Tuesday, March 17, 2020

【PCエンジン mini全タイトルレビュー!】「超兄貴」 - GAME Watch

 1992年発売の「超兄貴」は色んな意味で時代を先取りしたPCエンジン最大の問題作だ。“筋肉”を題材とした奇抜でシュールなデザインの数々、主人公のイダテンを“兄貴”と呼んでついてくるアドンとサムソンという2人のマッチョたち。ボディビルをもじったラスボス「ボ帝ビル」など世界観がとにかくぶっとんだシューティングゲームなのだ。

 このシュールで奇抜なビジュアルを見た人の中には、単なるバカゲーだと引いてしまう人もいると思う。だが引いてしまうのは簡単だが、本作にはもう1つ驚きの特徴がある。音楽を葉山宏治氏が担当しているのだが、この音楽がどれもこれもいい意味で“ヤバい”のだ。実際に当時、本作をリアルタイムでプレイしていた「アニキ」たちの大半が、本作のサウンドトラック「超兄貴 -兄貴のすべて-」を購入して、プレイしていない時でも“音”で世界観に浸っていた。リズミカルで聴き心地がよく、かと思えば一転して激しいロック調の曲もあり、メリハリがすさまじく、ちょっとプレイしなおした結果、もう1度サウンドトラックを聴きなおしたくなってしまった。

 そんな問題作をあえて収録したPCエンジン miniのチョイスには「よくわかってらっしゃる」と絶賛の嵐を送りたい。

マッチョとシュールが混ざるととても危険という事がよくわかる横スクロールシューティング、それが「超兄貴」
ステージ開始時には、ステージ内に登場するボスキャラクター一覧が表示される。背景の青い中に表示された巨大なボスを倒せばステージクリアとなる

シンプルで遊びやすい横スクロールシューティング

 本作はゲームとしては、オーソドックスな横スクロールシューティング。主人公は「イダテン」と「ベンテン」の2人のいずれかを選択してゲームをスタートする。2人の違いはメインショットの性能や溜め攻撃の違いなど。あとは男か女か、くらいだ。

 敵を倒すと出現するプロテインを取る事で自機のショットがパワーアップする。また、道中にはアドンとサムソンと呼ばれる2人の仲間が唐突に宙を浮いて待機しており、接触するとオプションとして共に戦いに参加するようになる。2人は無敵ではなく、壁に挟まれたり、一定のダメージを受けると、「アニキ……」と悲痛な声を上げて戦線から離脱するし、プロテインを取る事でパワーアップする事も可能だ。

 操作はオーソドックスで、カーソルで移動し、IIボタンでメインショット、Iボタンで範囲内の敵にダメージを与えるボムを発射。メインショットはターボパッドじゃなくても、押したままで連射となるほか、一定時間押してから離す事で溜め攻撃も行なえる。溜め攻撃はイダテンとオプションのアドン、サムソンは「メンズビーム」と呼ばれる極太のレーザーを発射する。ベンテンの場合のみ、前方の広範囲に弾を拡散する「スプラッシュビーム」を放出する。

 さらっと流したが気になるのは、やはり2体のオプション、アドンとサムソンだろう。2人の脳天にはメンズビームを発射するための穴が自然にあいているし、マッチョだし、そもそもオプションの分際で自機よりも先に力尽きたり、パワーアップアイテムのプロテインを取って強化もできるなど、ゲーム中の扱いはオプションであっても、全くオプションらしからぬ作りになっているのが面白いところ。クリア時のデモでも、生き残った方は堂々と主人公と肩を並べてポージングしながら飛んでいくビジュアルの存在感もすさまじい。

主人公のイダテンとアドン、サムソンは溜め攻撃としてメンズレーザーを発射する。ダメージも高く強力な攻撃だ
もう1人の主人公である、ベンテンは女性なので、スプラッシュビームを放出する。バランス的にはこちらの方が広範囲に攻撃できてうれしいかもしれないが、漢は黙ってメンズビーム3本発射が気持ちいい
オレンジ色の円筒の中央に青色の帯がかかったアイテムが本作で唯一のパワーアップアイテムにして筋肉の栄養源であるプロテイン
クリア時のデモ画像では、ポージングを決めて主人公とともに飛ぶアドンとサムソンが確認できる

 道中には実に独特の世界観の中で構築された、個性的なデザインの中ボスやステージボスが出現するので、これらを撃破して全5ステージを攻略していく。

 中でも個人的にはステージ3を推したい。というのも本ステージのボスは「戦闘列車」というキャラクターで、デザインの奇抜さは本作全体から見ると大した事はないのだが、ここでかかるBGM「ドイツ人ジャーマン」がもう本当に最高の1曲なので是非ここまでは頑張ってプレイしてゲームをプレイしながら聴いてみてほしい。

 音の話ついでに言うと、本作は爆発音が全体的にかなり派手めだ。道中の雑魚であってもいちいち派手な爆発音を立てて墜落していく。爆発音が派手でも、それに勝るとも劣らない印象を与えることができている本作のBGMはやっぱりタダモノではないと言える。

 なお、ステージ数が少ないのでは、という意見もあるかもしれないが、ほどよい難易度のため、クリアの敷居が低く、シューティングがあまり得意ではないという人でも、何度かトライすればクリアにこぎつけられる。

 さらにはPCエンジン miniには中断セーブ機能がある。ボス出現前などにセーブしておいて、相手の出方を見てから再度トライする事で事故率はかなり低下するはずだ。

ステージ1のボス紹介
ボス紹介の背景にいた青色のシルエットがステージ最後のボスとなる
サブ&マリンはステージ4の最後のボスだ。リーゼントの戦艦がサブで下の魚がマリン

 この独特の世界観は当時から賛否両論だったが、今回久しぶりに全ステージをプレイしてみて感じた事としては、やっぱりよくわからない。

 シリーズとして続編には「愛・超兄貴」もリリースされた。こちらは未プレイなので詳しい内容については不明だが、本作以上に個性的なタイトルに仕上がっていると聞いている。しかし残念ながらPCエンジン miniには収録されていない。

 一方で本作のサウンドトラック「超兄貴 -兄貴のすべて-」については未だに絶版になっておらず、普通に購入が可能だ。本作をプレイしてサントラにも興味を持った「アニキ」がいたら是非そちらの購入もおススメしたい。

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