ザモラ氏の法廷弁護士である法律事務所ブラックストーン・チェンバーズのトム・クリーバー氏にコメントを求めたが、今のところ返答はない。

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ホセ・アレハンドロ・ザモラ・イララ氏

Source: Soundcloud

  ザモラ氏の長年の知人によれば、もう何カ月も連絡を取っていないという。ザモラ氏は8月2日、GEエアロスペースの安全・規制担当最高顧問を務めるダグ・ヘンズレー氏に休暇で国外にいると伝えた。しかし、その間はGEへのCFM関連部品の販売を「礼儀として」停止していたことが裁判資料で分かった。

  GEとサフランは現在、ロンドンの裁判所でAOGと対決している。CFMインターナショナルのエンジン製造パートナーは「製品の全ての販売」に関する書類の提出に向けた裁判所命令を求めていた。AOGは10月4日に記録を提出した。

  欧州航空安全庁(EASA)は、サプライヤーが規制されていないため、AOGを調査する権限はないと説明。米連邦航空局(FAA)は、未承認部品を検出するシステムを維持し、サプライヤーを精査するよう企業に呼びかけていると明らかにした。報道官によると、航空機を修理する整備会社や航空会社には機体に取り付けられた部品が承認された正規品であることを確認する責任があるが、FAAにはそのためのリソースが不足しているという。 英民間航空局(CAA)はAOGの未承認部品供給に関する調査で、FAAとEASAを支援すると表明した。

Inside Safran SA's Aircraft Component Plant

仏ジュヌヴィリエにあるサフランの航空エンジン部品工場の製造ライン

Photographer: Nathan Laine/Bloomberg

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原題: Airlines Are Racing to Hunt Down the Fake Parts in Their Fleets(抜粋)

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