【北京=多部田俊輔、川上尚志】世界最大級の自動車展示会、北京国際自動車ショーが26日開幕した。出展された新車のうち約4割が電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)など新エネルギー車で、各社の注力ぶりが目立つ。ホンダや独フォルクスワーゲン(VW)などの大手が自社ブランドの本格的なEVを披露した。新型コロナウイルスの感染拡大で先行きが不透明ななか、世界最大のEV市場である中国を起点に世界展開を加速したい戦略が透ける。
ホンダは初めて「ホンダ」ブランドのEVのコンセプト車を公開した
今回の北京ショーは新型コロナという異常な状況下での開催となった。もともと4月に予定されていたが、5カ月遅れで開催。会場ではマスク着用など感染防止対策が徹底された。
そうしたなかでEVが数多く出展されたのは、中国がEV普及のために2017年に発表した「NEV規制」が大きく影響している。各メーカーに対し、中国販売全体の一定比率の製造・販売を義務付けた。同政策に対応するために各社がここ数年でEV開発に取り組んだ結果、今回は多くの新製品が投入された面もある。
「中国では今後4年で自信の持てる7車種を投入する」
日産自動車の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は26日、自動車ショーに合わせたオンライン記者会見で強調した。ショーでは21年にも世界で発売する新型EV「アリア」を海外で初めて披露した。アリアを含めてEVなど7種類の主力車を中国に投入する。
ホンダも中国で初めてとなる「ホンダ」ブランドのEVのコンセプトカーを披露した。30年までに世界販売の3分の2をEVなど電動車にする計画の達成に向け、新車投入を加速する。
トヨタ自動車も燃料電池車(FCV)「ミライ」や、自動運転のEV「イーパレット」を披露した。同社はすでに高級ブランド「レクサス」などでもEVを中国で販売しており、電動車の品ぞろえ拡充を急ぐ。
独フォルクスワーゲンはEVのSUVを発表した
欧米系では中国でシェア首位のVWが世界戦略車で、10月に中国で発売する多目的スポーツ車(SUV)のEV「ID.4」などを発表。米フォード・モーターもSUVのEV「マスタング・マッハE」を発表した。
大手各社が中国でEVなどの新型車のアピールに力を入れるのは、中国市場が新型コロナを受けた需要低迷からいち早く回復し、成長に転じていることも大きい。
中国はもともと19年のEV販売が約100万台と世界の約半分を占める「EV大国」だ。EVなど新エネ車も回復が鮮明で、政府主導の地方での販売促進策などが奏功し、7月の販売台数は前年同月比19.3%増と13カ月ぶりのプラスだった。
世界では欧州や米カリフォルニア州で自動車に対する環境規制の動きが一段と強まる。大手各社は最大市場の中国で勝ち抜く力を磨くことで今後の世界展開につなげたい思惑もありそうだ。
足元の中国のEV市場では高級車の台頭が目立つ。米テスラは1月から、上海で新設した工場から小型車「モデル3」の一般向け出荷を開始。実売価格は約27万元(約420万円)と従来より3割以上安くなり、20年に入ってからの中国での販売台数は前年の約2倍で推移している。
「中国版テスラ」と呼ばれる中国の新興EVメーカーの売れ行きも好調だ。筆頭格とされる上海蔚来汽車(NIO)の李斌(ウィリアム・リー)CEOは26日の記者会見で、「8月の納入台数は過去最高となった」と胸を張った。
ただ競争は激化している。中国の新興EVメーカーの有力な一社だった拝騰(バイトン)は資金繰りに行き詰まり、7月から事業の大半を停止した。新型コロナ禍で今後は優勝劣敗が一段と進みそうだ。中国のこうした勢力図の変化は、世界の今後のEV競争を占う試金石にもなりそうだ。
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