日本マイクロソフトが2020年4月8日~10日まで開催したオンラインイベント「Microsoft Teams Anniversary Week」では、国内企業3社のTeams導入事例が紹介された。そのうちの1社が東洋エンジニアリングである。
「サンクスカードを切り札に!!~Teamsの全社ツール浸透作戦」と題して、東洋エンジニアリング 経営企画本部広報・IR部長兼TOYO未来推進部長の飯田渉氏が講演。また、同社が、Teamsによるコミュニケーションの活性化を目的に導入した「TeamSuite」の開発元であるコミュニティオ 代表取締役の嶋田健作氏が、同製品の概要について説明した。その内容をレポートする。
DXの推進に立ちはだかった3つの「ない」
東洋エンジニアリングは、石油化学ブラントをはじめとする各種産業プラントの設計、建設などを行う総合エンジニアリング事業会社だ。2018年度の売上高は2949億円、アジアや欧州、北米、中南米にも拠点を展開。全世界に5500人のプラントエンジニアを擁しているという。
2017年度から、「DXoT(Digital Transformation of TOYO )」と呼ぶ、デジタルトランスフォーメーション活動に着手。いまや一般化している「DX」という略語を早い時期から使っていた点でも注目される。
だが、その道のりは決して順調ではなかったという。
東洋エンジニアリング 経営企画本部 広報・IR部長 兼 TOYO未来推進部長の飯田渉氏は、「活動開始当初は、DXをデジタル化の延長線上と誤解したり、IT部門とプロジェクトに関わった人たちだけが孤軍奮闘する一方で、これらの人たちが孤立無援化するという他人事感が社内に広がっていた。また、Office365を導入したものの、使いたい人だけが使うという環境にあり、新たな機能を使うのは一部のユーザーしかいなかった」と振り返る。
また、「世界に展開する総合エンジニアリング会社に入って、自ら活躍したいと思っていた若手社員たちも、昭和的な業務手法から脱却できず、先輩社員たちは目の前の仕事に追われて、変革意欲が抑制。現場では勘と経験と度胸(KKD)が大事であると言われるなかで、働き方を変えられない状況に陥っていた。いわば、理解できない経営陣、巻き込まれてくれない社員、進まない改革という3つの『ない』の状況にあり、社員が変革を体感できていない状態だった」とする。
トップダウンとボトムアップでDXを推進する体制を構築
同社では、こうした状況を打開するため、2018年度半ばから、社員が変革を体感できるためにはどうしたらいいのかを再考。経営トップの理解とコミットメントによる「トップダウン」、DXoT推進部を設置し、経営の覚悟を示す人選による「専任推進役」の選任、若い感性と有志のチャレンジによる「ボトムアップ」という3つのポイントから、新たな取り組みを開始したという。
「経営トップの理解とコミットメントが最重要であり、トップダウンで進めるからには、社長が、DXoTの最大の理解者であることが必須と考えた。DXに熟知した社員が、数回に渡り、社長にレクチャーを行ったところ、社会や業界を取り巻く環境の変化に対して、社長自身が腹の底から出てくるような恐怖感を持ち始め、DXoT推進に対する強い意思表明とともに、それを繰り返し社内に発信することを約束してくれた」(飯田氏)。
現任の永松治夫社長は2018年に社長に就任。新たな社長のもとで、DXoTへの取り組みが改めてコミットされたといえる。
また、「誰もが認めるエース社員」(飯田氏)を専任推進役に任命したことも、DXoTの推進に大きな役割を果たしたという。新設したDXoT推進部の部長に就任した瀬尾範章氏は、30代で部長に抜擢されている。同社史上最大となるマレーシアでのエチレンプラントプロジェクトに4年間派遣されていたなかで、本社に呼び戻されて、DXoTの推進に取り組むことになったという。
瀬尾氏は、わずか2カ月でプラントプロジェクト遂行に関わる現業コアタスクを、DXの取り組みとしてまとめ、それを遂行に移したという。ここでは「劇的な生産性向上に向けた目標」を設定するとともに、DXoTによる17のタスクを実行。一般社員が理解を深めるために、DXoTによって、業務がどう変革されるのかをわかりやすく解説した自作アニメを約10本制作し、イントラネットなどで公開。さらに、各部門に推進役を配置して、きめ細かなセミナーの開催で社内にDXoTの浸透を着実に進めていったという。
