Wednesday, March 10, 2021

MFT250 「無限」が作ったXR250エンジンの超希少・市販ダートトラッカーを覚えているか - モーサイ

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一般には、ホンダF1エンジンやスーパーGTマシンの開発、あるいはホンダ4輪車のチューニングパーツメーカーとして知られる「無限」。
だが、「無限」が手掛けてきたのは4輪だけではない。バイクの世界でも、ホンダ車をベースとしたレーシングマシンやコンプリートモデルを複数開発している。
当記事では、その内の貴重な1台……2001年に量産市販が行われた「MFT250」について当時の試乗記を交えながら紹介していく。


無限MFT250登場前夜

ダートトラックが盛り上がった時代

1990年代初頭をピークに、徐々に沈静化していった「レーサーレプリカブーム」。
レースマシンの性能・技術を公道モデルにフィードバックするその手法は非常に明確な半面、公道でその高性能が必要か否か、見直される時期が到来したということだったのだろうか。
そうした中、「レーサーレプリカブーム」に次ぐ流れとなったのが「ネイキッドブーム」。普通の乗りやすさ=常用性能と、カウルレスのスタンダードなバイクフォルムが意外なほどに受け入れられた。

またもうひとつ、1990年代のバイクムーブメントを語る上で欠かせないものがある。90年代後半からストリートで大ブームとなったヤマハ TW200(ブームを経て後にTW225も登場)のカスタムだ。
本来オフロードモデルとして登場したTW200だが、不整地走破性を高めるために採用された極太なリヤタイヤがデザインアイコンとなり、低めのシート高という取っ付きやすさもありカスタムベースとしてクローズアップされた。

TWカスタムは、ノーマルから極力装飾を廃して保安部品を簡素化し、タイヤと骨格を強調する手法だったが、この際に手本とされたのがアメリカが本場のダートトラックレーサーのフォルムだった。この機に1986年に発売されたダートトラックレプリカモデルのホンダ FTR250が注目され、2000年からはダートトラッカーイメージのストリートモデル・FTR(223cc)なども登場した。

また、ほぼ同時期には本場のダートトラック競技の普及を後押しする形で、国内何ヵ所かで専用コースが開設。
関東ではツインリンクもてぎで1997年にレースコース新設(2012年に営業終了)、埼玉の桶川スポーツランドでもショートコースが開設され(後に閉鎖)レースやスクールが人気を博すなど、「ダートラ人気」の火が付きつつあった。

ホンダXR250のエンジンを独自フレームに搭載するMFT250

そうした時代背景もあり(FTR250も生産終了となっていた)、2輪モトクロスやロードレースで独自の活動をしてきた無限が製作・販売したマシン──それが市販ダートトラックレーサー「MFT250」である。

2001年より市販が開始された無限 MFT250。写真は報道陣向け試乗会で撮影した車両で、プロトタイプと言える存在。最終市販版とは一部仕様が異なる。

コンプリート車のエンジンはホンダ XR250のOHC単気筒RFVCをベースとするが、ダートラマシンの特性に最適化した独自のクロモリフレーム、各種剛性&径サイズに対応し高い剛性を与えられたステアリングブリッジなどを採用。
他社製エンジン、あるいはより大排気量のエンジンも搭載可能とすべくフレームサイズに余裕を持たせるなど、多様な組み合わせに対応させたシャシーが大きな特徴だった。

ホンダ XR250のエンジンを搭載。燃料タンクは左右にコックがあり、プロトタイプではFRP製だったが、アルミタンクも開発された。
様々なエンジンを搭載可能とするため、エンジン周りにクリアランス=余力を持たせたフレーム。XR250系以外のエンジンを搭載する場合はエンジンマウントの製作が必要。
XR250のエンジンに合わせフレームはクロモリ製のオイルインタイプだが、ウェットサンプエンジンを搭載することも可能。

無限 MFT250試乗インプレッション

そんな無限製コンプリートマシンはどんなパフォーマンスを発揮したのか。八重洲出版『別冊モーターサイクリスト』2001年9月号でレポートした当時の試乗記を以下に紹介しよう。

