全2871文字
マツダがロータリーエンジン(以下、ロータリー)を復活させた。2023年11月に発売するプラグインハイブリッド車(PHEV)「MX-30 Rotary-EV」の発電機として採用する。「ロータリーには可能性がある」と同社最高技術責任者(CTO)の廣瀬一郎氏は語る。その可能性の1つとして、水素や合成燃料(e-fuel)といった「多様な燃料に対応できる“雑食性”がある。CN(カーボンニュートラル)燃料や水素などに対応したロータリーの展開も想定している」と社長兼CEO(最高経営責任者)の毛籠(もろ)勝弘氏は説明する。レシプロエンジンと比べ燃費が悪いことや排ガス規制に対応しにくいことなどから、2012年、量産終了に追い込まれたロータリー。時代の変化と共に再びその可能性が注目されている。
時代に適合できず生産終了した過去
ロータリーは、三角形で“おむすび型”のローターの回転運動によって、直接動力を得るエンジンだ。ハウジングとローターの隙間にできる空間で燃料を燃やす。このときに発生する膨張圧でローターを回転させる仕組みだ。
同社のロータリー開発担当者は、「2000年代後半ごろからロータリーは“冬の時代”だった」と話す。ロータリーには、燃費が悪いことや排ガス規制の対応が難しいといった特徴がある。構造的に燃焼室内での気体の圧縮比を高めにくく熱効率も低いことから、ピストン式をとるレシプロエンジンよりも燃費は悪化する。
排ガスも、窒素酸化物(NOX)は少ない一方で炭化水素(HC)が多い。各国が排ガス規制を強化する中で販売を継続することが難しくなっていた。実際に2010年には、欧州で当時の排ガス規制「Euro 5(ユーロ5)」に適合できず、ロータリーを搭載していたスポーツ車「RX-8」の販売を終了した。日本でも2012年にRX-8の生産を終え、ロータリーの量産は中止となった。
2008年の「リーマン・ショック」や2011年の東日本大震災などの影響も響いた。当時急ピッチで進めていた新世代「スカイアクティブエンジン」へのリソース集中や電動化の推進でロータリー開発の優先度は次第に低くなっていった。ロータリー開発メンバーは大きく減少。その後ロータリー開発グループは解散した。
実は電動車と相性がよかった
ただ、「ロータリーはマツダにとって宝物のような技術である」と毛籠氏はロータリーの重要性を説明する。ロータリーは愛好家が多い。マツダのブランド価値を高めるためにも、技術資産であるロータリーを時代の要請に適合しつつ、復活させることは重要である。
その1つの答えがMX-30 Rotary-EVである。「実はロータリーは電動車と相性がよい」とマツダの関係者は明かす。レシプロエンジンよりも小型で必要な出力を発揮できるロータリーの特徴を生かした。
ボンネット内の構造物が少ないEVや、電動関連部品の大きさがPHEVより小さいMHEVと比べ、プラグイン・ハイブリッド・システムはボンネット内の搭載容積が大きい傾向にある。ロータリーが小型であるため、エンジンをモーターやジェネレーターと同軸上に配置することが可能で、全長4395mm、全幅1795mmと車体が大きくないMX-30 Rotary-EVにも搭載できた。
多様な燃料に対応できる
ロータリーの将来性は、電動車と相性がよいだけではない。前述した毛籠氏の発言の通り多様な燃料を使えることも利点の1つである。ガソリンはもとより、水素やe-fuel、液化石油ガス(LPG)や圧縮天然ガス(CNG)などにも対応しやすい。多様な燃料を使えることにより、「インフラや燃料の流通状況に応じて、拡張性を持たせることが可能だ」と廣瀬氏は話す。
自動車業界が大きく電動化へ舵(かじ)を切る中、EUは2023年3月、2035年以降もe-fuelや水素を利用するエンジン車に限り販売できるという方針を発表した。EVシフトを進めていた他の国や地域もこれに続く可能性がある。自動車メーカー各社は水素や合成燃料に対応したエンジンの開発を進めている。
廣瀬氏は「スーパー耐久シリーズのようなレースで実証実験を進めているe-fuelや水素が普及してくれば、再エネ発電による充電とこれらの燃料の組み合わせで、多様な地域・顧客のニーズに応える持続可能なクルマとして(ロータリーエンジン搭載車が)広まる」と期待する。その上で、「ロータリーを活用して、将来のマルチ燃料への道筋をつくる」(廣瀬氏)ことを目指す。
からの記事と詳細 ( マツダ・ロータリーの逆襲、水素や合成燃料も使える“雑食エンジン”だった - ITpro )
https://ift.tt/JDV4UXF
0 Comments:
Post a Comment