そして、もう一方の「ボトムアップの取り組み」では、TOYO未来推進部の活動があげられる。このTOYO未来推進部は、ボトムアップとはいいながらも、社長と副社長が深く関与するユニークな体制が見逃せない。
2017年度に、企業文化改革を目指した有志による活動が、芳澤雅之副社長のもとでスタート。2018年度には、この活動を、新設したTOYO未来推進部に引き継ぎ、当初は26人だったメンバーも、現在では70人を超える規模に拡大。2019年度からは社長直下の組織として活動を行なっているという。プロジェクトメンバーは基本的には兼務であり、月8時間をTOYO未来推進部の活動に費やすことを目標にしている。現在、8つのワーキンググループを通じて、それぞれの活動に取り組んでいる。
「ボトムアップの組織のなかに、社長と副社長が入っているのが肝である。発案から決済までの時間が速い。その日のうちにアクションにつながることもある」(飯田氏)。
このように、東洋エンジニアリングには、トップダウンによるDXoT推進部とボトムアップによるTOYO未来推進部とが、それぞれにDXoTの実現に向けた取り組みをドライブする体制が整っている。
Teamsを公式ツールとして使った背景とは?
すでにOffice365を導入していた同社では、「生産性の劇的な向上」というDXoTの目標の達成に向けて、Teamsを公式ツール化することを決定した。「社員が変革を体感できるようにするためにTeamsの浸透を図り、コラボレーションの非効率化と機会損失ゼロを目指すことにした」とする。
全社員がTeamsを活用することによって、同一ファイルを同時更新するなどの無駄な業務を排除するとともに、ビジネスチャットの活用によるアクションのスピードアップ、すぐに始められるビデオ会議や「いいね」による承認、チャットでの41言語への直接翻訳、場所やデバイスを問わずにファイル共有や編集が行なえるといったTeamsのメリットを生かすことにした。
「海外でのプロジェクトに関わる社員が多く、社長や役員でもWhatsApp Messengerで、海外の取引先とやり取りするというケースが多いのにも関わらず、社内ではOutlookのメールと、オンプレミスのサーバーで仕事をしている状況だった。その一方で、Teamsでどんなことができるのかといったことが理解できていなかった状況だった」とする。
そこで、社内ではWhatsApp Messengerなどに比べてセキュリティ面ではTeamsが優れていること、生産性の高いコミュニケーションツールとして活用できることを示し、それをトップダウンで進めたという。
懸念したのは、管理職や管理部門における活用だったという。「管理部門の業務はルーチン化しており、変化を嫌う傾向がある。生産性向上という意識にも目が向かないという不安があった」としたほか、「幹部の多くは、会議が多く、自席にいないことが多い。その一方で社員に対しては生産性をあげるように指示をしている。しかし、社員の方には、上司の会議からの出待ち、ハンコ待ち、承認返信待ちで、生産性があがらないという問題があった。そこで、2019年11月の経営会議での承認によって、Teamsを活用することで、役員、本部長、部長が、自らが不在でも、機会損失を最小化する業務スタイルに転換。決裁者が自席にいなくても承認できるとすることで、幹部の不在が、社員のボトルネックにならないようにした」。
さらに、役員や本部長、部長に対して、自らの業務スタイルを転換すること、自らの組織に対して日々働きかけることが職務であると明示。率先して変わる責任と、部門の変革責任が、幹部自身にあることを示した。そして、これを経営会議の承認事項として、社内イントラネットを通じて、社員に発信したという。
Teamsの公式ツール化と、それによるDXoTの推進に対しては、社員からの直接的な反対意見はなかったというが、「サイレントマジョリティは、どう使っていいかがわからないというものだった」という課題があった。そこで、「公式ツール化しただけでは利用が浸透しないため、ここではボトムアップの取り組みを活用することにした」(飯田氏)という。
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April 17, 2020 at 07:00AM
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