MFT250の大きな特徴「他排気量や他社製エンジン搭載も想定したフレーム」

主に250ccクラスで行われている日本とは対照的に、広大な敷地を有するアメリカ本国では650ccクラスが主流のダートトラックレース。4輪F1コンストラクターとしても名高い無限が製作、すでに予約受付も開始されているこのMFT250は、そんな本場のマシンをも強く意識した、いわば血統(決闘?)書付きの本格的トラックレーサーといえる存在だ。
鮮やかな蛍光オレンジとブラックのツートーンに塗り分けられた車体には大きく「Mugen Power」の文字が輝くが、気になるエンジン本体はホンダ XR250のドライサンプユニットだ。

「国内のダートトラックシーンではいまだ旧FTR250が健在だが、MFT250に搭載した最新型RFVCユニットはパワー、コントロール性ともに前車を上回るもの。さらに一般市販車と比べて大きく異なる点は、なんと言ってもダートトラック専用のフレーム設計であること。このマシンが各地のトラックで主役の座を奪うのもおそらく時間の問題だろう」とは、開発担当者のコメントである。

早速試乗してみると、まず感じたのは車体のスリムさと、予想以上の軽さだ。タンクからシートにかけての段差がほとんどないため、座った瞬間から違和感なくキュッとニーグリップすることができる。
スタートはセルフ式。K&N製の大きなエアフィルターと2in1のダウンEXシステムの効果により、同じエンジンながらもXR250より吸・排気音ともに元気がいい。FRP製のシングルシート内に「ゴワンッ」と振動する音は、まさにレーサーのそれである。

コースインしても印象は変わらない。107kgの軽量な車体から受ける軽快感に加え、トルク、レスポンスとも優れたMFT250は確かにパワフル。アクセルのツキがいいうえ、車体の滑り出しも敏感なので、滑り出してからのアクセルコントロールには少し慣れが必要かもしれない。しかし、車体が軽いので、コツさえつかんでしまえばコントロールは楽だ。
ブレーキも硬めのタッチで効きがよく、短いストロークで確実にマシンの向きを変えることも可能。そして、その状態から加速の姿勢に入っても、リヤサスがグッと踏ん張ってくれるのでトラクションをかけやすく、加速もクイックだ。カチッ、カチッと正確に変速できるショートタッチなシフトも操作しやすくていい。

トラックに持ち込んだ瞬間からこれほど気軽に、確実に走れるマシンは今までになかった。手持ちのマシンをモディファイして楽しむのもひとつの手だが、かかる手間や費用を考えても、走りだけに専念するならMFT250の方が絶対的に有利なはずだ。
そのうえ、エンジン自体は市販車の域を大きく突出しない性格なのもこのMFT250の特徴。ひとことで言うなら、ビギナーからエキスパートまでが親しめるマルチなマシンと言えるだろう。

だが、造りはさすが市販レーサー。ペースを上げて走れば走るほど、徐々に本来の持ち味が見えてくる。
アスファルト走行の場合、マシンを深くバンクさせている最中でも遠心力によって荷重はタイヤにかかる。つまり縦Gだ。しかし、コーナー進入時に遠心力が働くと同時にタイヤをスライドさせ、縦Gを横Gに変えて走るのがダートトラックでの走法。したがって、コーナリング中にマシンにかかる荷重を、縦方向だけでなく大きく横方向に受け止めながら走るのがダートトラッカーの特徴だ。
その走りを実現するためには、タイヤやサスの性能はもちろん、フレームの性格が大きく走りを左右することも忘れてはならない。

見るからに剛性の高そうなステアリングブリッジ。より太いフロントフォークを使用することも想定し、フォーククランプ部分にはあえて肉が残されている。
リヤサスペンションの取り付け位置はセッティングに応じて変更可能。好みに応じて社外品サスでもボルトオン装着できるよう考慮されている。溶接の美しいスイングアームはクロモリ製。
ハブは前後ともアルミ製の削り出し。リヤハブはノックオフ機構を備えたセンターロック式で、スプロケットとブレーキローターを左右付け替えることで簡単に反転できる。左コーナーばかりのダートトラックでは非常に重宝するアイテムだ。アクスルシャフトは中空のアルミ製。

