Wednesday, March 31, 2021

ディーゼルはスポーティか、セクシーか? アウディ最新のTDIエンジンを新型『Q5』&『A4』で試す - レスポンス

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アウディ Q5 40 TDI クワトロに試乗

アウディ Q5 40 TDI クワトロアウディ Q5 40 TDI クワトロ
SUVを含めて欧州車もボディ・バリエーションが豊富になった今、「スポーティ」な乗り味も百花繚乱。先に報告した『RS6アバント』に続き、アウディのスポーツモデル・ラインナップ試乗会で試乗した2台目は、「クワンタムグレー」と呼ばれるSライン専用の淡いグレー外装をまとった新型『Q5』の「40 TDI クワトロ」仕様だった。

この3月より発売されたフェイスリフト版は、ワイドになった八角形のシングルフレームグリルと、台形のサイドインテークを採用。LEDヘッドランプも、従来の輪郭部分ではなく「まつ毛」だけが日中走行灯として光るため、フロントマスクの雰囲気はかなり変わった。前後フェンダー辺りで緩やかに弧を描く鋭いキャラクターラインはそのままに、ドア下のサイドシルガードやリアガーニッシュも見直され、足元のボリューム感も軽くなった。

アウディ Q5 40 TDI クワトロアウディ Q5 40 TDI クワトロ
ちなみにグレード構成もアウディの他モデルに足並を合わせ、グリッド状のグリルにマットアルミの垂線が入る「advanced」(アドバンスト)に対し、Sラインはハニカムメッシュとなるスポーティ・トリムという位置づけだ。これまで新築マンションの完成予想イラストに好んで描かれていたような、水平基調と重厚感を強調した前期型Q5の外観とはひと味違って、かなりすっきりした印象だ。

アーティフィシャルレザー、つまりヴィーガンフリーのシートトリムと内装で、目につくのは10.1インチに拡大されたセンタースクリーンだ。「Hey Audi」と呼びかけるだけで音声入力が始まり、目的地入力やエアコンの温度設定が口頭でできる最新のインフォテインメントシステムMIB3を初採用している。他にもフォルクスワーゲングループとして装着が進むeSIMによるネットワーク接続環境も、目新しいところだ。

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ダッシュボード上半分が、『A6』のようなオーバーハングではなく、なだからにフロントのアコースティックガラスに繋がる意匠は、エアコン吹出口やアルミの加飾パネルがSラインであることを主張するとはいえ、全体の印象は『A4』に近い。逆にいえば、おもに街中や高速道路といった都会的なシチュエーションで乗るSUVとして、構えさせるところがない。

アウディ・ディーゼルには「セクシーさ」が足りない?

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パワーユニットの40 TDI クワトロは、2リットルの直4ディーゼルにベルト駆動式オルタネータースターター(BAS)と12Vリチウムイオンバッテリーを組み合わせたMHEVのディーゼル。7速SトロニックトランスミッションとAWDクラッチ付クワトロシステムを介して、4輪を駆動する。走行中はほとんど、システムが4WD不要と判断すれば、AWDクラッチが後輪への駆動力伝達を切り離して前輪のトルク配分のみ、つまりFF走行する。AWDはバックアッパー的に、路面や天候条件の厳しい時だけ介入させるという方向性だ。

加えて今回、短い区間ながらバイパスや高速道路で、エンジンを完全停止するコースティングに入る局面も確認できた。元より前席の両サイドはアコースティックガラスのため静粛性が高く、温まったディーゼルエンジンの休止/作動の境目は感じにくく、最小限の駆動力だけとり出して、交通の流れがいいほど燃費に効くという実感は悪くない。

しかしVW&アウディの2リットルディーゼル全般にいえることだが、MHEVの下支えはあるし仕事ぶりに不満はなくても、踏み込んだ時のトルクのレスポンスや回転フィール、キレといった点で、セクシーさに欠ける。Q5に積まれていた40 TDIは、エキゾースト音は悪くないが、204ps・400Nmという数値に対して1.9トン少々の巨躯がワインディングではやや緩慢に感じられる。

