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ビル・フアン氏の投資会社、アルケゴス・キャピタル・マネジメントに関連する200億ドル(約2兆2000億円)のポジションが強制的に清算されたことで、同社が密かに投資先企業の持ち分を積み上げるのに利用していたデリバティブ(金融派生商品)に注目が集まった。
同社の取引について知る関係者によると、アルケゴスが利用していたレバレッジの多くは野村ホールディングスやクレディ・スイス・グループなどの銀行が、スワップや「差金決済取引(CFD)」を通じて提供していた。この取引ではアルケゴスが実際に原資産を保有することはない。
米国の上場企業の株式を5%以上保有する投資家は通常なら、持ち分を開示する必要がある。しかしアルケゴスが利用していたとみられるデリバティブ(金融派生商品)を通じてポジションが構築された場合はそうではない。取引所外で取引されるこの商品を使って、フアン氏のような運用者らは開示することなく上場企業の持ち分を積み上げることができる。
ゴールドマン・サックス・グループやモルガン・スタンレーなどの銀行が、アルケゴスがレバレッジを使って積み上げた巨額の投資を強制的に売り、アルケゴスの転落は世界に影響を及ぼした。百度(バイドゥ)やバイアコムCBSなどの株価は大きく変動し、野村ホールディングスとクレディ・スイス・グループは巨額の損害を被る可能性を明らかにした。
影響を大きくしたのは借入金を使った賭けだ。レバレッジを効かせた大規模な賭けが外れるとマージンコール(追加証拠金の要求)がかかり、ヘッジファンドなどの投資家は損失をカバーするための追加担保として現金か証券を差し入れなければならない。アルケゴスが差し入れを求められた額は恐らく、ポジション全体に比べれば小さなものだっただろう。
しかし担保が差し出せなかったため強制的にポジションが清算されることになり、影響が広がった。ヘッジファンドが資本市場で演じる役割があらためて浮き彫りになった。リテール投資家の熱狂がゲームストップ株を押し上げた際は同銘柄を空売りしていたヘッジファンドが大打撃を受け、米証券取引委員会(SEC)や政治家の監視の目を引き付けた。
今回は、1つの会社がデリバティブを利用して秘密裏に大規模なポジションを構築できたという事実が、ヘッジファンドには市場を不安定化させる力があるという批判を再燃させるかもしれない。
エクイティースワップとCFDは持ち高を開示しないで済むことに加え税制上の有利さから、ヘッジファンドの間で人気が高まってきた。銀行も実際に証券を売買する場合ほど多くの資本を割り当てることなく大きな利益が得られるこの取引を好む。
フアン氏の取引の多くはまだ不明だが、市場のポジションから見て同氏の資産は50億-100億ドル程度とみられており、ポジションの総額は500億ドルを超えている可能性がある。フアン氏にコメントを求めたが応答はない。
原題:
Billions in Secretive Derivatives at Center of Archegos Blowup(抜粋)
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