Wednesday, May 27, 2020

40年以上使われ続ける!? 基本設計の優れた国産長寿エンジン5機【エンジンで振り返る日本車の歴史 その2】 - モーサイ

昨今では必ずしもそうとは言い切れないものの、一昔前の2輪用エンジンの寿命は、数年~10年が一般的だった。ただし、秀逸な基本設計が高く評価され、20年以上の歳月を生き抜いた長寿エンジンも存在する。
当記事では、様々なモデルに搭載され、時代を超えて愛された「名エンジン」を紹介していきたい。


1975/76年型TT500(XT500の輸出名)/XT500用として開発され、1978年からSR400/500に搭載されたヤマハ製4ストビッグシングルは、2020年で45周年を迎える。

1976年 エンデューロXT500(500cc、空冷4スト OHC 単気筒)。オイルタンク・イン・フレームを採用し、車両がどんな体勢になってもエンジンに確実にオイルを循環できるような配慮がされている

2020年 SR400(400cc、空冷4スト OHC 単気筒)。発売当時から「キックスタート」にこだわり、現在もセルモーターが付いていない非常に稀有な存在

単純な生産年数の長さでは、60年以上の歴史を持つホンダ・スーパーカブのそれには及ばないものの、スーパーカブが数回の全面刷新を受けているのに対して、ヤマハ製4ストビッグシングルの構造は1975年型TT500も現行SRもほとんど共通。
そう考えると国産2輪車の最長寿エンジンは、TT/XT/SR系と言うべきかもしれない。

SR400のエンジン(エンジン型式2J6)。2001年に排ガス規制対策のためにH313Eと型式は変わるが、現在販売されているものも含め、基本構造は共通(現行型のエンジン型式はH342E)

ちなみに、昨今ではクラシックなフィーリングが味わえる牧歌的な単気筒、あるいは、チューニングを楽しむ素材として認知されているSRのエンジンだが、デビュー当初のTT/XTは本格的なスポーツシングルで、オフロード系を中心にして数々のレースで栄冠を獲得。黎明期のパリダカールラリーでは2連覇を飾っている。

1975年 TT500(500cc、空冷4スト OHC 単気筒)。マグネシウム製のクランクケースカバーやアルミの燃料タンクなど、徹底的な軽量化が図られた。なお写真の車両は1978年モデル

「ザッパー」とは風を切る音、「ZAP」を語源とするカワサキの造語。
同社はZ1の開発時にもこの言葉を使っていたが、一般的にカワサキ・ザッパー系と言ったら、1976~2006年に販売された650/750cc並列4気筒車のことである。

1976年 Z650Four(652cc、空冷4スト DOHC 並列4気筒)。「ザッパー」シリーズの代表格ともいえるZ650。軽量かつ十分なパワーがあり、運動性の高さも特徴

そんなザッパー系の歴史を振り返って興味深いのは、時代に応じて存在意義が変化したことだろう。
第1号車のZ650がZ1/Z2の弟分だったのに対して、1980年代以降のザッパー系は排気量を738ccに拡大し、他社のナナハンに対抗。そして過給器を装着した1984年型750ターボで、いったんザッパー系の進化は終焉を迎えるものの、1990年代以降はネイキッドのゼファー750、ベーシックスポーツのZR-7に搭載されることとなった。

1984年 Z750TURBO(738cc、空冷4スト DOHC 並列4気筒)。ターボチャージャーに加えて、フューエルインジェクションを採用するなど、先進的な技術が多数採用されていた

1999年 ZR-7(738cc、空冷4スト DOHC 並列4気筒)。ネイキッドブームの最中に登場したZR-7。ハーフカウル付きのZR-7Sも併売されていた

なおパッと見の印象はZ1/2とよく似ているザッパー系の並列4気筒だが、Z1/2のクランクがボール+ローラーベアリング支持の組み立て式だったのに対して、ザッパー系は軽量化と高回転化、コスト抑制を意識した結果、プレーンメタル支持の一体鍛造を採用していた。

Z650のエンジン(上)とその透過図。64ps/8500rpmという最高出力は同時期に発売されたナナハンバイクと比べてもそん色ない数値だった。

→次のページ:1980年代以降に生まれた長寿エンジンたち

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May 27, 2020 at 04:51PM
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