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ただし重い分、接地感や乗り心地のよさは伝わってくるし、曲がり始めてから適度なストロークと張りを感じられるフロントサスやノーズの感触、軽過ぎず重過ぎずのステアリングフィールは、抑えが効いていてむしろ上々だ。だが重心の高さゆえ、ワインディングではつねに肩回りから転がされ、足だけでなく骨盤でも踏んばらざるを得ない。裏を返せば、車内はそれだけ上半身にゆとりのある空間ともいえる。

とくに後席の乗り心地は突き上げが時に伝わってくるが、手元も足下も広々と快適で、高速巡航のような場面では乗員全員がリラックスできる。つまりスプリントやテンポランより、ジョグ志向の甘やかなスポーティさといえる。

実際、現行アウディの提案するスポーティさのニュートラル位置を確かめさせてくれたのが、この日の最後に乗った『A4セダン』の「35 TDI アドバンスト」仕様だった。

1割抑えた「35 TDI」のA4

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このクリーンディーゼル「35 TDI」は今年からラインアップされたばかりで、同じ直4・2リットルの40 TDIとの違いは、アルミニウムのクランクケースと鍛造ピストン採用で約20kg軽量化され、圧縮比が16.0とやや高く、出力・トルクは163ps・380Nmと1割弱ほど抑えた仕様であること。もちろんBASと12VリチウムイオンバッテリーによるMHEVが組み合わされているが、エンジンの常用トルク発生域が1500~2750rpmに早められている。

ブラックのパーシャルレザーシートを含むラグジュアリーパッケージを用いた内装で、シートヒーターやステアリングヒーター、サラウンドビューカメラ含むパークアシストパッケージや、フロントのアコースティックガラスなど、76万円相当がオプションのせだったが、それでも車両価格538万円と合わせて614万円の仕様。Dセグメントのドイツ製サルーンとして、まずまずの価格設定といえる。

アウディ Q5 40 TDI クワトロアウディ Q5 40 TDI クワトロ
パーキングを出る時、徐行で路面ギャップを越えた時、フロントサスが固めの上下動を伝えてきた。エントリーグレード相当のFWDモデルとはいえ、A4はクワトロSラインまですべて減衰力固定のスポーツサスペンションが基本仕様。各仕様ごと、車軸荷重ごとに、まずスプリングレートで違いを生み出しているようだ。

ちなみに各ダンパー内のオイル流入を電子制御で減衰力を変えるダンピングコントロール付スポーツサスペンションはクワトロモデル専用の受注オプションで、4輪を対角線上に油圧回路で繋いだDRC(ダイナミックライドコントロール)付きスポーツサスペンションは『S4』や『RS4』に限られる。

2リットルディーゼルは格好のアウディ入門モデル

アウディ A4 35 TDI アドバンストアウディ A4 35 TDI アドバンスト
ディーゼルエンジンがガソリンエンジンに比べて重い分、足まわりも固めざるを得ないのは至極当然の話だが、明確に固いと感じたのは、この微低速域だけだった。走り出してしまえば、足まわりのロール量は少なめだが、転舵力は軽くしっとりしたステアリングフィールで、トルクは力強い一方で静粛性は高いという、今どきのドイツ製サルーンの美点が、滋味深く、しかし明快に伝わってくる。

キレ味という点では、余裕で1500kg台前半に収まるほどの、ドイツ車離れした軽さを実現したガソリンのA4、とくに「35 TFSI」モデルには一歩譲る。それでも重厚さや落ち着きといった、ドイツ車に期待されるであろう特長という観点では、車重1580kgでディーゼルのこちらが上かも、と思わされる。長距離行の乗り方が多いのであれば、燃費だけでなくランでいえばペース走の感覚がステアリングを握って楽しめるという意味でも、迷わず35 TDIに軍配が上がるだろう。

今やディーゼルは、低中速域でのトルクが扱い易いほどスポーティと感じられるし、この傾向をMHEVは巧みに補う。2リットルクリーンディーゼルのバリエーションを増やしつつあるアウディは、ドイツ車らしい安全目線での動的クオリティを知るのに、格好の入門モデルを強化してきたといえる。

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南陽一浩|モータージャーナリスト
1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

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