Monday, March 16, 2020

【PCエンジン mini全タイトルレビュー!】「源平討魔伝」 - GAME Watch

 「源平討魔伝」は、ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)が1986年にリリースしたアーケード向けのアクションゲームだ。源氏と平氏の合戦をモチーフに、魔王となった源頼朝が平氏を滅ぼし、三途の川の安駄婆(あんだばあ)によって地獄より蘇った平景清(たいらのかげきよ)が、頼朝を討伐するために鎌倉を目指すというストーリーが展開していく。

ゲームスタート時はタイトル画面が左右に割れ、景清のビジュアルが姿を現す

 アーケードではあまり見られなかった純和風の画面構成や耳に残るサウンドと音声、そして画面の半分近くもある巨大なキャラクターが動くステージなどが目を惹き、当時アーケードゲームプレーヤーの心に強い印象を残したタイトルの一つである。学生時代の筆者もこの頃の放課後はゲームセンターで魔王頼朝の討伐に心を燃やし、ゴールとなる鎌倉までのルート開拓に勤しんだものだ。

天帝の命を受け景清を蘇らせた安駄婆。要所で景清(プレーヤー)に声をかける

 このPCエンジン版「源平討魔伝」が発売されたのは、その4年後の1990年のこと。アーケード版の稼働時期から約4年、PCエンジンの発売からも約3年が経過していたが、当初から定評のあったナムコのPCエンジンアーケード移植タイトルの1本に恥じない完成度を誇り、ファンを大いに喜ばせた。

 地獄から蘇った景清は、平氏が滅びた壇ノ浦のある「長門」(山口県下関市)から、複数のルートに存在する46(+1)ものステージを通り、頼朝が待ち構える「鎌倉」(神奈川県鎌倉市)までを旅していく。

2つの「地獄」のステージを経て、1192年の日本へと旅立っていく。この「長門」は最初の分岐点で、3カ所の鳥居がある

 ゲームのステージには、並み居る敵を攻撃とジャンプで退けながら進む「横モード」、大きく表示された景清が「弁慶」や「義経」などの強敵とのチャンバラを繰り広げる「BIGモード」、迷路のようなトップビューのステージを探索して出口の鳥居を探す「平面モード」の3つがあり、プレーヤーを退屈させない仕様だ。それぞれにはゴール地点となる鳥居があり、そこに入ることで次のステージへと行けるようになっている。横モードと平面モードには複数の鳥居が存在するところもあり、先のステージ構成によって難易度が大きく変わっていくので、何度もプレイして自分なりの攻略ルート開拓をすることも楽しみの一つであった。

横モードではさまざまな敵が景清の行く手を阻む。これは雷神との遭遇シーン
BIGモードには巨大な敵が待ち受ける。弁慶はしゃがんで泣き所(足)を攻撃しよう
ルートの分岐点的な意味合いの強いトップビューの平面モード。鳥居の行き先を見極めよう
ステージの鳥居を出ると、日本地図のマップへ。「京」と見えるのは「京都」で、後半の分岐点だ

 ステージのモードによってルールが大きく異なり、攻略法を知らないとあっという間にやられてしまう“初見殺し”なポイントもあるため、難易度が高いゲームという印象を持っている人も少なくないようだが、モードごとの基本ルールの把握と、攻略ルートの開拓ができれば、比較的簡単に頼朝のもとまでたどり着くことができるバランスとなっている。慣れてしまえば比較的長時間遊べるので、アーケードゲームとしては少々都合の悪い内容とも言えるが、プレーヤーにとっては嬉しいものだった。

平面モードはジャンプボタンを連打して高さや距離を伸ばすのが基本だ
ゲーム前半の山場となる「播磨」。手強い竜はダメージ覚悟で頭に乗って巻物を取り、衝撃波で倒そう
全国に6カ所あるボーナスステージ。お釈迦様が落とす珠は、剣の値(攻撃力)が上がる紫を優先的に取るといいい

 家庭用ゲームとして初めて発売されたファミコン版「源平討魔伝」はなんと、デジタルボードゲームというまったく別の内容となってしまったため、アーケード版の移植を期待していた筆者を落胆させたが、このPCエンジン版は画面構成が若干異なるものの、移植はほぼ完璧だったことに歓喜すると同時に、大容量のCD-ROM2ではなく、HuCARD(4Mビットを採用)1枚で完結していたことに大いに驚かされた。携帯型の「PCエンジンGT」を使えば、いつでもどこでも「源平討魔伝」がプレイできたという事実は、ちょっとしたカルチャーショックでもあった。

BIGモードの義経は2パターンが登場。手裏剣を飛ばすほうはしゃがんで斬り、笑うほうは迫ってくるときに上段斬りで身体の前半分を斬るのだ
ゲームクリアには「八咫鏡」、「八尺瓊勾玉」、「草薙剣」の「三種の神器」が必要だ。5カ所のステージに存在

 容量の都合でカットされたのは一部の音声のみであり、47ステージは全てアーケード版とほとんど変わらずに収録されている。横モードのジャンプ時はボタンを連打することで高く遠くへジャンプできるといった攻略法もそのまま通用するが、BIGモードに登場する「義経」や「弁慶」を簡単に倒す攻略法が通じなくなっているなど、いくつかの変更点も存在する。

開発者と思われる似顔絵アイコンとともに駄洒落が表示される「だじゃれの国」も健在。実は三種の神器がある重要なステージだったりする
BIGモードは画面のキャラクターが多いと画面がちらつくが、PCエンジンの限界に挑戦した結果だ

 また「源平討魔伝」といえば、クオリティの高いサウンドやゲームセンターに響き渡る合成音声が大きな魅力だったわけだが、このPCエンジン版も本体の音源のみで再生しているにも関わらず、かなりがんばっていた。何より迫力なのは音声で、前述の通り容量の関係でいくつか削除されているものの、「殺してしんぜよう」(義経)、「これで勝ったと思うなよ」(弁慶)、「ひゃっひゃっひゃ」(安駄婆)などといったキャラクターを象徴するセリフは健在で、“よくしゃべるゲーム(当時比)”の肩書きはこのPCエンジン版でも十分通用すると言えるだろう。

 その後、プレイステーションの「ナムコミュージアムVOL.4」やWiiの「バーチャルコンソール」などでアーケード版が完全移植された本作であるが、このPCエンジン miniでは、「カンタンセーブ機能」を使えば、攻略ルートの開拓や練習もしやすくなるはず。ぜひ鎌倉までたどり着いて、景清の最期を見届けてほしい。

宿敵頼朝は道中にも登場するが、もちろんここでは倒せない。決戦の地、鎌倉を目指そう
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