Wednesday, April 22, 2020

【くるま問答】フェラーリ製エンジンがマセラティに載っているワケ。じゃあV6ディーゼルは? - Webモーターマガジン - motormagazine.co.jp

フェラーリ製のエンジンがマセラティに搭載されていることは、よく知られていることだ。しかし、創業当初からフェラーリ製エンジンを搭載していたわけではない。まずはその歴史から見てみよう。

2000年代に入ってフェラーリ製エンジンを搭載

1914年、優秀なエンジニアでありメカニックでもあったマセラティ兄弟がイタリアのボローニャでマセラティを設立。アルフィエーリ、エルネスト、エットーレの兄弟は、創業したばかりの自動車メーカーが名声を高めるため、当時の他社と同様にレースに参戦していた。

ところが、兄弟の全員が自動車ビジネスに熱心だったわけではなかったようだ。兄弟のひとりマリオ・マセラティはエンジニアリングに興味がなく、アーティストとして優れた才能を持っていたという。そこでエンブレムデザインをマリオが担当し、現在のエンブレムの原型を創り出した。このエンブレムは、ボローニャ・マッジョーレ広場のネプチューン像から着想を得たといい、ネプチューンが手にしているトライデントは勇気と力の象徴だという。赤と青のカラーは当時のボローニャ市の市旗にちなんでいる。

1920年代には数々のレースで活躍し、すでにフェラーリの創業者であるエンツォ・フェラーリとはライバル関係だった。レースだけでなく、クルマの製造販売も軌道に乗り、イタリアを代表するスポーツカーメーカーとしての地位を固めつつあった。

しかし、1970年代に入ると時代の波が押し寄せた。マセラティは1960年代からフランスのシトロエンをパートナーとして選び、フランス系自動車メーカーの企業文化の影響を受け、社内での構造改革も進んでいた。ところがシトロエンは、アルゼンチン出身の起業家アレハンドロ・デ・トマソ率いるイタリア国営会社にマセラティを売却してしまう。

フェラーリ製エンジンのマセラティは見納め?

現在につながる大変革が起こったのが1993年だった。フィアットグループによる買収が始まったからだ。このときフィアットは、往年のライバルであるフェラーリのルカ・ディ・モンテゼーモロによって率いられていた。フィアットによるマセラティの買収は1999年に終わり、ついにフィアット傘下、そしてフェラーリとグループ会社になった。

フェラーリ製エンジンの搭載はこの提携によるもので、より生産効率を高めるためにV8エンジンをマセラティに供給しているわけだ。ちなみにフェラーリは、8気筒より大きなエンジンをマセラティに供給していない。もっとも、マセラティ側も12気筒を載せるようなシャシを開発することはなかった。

またこのV8エンジンは、フェラーリ用と同じものではない。エンジンブロックを含めた基本構造は同じだがマセラティ用にチューニングされたものを搭載している。さらに最近のV8エンジンは、独自のエンジン開発部門であるマセラティ・パワートレーンで設計されたもので、イタリア・マラネロにあるフェラーリのファクトリーで生産されている。

画像: フェラーリ製のエンジンは、2001年発表のスパイダー、2002年のクーペ、そして2003年のクワトロポルテ(写真)へと採用されていった。

フェラーリ製のエンジンは、2001年発表のスパイダー、2002年のクーペ、そして2003年のクワトロポルテ(写真)へと採用されていった。

これでV8ガソリンエンジンが、基本的にフェラーリ製と同様というのはわかったはずだ。だが、現在の欧州市場で拡販することを考えるとディーゼルエンジンの搭載は必須。スポーツカーメーカーのイメージが強いマセラティブランドも例外ではない。そこで、新型ギブリからV6ディーゼルを用意した。とはいえフィアットにV6ディーゼルはないし、マセラティやフェラーリに最新ディーゼルを開発するノウハウはない。

そこはさすが、自動車産業の層が厚い欧州だ。シャシやエンジンを専門に開発するメーカーがいくつも存在し、その中のひとつ、北イタリアで乗用車向けディーゼルを製造するVM社が浮上。フィアット・パワートレイン・テクノロジー社とVM社のコラボレーションによって、3L V6ディーゼルターボが開発されたわけだ。

画像: 現在のマセラティ ギブリに採用されている3L V6ディーゼルターボ。275ps/600Nmを発生する。

現在のマセラティ ギブリに採用されている3L V6ディーゼルターボ。275ps/600Nmを発生する。

これでフェラーリ製V8ガソリンエンジンとV6ディーゼルを搭載する経緯がわかっただろう。ところが、ここにきて困ったことも発生した。ご存じのように現在フィアットはクライスラーと合併してFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)になっているが、このなかにフェラーリは属していない。フェラーリは2016年にFCAグループから分離され、独立しているからだ。

困ったのはマセラティ。フェラーリからV8エンジンを調達できない危機が迫っているのだ。フェラーリも「我々に契約があり、次回終了時に更新されない」と正式に発表。現在の契約は2022年ころに終了するというから、これ以降のマセラティモデルにフェラーリ製エンジンが搭載されない可能性がある。

しかし、マセラティは2019年末に自社開発した新エンジンを搭載する、新型ミッドシップスポーツカーのテストを発表。また、マセラティ初のEV開発もアナウンスし、公開された動画に「MMXXI」(ローマ数字の2021を意味する)という文字が現れる。2021年に次期型のグラントゥーリズモとグランカブリオとしてEVが登場するとウワサされている。(文:丸山誠)

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April 21, 2020 at 01:11PM
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