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アルセロール・ミタルの製鉄所
世界的な製鉄大手のアルセロール・ミタル(ArcelorMittal)とCO2回収技術のマーケットリーダーである三菱重工エンジニアリング株式会社(MHIENG、社長:寺沢 賢二、本社:横浜市西区)、世界資源大手の鉱業会社であるBHP、Mitsubishi Development Pty Ltd(MDP)の4社は、アルセロール・ミタルの製鉄所におけるMHIENGのCO2回収技術の適用に関する協業契約を締結しました。本件は複数年の実証試験を共同で実施の上、商用化に向け商用機の概念設計も同時に行われます。
この実証試験は、アルセロール・ミタルがベルギーのゲントと北米に保有する製鉄所にて行われ、CO2削減が困難なHard-to-Abate分野といわれる製鉄業界におけるCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)技術を促進するべく、各社の専門知識を結集するものです。製鉄業界は、世界の温室効果ガス(GHG)排出量の約7~9%を占めると推定されており、CCUSは今後数十年にわたって世界中の鉄鋼生産の大部分を占めると予想される、既存高炉のCO2排出量を削減するための重要な技術となる可能性があります。IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)は、2050年までに鉄鋼一次生産の53%以上にCCUS技術を適用する必要があると推定しており、ネットゼロシナリオにおいては年間7億トンのCO2に相当します。
現時点で、高炉向けに稼働しているフルスケールのCCUS設備は無く、世界的にも小規模のCO2回収や利活用の実証試験が進行中または計画段階にあるのみです。一方、アルセロール・ミタルは、今年後半に高炉から排出される高濃度のCO2を回収し、エタノールに変換する大規模実証プラントであるSteelanolプロジェクトを開始します。
本件は既存製鉄所へのCO2回収技術適用の検証を目的として、アルセロール・ミタルがベルギーのゲントに有する年間粗鋼生産量500万トン規模の製鉄所に加え、北米での実証試験も計画しており、MHIENGはCO2回収技術の提供と設計検証によるサポートを実施する予定です。BHPとMDPは、アルセロール・ミタルの欧州事業に高品質の鉄鋼原料を供給する主要サプライヤーとして、複数年にわたり続く見込みの本実証試験に資金を提供します。
ゲントでの試験は2段階に分けられ、第1段階では、MHIENGが提供する小型CO2回収装置を用いて1日あたり約300 kgのCO2を高炉ガスから分離・回収する計画ですが、高炉ガス成分への対応が技術的な課題となります。第2段階では、コークスガス、高炉ガス、天然ガスを含む混合ガスを熱源として燃焼させる圧延工程(再加熱炉)において、排ガスからのCO2分離・回収に関する試験を行う予定です。
また、アルセロール・ミタルが北米に有する直接還元製鉄(DRI)設備の1つに小型CO2回収装置を移設し、MHIENGのCO2回収技術適用に関する試験を行うことも計画されています。
アルセロール・ミタルの最高経営責任者であるManfred Van Vlierbergheは、以下のように述べています。
「製鉄業界の脱炭素化は、私たちだけでは解決できない大きな課題です。業界全体のパートナーシップとのコラボレーションを通じて、2030年までに欧州で35%、世界で30%のCO2排出量を削減するという当社の気候変動対策目標を達成します。また、エネルギー効率の継続的改善と並行して、『スマートカーボン』と『DRIの革新』という2つの脱炭素化への施策を遂行しています。どちらの施策も、製鉄業界のカーボンニュートラルを実現するための過程に貢献します。スマートカーボンにおいては、鉄鋼生産過程で排出されるCO2の回収と、再利用(CCU)または貯留(CCS)に必要な技術との融合が可能です。この実現に向け、BHP、MDP、MHIENGと協力して、アルセロール・ミタルでこのような先駆的なCO2回収パイロットプロジェクトに取り組んでいることを誇りに思います」。
CO2回収に要するコストはCCUSバリューチェーンでも最大であり、総コストの約3分の2を占め、エネルギーを最も消費します。CO2回収技術の性能、コスト、リスク、持続可能性についての知見を深めることは、製鉄業界の脱炭素化の取り組みにおけるCO2回収技術の役割を位置付けるために重要な要素となります。
BHPは製鉄産業の顧客が目指す脱炭素化の支援を戦略に掲げており、今回の提携は非常に重要なマイルストーンとなります。本件は、近年進めてきたPOSCO、China Baowu、JFEスチール、HBISグループ、TATA Steelとの提携に続くものであり、全てを合わせると報告されている世界の鉄鋼生産の17%以上を占めることとなります。