本場アメリカのレーストラックでは、名の通ったフレームビルダーたちによるスペシャルフレームが多用され、使用するエンジンやライダーの体型、乗り方などによって様々なフレームが存在している。
しかし、実際にはそのどれもが、ホイールベース、地上高、エンジン搭載位置、キャスターともにおおよその基準値内にあると言われている。MFT250の場合も例外ではなく、各条件を追求した結果、自然とその基準値に近いサイズになったという。それだけに、MFT250は更なるハイスピードコースに持ち込んでもトップレベルの走りに対応してくれるはずだ。

今回は本場アメリカとはスケールの違う200mトラックでの試乗だった。
それも、プロレーシングライダーではなくアマチュアライダーが乗っての印象だ。したがって確かなことばかりは言えないが、素直な感想を述べると、この日の印象ではフレームが多少硬いようにも感じた(あくまでもショートコースでの印象だが……)。

しかし、それにもれっきとした理由があった。
なぜなら、このMFT250、コンプリートマシン(ステージIII・74万8000円)のほかにも、自分で好みのエンジンを選んでレーサーを造る人のための、主にフレーム、スイングアーム、ステアリングブリッジを中心とするキット(ステージIキット・49万8000円)や、すでにXR250のエンジンを所有しているオーナーを対象に、前述のステージIキットに加えエンジンマウントキット、ハーネスも追加したキット(ステージIIキット・54万8000円)も同時に発売。

したがって、好みによって国内のみならず海外メーカーのエンジンでもマウントの製作程度で自由に搭載が可能。エンジンの種類だけでなく排気量の選択にも自由度が得られるよう、わざとフレームにゆとりを持たせて設計してあるというから驚きだ。
さらには250cc以上のエンジンを搭載した場合の強度不足まで見込み、アルミ製のステアリングブリッジはボーリング加工することでさらに太いフロントフォークに換装することもできるよう、あえてフォーククランプ部分の肉厚を残してあるというほどだ。

そう聞くと、フレーム自体が多少硬く感じたことも不思議ではない。さらにパワーのあるエンジン、排気量の大きいエンジンを積んでハイスピードコースを走ったとしたら、それなりの強度は要求されるはずだ。
結論するとこのマシンは、250ccから400cc、いやもしかすると本場アメリカのような650ccエンジン搭載車までをも1台でまかなうことができ、あらゆるカテゴリーで未来のライダーを育てる夢の1台なのかもしれない。

4サイクル化が目覚ましい昨今では、国内だけを見ても高性能な4サイクルエンジンが続々と登場している。そう考えるだけでも、MFT250のデビューは待ち遠しいと言うほかない。できることならこのままの姿を保ちつつ、保安部品付き市販車も発売してくれれば面白いのになぁ……。

MFT250にはカスタマイズパーツも多数用意された

MFT250のカタログ。各種カラーリングのボディパーツ、ハイカム、ハイコンプピストン、クロスミッションなどのほか、レーシングスタンドまで用意されていた。
オプションパーツの一例。転倒時の破損やブーツによる傷を避けるためのカーボン製クランクケースガード。XR250にも装着可能だったとか。
開発ライダーのひとり、山口孝行選手の走り。当時もてぎダートトラックレースや全日本ダートトラック選手権で活躍した(2001年全日本ダートトラック選手権「全日本250」にMFTで参戦している)。

以上が2001年取材時の試乗レポートである。当時の「ダートラ熱」や、無限の気合が伝わってくると思うが……社製エンジン、各排気量を搭載可能とうたいつつ、ホンダの250ccを基準エンジンとしたこと。真面目な剛性アップと最適化を施したシャシーながら、ユーザーからは構造的には新規性に乏しく感じられたこと。半面、意外に高価なコンプリート価格だったことなど、MFT250の国内販売台数は10数台と言われ、広く普及したとは言い難い(販売期間も短かった)。
しかし、無限らしい硬派かつ真摯なトライとして記憶に残るマシンだったと言えよう。

まとめ●阪本一史 試乗レポート●植田輝臣(*) 写真●山内潤也(*)
*八重洲出版『別冊モーターサイクリスト』2001年9月号より

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1 comment:

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