Sunday, April 26, 2020

アルピナの強烈で見事なエンジニアリングを搭載 注目のSUV BMW アルピナ XD4に試乗(octane.jp) - Yahoo!ニュース

ファストバッククーペのシルエットを持つSUVといえば、メルセデスやアウディ、ポルシェやランボルギーニなども参入する、新時代のスポーツスペシャリティと位置づけられるカテゴリーだ。そこに先鞭をつけたBMWは現在、X2、X4そしてX6の3モデルを展開している。
 
そのうち、車格的にはDセグメントに相当するX4をベースに、アルピナがオリジナルのエンジニアリングを注ぎ込んだのがXD4だ。現在アルピナのラインナップには、ユーティリティもしっかり気が配られたX3をベースとするXD3もあり、2モデルのSUVが選べる環境にある。

アルピナの強烈で見事なエンジニアリングを搭載│注目のSUV BMW アルピナ XD4に試乗(写真11点)

XD4が搭載するエンジンは3リッター 直6ディーゼルだ。アルピナのディーゼルといえばXD3の他に、3シリーズをベースとするD3や5シリーズをベースとするD5などもあり、それら全ては3リッター 直6となっている。が、XD4のエンジンは他とは一線を画するメカニズムを採用しており、それがこのモデルの最大の特徴にもなっている。
 
XD4が搭載するのは4基のターボチャージャーを備える「クワッドターボ」だ。低圧用2基、高圧用2基からなるタービン構成は、他モデルの「ビターボ」つまりツインターボに対して当然ながらタービン稼働パターンが多様化しており、負荷に応じた過給がより緻密に制御されている。欧州のBMWでは7シリーズやX5が搭載するプレミアムユニットで、日本ではこのXD4以外に購入の選択肢はない。
 
オリジナルのチューニングが施されたXD4のクワッドターボは最高出力388psを発揮。これはビターボに対して50ps以上ハイパワーなことに加えて、その出力回転域が4000~5000rpmとトップエンド側に大きくなっているのがポイントだ。そして最大トルクも発生域は同等ながら770Nmとビターボに対して1割近く向上している。
 
トランスミッションはZF製8段AT、ドライブトレインはXドライブつまり四駆で、駆動状況に応じて配分を素早く前後にほぼ100%移動できるもの。XD4のそれは後軸寄りにより多くの配分が掛かり、オンロードでの旋回性を重視したFR寄りの設定となっている。加えてリアアクスル側には多板クラッチを電子制御しながら左右輪の差動をリニアにコントロールするアクティブLSDを装着、ハイパワーを効率的に伝達しながら旋回能力を高めるだけでなく、スタビリティの側にもリニアに作用する。

XD4のインテリアは、ベースモデルに対してその設えがより繊細で上質だ。細身の径で握り心地に適度な柔らかさを持つステアリングは、表皮にラヴァリナと呼ばれる仔牛革を用いており、掌にしっとりと馴染む仕立てがアルピナらしい。もちろんシートやオーナメントなどの仕立てはコンフィギュレーションすることも可能となっている。ちなみにユーティリティはベースモデルに準ずるが、X4はローキャビンとはいえ大人4人での週末ツーリングをこなせる居住性と荷室容量は確保している。大掛かりな道具や大きなスーツケースを詰め込むような話でもなければ、充分に日々の用途は賄えるだろう。
 
XD4の動力性能を示す0~100km/h加速は4.6秒、そして最高巡航速度は268km/h。同級のSUVであるポルシェマカンのグレードになぞらえればGTSを超え、限りなくターボに近いパフォーマンスを有するということだ。アクセルを踏み込めばそのスペックは充分に伝わってくる。ことさら強烈なのは2000~4000rpmの中間域で、アクセルの踏み込みに押し寄せる770Nmのトルクの塊は、進路を歪めんがばかりに車体を押し出していく。一方でパワーの伸びは5000rp付近までしっかり続き、ディーゼルでありながら高回転域でふん詰まるような頭打ち感も匂わせない。加えて直6らしい透明感のあるサウンドも、それがディーゼルであるとは思えないものだ。
 
この強烈な動力性能を取り扱うにドライブモードの切り替えさえも必要を感じないが、ワインディングでパワーを乗せていけばさすがに足腰の踏ん張りも物足りなくなる。XD4にはドライブモードに応じてレートが可変する電子制御ダンパーが装備されており、どちらかといえばシャシーパフォーマンスのために積極的にモードを使い分ける格好になるだろう。駆動配分は旋回側に振られている上、LSDの差動も加われば相当に鋭利なハンドリングが想像されるが、そこはアルピナだけあって、着色めいたアジリティというところとは一線を画している。

鋭い応答の中にも路面にしなやかに馴染む品の良さはしっかりと持たされており、ゆったりと流すようなドライビングでもその丸い動きが心地よい。さすがに強烈なパワーのSUVということもあって低速域では若干の硬さは伝わるも、速度が乗るに連れそのしっとりとしたフットワークには感心させられるはずだ。素材がなんであれ、そのらしさをあくまで乗り味で表現するアルピナのエンジニアリングには毎度のことながら恐れ入る。

文:渡辺敏史

Octane Japan 編集部

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