Wednesday, April 22, 2020

マツダ・ロータリーエンジンの系譜と系統 ロータリーエンジンの可能性⑦ - MotorFan[モーターファン]

  • 2020/04/23
  • Motor Fan illustrated編集部

1961年7月、東洋工業(現マツダ)はドイツ(当時は西独)のNSU社と技術提携を結び最初にKKM400型(400ccシングル)ロータリーエンジンが送られてきた。同年11月のことである。それが量産化へ向けて研究開発を始める原点となった。当初ライバルは100社を超えると言われたが、自動車用エンジンとして開花させたのは日本のマツダだけである。

TEXT:近田 茂(Shigeru CHIKATA) 
PHOTO:MAZDA

April 1961-40A

April 1961-40A
10A:1967年5月に登場したコスモスポーツに搭載。当初110ps/7000rpmの最高出力と13.3㎏・m/3500rpmの最大トルクを発揮。世界初の量産ロータリーエンジン車は、4MTを介して185㎞/hの最高速度を誇った。翌年128馬力にパワーアップしたL10B型に進化。一方100馬力仕様の10Aがファミリアロータリーに搭載され1968年7月に発売。
12A:10Aのトルク不足を補うべく、ローターハウジング幅を10Aの60mmから70mmにワイド化され、1970年5月に登場したカペラロータリーに搭載された。10Aは491cc×2の982ccだったが、12Aは573cc×2の1146ccに拡大され最高出力は120ps/6000rpm。最大トルクは16㎏・m/3500rpmを発揮。車両重量は950㎏と軽く4MTで最高速度は190㎞/h。翌年ロータリー初のAT車を投入。1972年には5MT車のGSⅡも追加された。
13B:12Aに対してローターハウジングの幅をさらに10mm拡大。幅を80mmにすることで、排気量を654cc×2の1308ccへ 拡大している。1973年12月に昭和51年規制適合車としてルーチェAPグランツーリスモに搭載して新登場。翌年マイクロバスのパークウェイロータリー26に、1975年にはロードペーサーやコスモAPにも搭載された。最高出力は135ps/6000rpm、最大トルクは19㎏・m/4000rpmを発揮。以後マツダロータリーの主力になる。
20B-REW:13Bを3ローター化したもの。654cc×3で総排気量は1962cc。ロータリー史上過去最大のエンジンである。1990年4月に登場したユーノスコスモに搭載。シーケンシャルツインターボを備え、最高出力はなんと280ps/6500rpm、最大トルクは41㎏・m/3000rpmを発揮。優雅なラグジュアリースペシャリティカーとして異彩を放った。ただ、軽量小型なロータリーならではの特質を生かすには2ローターが相応しいことを改めて学んだと言う。
R26B:1991年のル・マンで見事、総合優勝を飾った787B。初の4ローターを搭載した767投入以来4年目の快挙だった。エンジンは当初13J改と呼ばれ、最高出力も550ps程度だったが、1990年に26Bと改称され700psを標榜していた。13B×2の4ローターで総排気量は2616cc。やれること全ての技術的なトライを折り込んだある種至高のロータリーエンジンである。管長の長い吸気系にはトロンボーン方式の可変吸気システムが採用されている。
13A:1969年10月登場したルーチェロータリークーペのみに搭載。ローターハウジングの幅は10Aと共通だが、偏心量を大きく(他は15R。13Aは17.5R)し、排気量を655cc×2の1310ccに拡大した。最高出力は126ps/6000rpm、最大トルクは17.5㎏・m/3500rpmを発揮。ロータリー史上一番低いピーク発生回転数が印象深い。
16X:レネシスの次を担う新世代。ローターハウジングの幅は70~72mm、総排気量は1552~1596ccと予測する。

