Monday, February 10, 2020

古典的なスタイリングと最新鋭エンジンの素敵なマリアージュ - MotorFan[モーターファン]

  • 2020/02/10
  • MotorFan編集部 大屋雄一
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クラシカルな外観にファーストエースの倒立フォークを組み合わせる。

1971年に創業、1984年に製造を一旦中止したものの、2014年に中国のShinerayグループと手を組んで復活したイタリアンブランドがSWMだ。同国のビアンドロンノにある最新鋭の工場を拠点とし、ハスクバーナやモトグッツィの元技術スタッフが開発に携わっているという。今回試乗したのは、フルサイズの本格的なエンデューロモデルRS125Rの水冷シングルを搭載したネオクラシック、アウトロー125だ。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

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SWM アウトロー125……539,000円

 2014年のEICMAでSWMブランドの復活が発表された。SWMは1971年にイタリアで創業した二輪メーカーで、主にオフロードモデルを製造し、当時はレースシーンでも大活躍したという。ブランド名は「Speedy Working Motors」の頭文字を並べたものと公式にアナウンスされているが、ウィキペディアには創業者の二人の名前(Piero Sironi氏とFausto Vergani氏)と所在地であるVimercate Milanoの頭文字「SV.VM」に由来すると記されている。SWMの特徴的なロゴマークをよく見ると、Wの間に小さなピリオドらしきものが確認できることから、個人的には後者の説が先にありきのような気がしてならない。

カラーリングはホワイト×ブラウン。このほかにブラックもあり、車名は「エース・オブ・スペード125」となる。価格は¥539,000で同じだ。
リヤに150サイズのセミブロックタイヤを履く。

ネオクラシックブームが原付二種クラスにも到来

 このアウトロー125、1960~1970年代のスクランブラーを彷彿させるスタイリングが特徴だ。昨今のネオクラシックブームに合致したモデルであり、またSWMというブランドにとっては原点回帰という表現を使ってもいいだろう。ワイヤースポークホイールは前後とも17インチで、セミブロックタイヤはピレリのスコーピオンラリー。φ41mm倒立式フロントフォークおよびリヤのツインショックは台湾のファーストエース製で、後者はプリロードの調整が可能だ。

高く跳ね上げられたツインサイレンサーがクラスを超えた存在感を放つ。
シート高は720mmと低く、身長175cmの私で両足のかかとが楽に接地し、さらに膝がわずかに曲がる。ハンドルは幅が広く絞り角が少なめで、オフロードテイストが漂う。

 16.5Lを公称する大きめのタンクやアップタイプのツインサイレンサー、そして表示サイズよりもファットに見える前後タイヤなど、軽二輪クラスに負けないほどのボリューム感を有するアウトロー125。とはいえシート高は低めなので足着き性は良好であり、また乾燥重量で130kgという軽い車体により、取り回しは非常にイージーだ。

 エンジンを始動する。このクラシカルな外観からは想像できないほど快活であり、なおかつ弾けるようなシングルの排気音が聞こえてきたので、思わずタンクの下をのぞき込んでしまった。搭載されているのは、同社のエンデューロモデルSM125Rと共通の124.7cc水冷DOHC4バルブ単気筒で、これは元ハスクバーナの技術者が白紙の状態から開発したものだということを試乗後に知った。1次バランサーが組み込まれているのは当然として、パーツリストを見て驚いたのはフィンガーフォロワーロッカーアームまで採用していること。これはF1のエンジンが発祥とされ、近年のスーパースポーツがこぞって採用している高回転化に必須なメカニズムである。それをクラシカルなスクランブラーモデルにまで導入するとは……。

 さて、この最新鋭の水冷シングルについて。最高出力は本国サイトにも記載されていないが、同じパワーユニットを積むSM125Rの日本仕様が11kW(15ps)/10,500rpmを公称していること。また、EUのA1ライセンスに合わせて現地で販売されるほとんどの125ccモデルが11kWを上限としていることから、アウトロー125もほぼ同等の最高出力と思われる。
 スロットル操作に対するピックアップはコンペティティブなエンジン並みに鋭く、低回転域でのトルクはやや薄いと感じるものの、不意にエンストさせてしまうような気配は皆無だ。右手を大きく動かすほどに気持ち良く伸び上がり、7,000rpm付近でさらに一段と盛り上がる。そして、その勢いは何とレブリミットの11,000rpmまで続くのだ。排気量が125ccなので驚くほど速いわけではないのだが、興奮と快感を伴う伸び上がり感と、そんなエンジンをネオクラシックモデルに積んでしまったことに、メーカーとしての勢いを感じずにはいられない。

 コンペモデルを彷彿させるフィーリングのエンジンに対して、ハンドリングはタイヤの太さから想像できるイメージ通りに安定指向だ。倒し込みや切り返しに適度な手応えがあり、それによって発生するフロントの穏やかな舵角を幅の広いハンドルで自在にコントロールできる。大排気量車から原付二種に乗り換えると、クイックに過ぎるハンドリングに不安を覚えることが多々あるが、アウトロー125にそうした軽薄さは一切ない。

 ファーストエースの前後ショックはスプリングレートがやや高めなようだ。一人乗りではあまりストローク感が伝わらず、荒れた路面での接地感が薄いのだが、試しにタンデムで走ってみたところ、車体姿勢は極端な後ろ下がりにならず、ギャップ通過時のストローク量やその後の収束も絶妙だった。フレーム剛性も十分に高いことから、フル積載でのツーリングにも対応したモデルと言えるかもしれない。

 唯一、気になったとすればコンバインドブレーキだ。EUでは2016年以降、51cc以上の新型車にABSを装備することが義務化され、125cc以下は前後連動タイプでも可となっている。SWMはフロントキャリパーに片押し3ピストンを採用し、フットペダルを踏むとリヤキャリパーとともにフロントの中央のピストンを作動させるという特殊な前後連動ブレーキを採用。これがやや強めに作動するので、例えばUターンなどリヤブレーキで駆動力を微調整したい場面でフロントも利いてしまい、どうしてもギクシャクしやすい。だが、一方では街乗り程度のペースならフットペダルだけで減速が事足りるというイージーさがあるので、多くの人にとっては歓迎されるかもしれない。

 2020年2月現在、国内4メーカーの正規ラインナップにおいて、最も高額な原付二種はホンダのCB125R(¥456,500)なので、アウトロー125の¥539,000は単純に高いと思われるだろう。だが、原二クラスではネオクラシックモデルが希少であること、さらにこの古典的なスタイルに最新鋭の水冷シングルを組み合わせたという点において唯一無二であり、アウトロー125でしか味わえない世界があることは確か。MVアグスタジャパンが輸入販売元というもの心強い要素と言えるだろう。

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February 10, 2020 at 02:04PM
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