BHPのChief Commercial OfficerであるVandita Pantは、以下のように述べています。
「現在、製鉄業界のネットゼロへの確実な、あるいは唯一の解決策は存在しません。CCUSはこれらの解決策の促進をサポートすることのできる重要な技術の1つであるため、アルセロール・ミタル、MDP、MHIENGなどの業界リーダーと協力して、製鉄業界におけるCO2排出量の削減に役立つ実効性のあるソリューションをより迅速に実現したいと考えています。世界の発展にとって鉄鋼業界の脱炭素化は必要不可欠であり、ともに製鉄のGHG排出量を最小限にするために、高炉におけるCO2排出量の削減と鉄鋼生産のための新しい技術を開発するための支援に最善を尽くさなければなりません」。
MDP CEOの羽地 貞彦は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、引き続き業界として脱炭素化への積極的な役割を果たしていく考えを示しました。
「MDPは、技術革新を推進させ、業界のCO2排出量削減への足がかりとして、このCO2回収実証試験に協力する意義を感じています。また、このプロジェクトに参加することで、私たちは低・脱炭素技術の推進と、生活のクオリティを両立させながらCO2排出量を削減していくというコミットメントを示しています。」
MHIENGは、1990年から関西電力株式会社と共同で独自のCO2回収技術であるKM CDR Process(TM)の開発を進めており、2022年10月現在、世界で14基のプラントを納入し、さらに2基建設中です。MHIENGの代表取締役社長である寺沢 賢二は以下のように述べています。
「製鉄分野は主要なCO2排出源であり、CCUSにとってまだ新しい領域です。私たちが有するこれまでの実績に裏打ちされた確かな技術の適用により、製鉄業界における低炭素化に向けたCO2排出量削減に貢献し、市場規模を拡大していくことができます。私たちは革新的なソリューションプロバイダーとして、アルセロール・ミタル、BHP、MDPと協力し、2050年までにネットゼロを達成するための取り組みを加速させることを楽しみにしています」。
MHIENGの小型CO2回収装置
英国での調印式
ArcelorMittalについて
アルセロール・ミタルは、世界60ヵ国に拠点を置き、16ヵ国に一次製鉄設備を持つ世界有数の鉄鋼・鉱業会社です。2021年、アルセロール・ミタルの売上高は766億ドル、粗鋼生産量は6,910万トン、鉄鉱石生産量は5,090万トンに達しました。アルセロール・ミタルの目的は、人と地球に有益な、よりスマートな鉄鋼を生産することです。エネルギー使用量の少ない革新的なプロセスで作られた鉄は、炭素排出量が大幅に少なく、コストを削減できます。よりクリーンで強く、再利用可能な鉄。今世紀の社会変革を支える電気自動車ならびに再生可能エネルギーインフラ向けの鉄。私たちは、鉄を中核とし、独創的な人々と起業家文化を心に持ち、世界がその変化を起こすことを支援します。これが未来の鉄鋼会社になるために必要なことだと信じています。アルセロール・ミタルはニューヨーク(MT)、アムステルダム(MT)、パリ(MT)、ルクセンブルク(MT)の各証券取引所とバルセロナ、ビルバオ、マドリード、バレンシア(MTS)の各スペイン証券取引所に上場しています。
BHPについて
BHPは、オーストラリアと南北アメリカを中心に約8万人の従業員とコントラクターを擁する大手グローバル資源企業です。BHPの製品は世界中で販売されており、鉄鉱石、銅、ニッケル、冶金用石炭などの主要商品の生産量は世界トップクラスです。
気候変動に対するBHPのアプローチについては、以下URLをご覧ください。
www.bhp.com/climate
MDPについて
Mitsubishi Development Pty Ltdは、三菱商事の完全子会社であり、50年以上にわたり鉱物資源分野の事業開発を通じて産業界に貢献しています。
三菱重工グループについて
三菱重工グループは、エンジニアリングとものづくりのグローバルリーダーとして、1884年の創立以来、社会課題に真摯に向き合い、人々の暮らしを支えてきました。長い歴史の中で培われた高い技術力に最先端の知見を取り入れ、カーボンニュートラル社会の実現に向けたエナジートランジション、モビリティの電化・知能化、サイバー・セキュリティ分野の発展に取り組み、人々の豊かな暮らしを実現します。
詳しくは、三菱重工グループのウェブサイト(www.mhi.com/jp)、オンラインマガジンSPECTRA(spectra.mhi.com/jp)、YouTube(Discover MHI)、Twitter(@MHI_Group / @MHI_GroupJP)、LinkedIn(Mitsubishi Heavy Industries)をご覧ください。
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