長年の熟成を重ね、やがてル・マン優勝を経験。そして革新の時代を迎える。

 NSUのKKM400型エンジンは、水冷トロコイドハウジングと油冷ローターを備えていた。熱膨張によるブロック歪みへの対応など苦心の跡が伺えるわけだ。マツダは1963年4月、山本健一部長を筆頭に47名の技術者から成る研究部を設置。試作1号機こそシングルローターであったが、量産へ向けた研究開発は早くからマルチ化が進められ、既に1960年代前半には2~4ローターまでの試作エンジンを完成させていた。市販化を目指す2ローターはまず399cc×2のL8A型エンジンをプロトタイプのL402Aに搭載し走行実験を開始する。1964年12月には491cc×2の3820型へ進化。これが量産試作のL10A型へとつながった。60台のコスモスポーツが試作され、国内で述べ60万kmに及ぶテストランを実施。多くのデータを基に熟成を重ね1967年5月、世界初の量産へこぎ着けたのだ。ちなみにL10Aはそのままコスモスポーツの形式番号となり、エンジンは10Aと呼ばれた。

 その後ローターの偏心量を大きく(ロングストローク化)した655cc×2の13Aを投入。さらに1970年代には10Aに対してローターハウジング幅を拡大(ボアアップ化)した573cc×2の12Aを追加した。そしてハウジング幅をさらに拡幅した654cc×2の13Bを投入している。この4タイプがマツダロータリーの基本となっているのだ。ちなみにユーノスコスモに搭載された20B-REW型エンジンは13Bを3ローター化したものだ。一方モータースポーツの世界では1991年ル・マンの栄光に輝いた787Bが有名。搭載エンジ ンは直列4ローター。2ローターの13Bを二機合わせたレース専用であることからR26Bと呼ばれている。そして40年間培われてきたマツダの技術力は、やがて次世代の16Xへと受け継がれていくのである。

※2008年4月に発行されたMotor Fan illustrated Vol.19「ロータリー・エンジン 基礎知識とその未来」より

次回は、RX-8を2020年春にあらためて試乗した世良耕太さんのレポート「マツダRX-8 マツダの3世代分の進化を感じつつもロータリー・スポーツの楽しさを満喫」をお送りします。お楽しみに。

なぜマツダはロータリーにこだわるのか? ロータリーエンジンの原理ロータリーエンジンの可能性①

マツダがこだわり続けるロータリー・エンジン(RE)。2020年現在、搭載モデルはないが、近い将来登場するレンジエクステンダ...

あわせて読みたい

ロータリーエンジンの幾何学 ロータリーエンジンの可能性②

ロータリーエンジンは線形運動を回転運動に変換するレシプロエンジンと異なり、すべからく幾何学が関与している。ここではロ...

あわせて読みたい

初代マツダ・サバンナRX-7のパッケージング RX-7誕生に至るまでの試行錯誤 ロータリーエンジンの可能性③

真っ暗なステージの上にレーザー光線が交錯し、高まるドラムの音の中、ドライアイスの煙の中にスポットライトを浴びてRX-7が...

あわせて読みたい

ロータリーエンジンの特徴的構成部品 ロータリーエンジンの可能性④

ロータリーエンジンの部品構成はレシプロエンジンのそれとは大きく異なる。 ここでマツダ13B-RENESISを例に、その特徴的な構...

あわせて読みたい

仮想敵ポルシェに勝つために FC3S(2代目マツダ・サバンナRX7)のパッケージング:ロータリーエンジンの可能性⑤

ロータリーを生かすためのパッケージングとはどうあるべきか。 元マツダのエンジニアでRX-7(SA/FC)のプロダクト・プランナ...

あわせて読みたい

マツダRX-01からRX-8へ テーマは「低ヨー慣性モーメント」ロータリーエンジンの可能性⑥

レシプロエンジンでは実現できないパッケージング。 それがロータリーエンジン(RE)搭載モデルの大前提である。 実験室的...

あわせて読みたい

Let's block ads! (Why?)



"エンジン" - Google ニュース
April 23, 2020 at 05:04AM
https://ift.tt/3axibp3

マツダ・ロータリーエンジンの系譜と系統 ロータリーエンジンの可能性⑦ - MotorFan[モーターファン]
"エンジン" - Google ニュース
https://ift.tt/2rmJ7HA
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update
Share:

0 Comments:

Post a Comment