現在と20年ほど前の同排気量のエンジンを比較してみると、最大トルクが大きくなり、発生回転数も低くなり、なにより消費燃料が少なくなっている。また最高出力が同程度なら、より小排気量のエンジンで達成できている。なぜ、この20年あまりで驚くほどエンジン性能は上がったのだろうか。その最新技術をいくつか紹介しよう。
この20年でパワーは1.15〜1.2倍、燃費は1.5倍に
1980年代中盤以降、トヨタ2L 直4エンジンの主力となった「3S-FE型」は、イプサム1997年モデル搭載時で最高出力140ps/6000rpm、最大トルク19.0kgm/4400rpm、燃費は10・15モードで11.6km/Lだった。一方、2020年2月時点でのトヨタの最新2L直4エンジン「M20A-FKS」は、レクサス UX200に搭載されて最高出力174ps/6600rpm、21.3kgm/4000-5200rpm、燃費はJC08モードで17.2km/L、WLTC総合でも16.4km/Lをマークしている。
同じ自動車メーカーが製造する同クラスのエンジンは、この20〜30年間で最高出力と最大トルクを1.15〜1.2倍に伸ばしつつ、カタログ燃費を1.5倍強に改善した。実際には10・15モードとJC08モード、WLTCといった各燃費計測法は最新のものになるほど車両に掛かる負荷が大きいので、例えばレクサスUX200を10・15モードで燃費計測し直したらWLTC総合の1.5倍以上に燃費は伸びることだろう。まさに技術革新の賜である。
その技術革新のきっかけとなったのは、地球温暖化に端を発する環境問題だ。排出ガス中のCO2の減少が自動車の命題となり、世界中のエンジンメーカーが工夫を凝らしてきた。ではどのような技術が、これらを可能にしているのだろうか。
エンジンの高効率化は熱効率の改善にあった
エンジンを高効率化するには、熱効率と比熱比の向上が外せない。熱効率とは、燃料を燃焼させたときに生じる熱エネルギーのうち、どのくらいの割合をエンジン出力として利用できるかを示す物理用語だ。比熱比とは流体の温度を1度上げるための熱量のことで、単原子物質の方が複数の原子で構成される物質より比熱比が高い。
ガソリンエンジンでは空気の方がガソリンより比熱比が高い。比熱比の向上とは混合気に含ませるガソリンをいかに少なくするか、そしてそれをいかに燃焼させるかということになる。
というのも、燃料が少なすぎる混合気は、着火しづらくなり、パワーダウンはおろかエンジンがかからない可能性すらある。空気とガソリンの燃焼に最適な比率は、重量ベースでガソリン:空気=1:14.7となる。
1990年頃のエンジンの熱効率は概ね30%程度だった。しかし2017年にトヨタが発表した「A25A-FXS型ダイナミック・フォースエンジン」は熱効率41%を達成し、2019年にマツダは「SKYACTIV-X」で熱効率43%に到達した。これは世界中の市販エンジンで、最も高い熱効率となる。30年前と最新の2Lエンジンを比較して、出力も燃費も向上している理由のひとつは、この熱効率の改善にある。
トヨタのダイナミック・フォースエンジンの熱効率を向上させた技術は、比熱比を向上させる筒内直接噴射技術の熟成と噴霧ノズルのマルチポート化、吸入空気量増大を狙った燃焼室の高速タンブル流の改善とVVT-iの採用、膨張比(=圧縮比)を高めるためのボア・ストローク比のロング化、リーンバーンを行うため圧縮比向上を狙ったミラーサイクルの採用、排気をスムーズにするポート端部形状変更などだ。
一方、マツダのSKYACTIV-Xは、ダイナミック・フォースエンジンよりも更なる高圧縮比とスーパーリーンバーンを実現し、熱効率と比熱比を高め、高効率化を達成した。具体的にはガソリン:空気比を1:30にまで高めた超希薄混合気、これを燃焼させるための火花点火制御圧縮着火(SPCCI)とガソリンエンジンとしては異例の16.3:1という高圧縮比(欧州仕様。国内仕様は15:1)、多くの空気をピストン内に送り込むためのスーパーチャージャー、SPCCIが低効率なシーンをカバーするM Hybridなどだ。
もうひとつ注目されるのが可変圧縮比だ。通常、圧縮比は固定なのだが、走行シーンに応じて求められる圧縮比は異なる。巡行時など吸気量が少ない時は高圧縮比、加速時など吸気量が多い時には低圧縮比といった具合だ。適切な圧縮比でなければエンジンの燃焼に無駄が生じ、パワーロスや低燃費につながる。これを解消したのが日産の可変圧縮比エンジンだ。走行状態によりピストンとクランクシャフト間の距離を変化させ、8:1から14:1まで無段階で自在に変更し、これによりハイパワーと低燃費を実現している。
ガソリンエンジンの熱効率は50%あたりが限界なのだろうか。エンジン出力として使用されていない残りのエネルギーには、排気損失、冷却損失、機械損失などがある。排気損失は筒内直接噴射技術で対策し、それでも発生した損失分はターボや冷却水の保温に使用されている。機械損失はエンジン部品の摺動時に発生しており、滑らかに動くよう工作精度を上げ対策している。
残る冷却損失はまだ、未開の分野が多い。冷却損失の多くはエンジン本体から外部に熱が伝播して失われる。エンジンルームが熱くなるのは、このためだ。そこでマツダはSKYACTIV-Xの進化のため、エンジン本体を断熱化する技術を開発しているとのこと。これが実現すれば、更なる高圧縮比と比熱比の向上が見込めるとのことで、エンジンの熱効率は今後も上昇の一途を辿り、さらにハイパワーで低燃費のエンジンの完成も期待できる。(文:猪俣義久)
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February 03, 2020 at 05:33PM
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