Friday, June 16, 2023

理由は最新エンジンだけではない英国豪州の世界最長の定期路線を実現させたカンタス航空の奇策 20時間ノンストップで飛ぶには普通の機体ではダメ - PRESIDENT Online

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オーストラリアの航空最大手・カンタス航空が、2025年に世界最長の定期航空路線を開設する。シドニーと英ロンドンを結ぶ直行便で、20時間をノンストップで飛び続ける。このような超長距離フライトはなぜ可能になったのか。航空ジャーナリストの北島幸司さんは「最新機に搭載されたロールス・ロイス製の高性能エンジンのおかげだが、理由はそれだけではない」という――。

パース―ロンドン線を飛ぶボーイング787-9

写真提供=カンタス航空

パース―ロンドン便を飛ぶボーイング787-9型機。シドニー・ロンドン間の「世界最長路線」開設にいたる検証路線として活用されている。

1万7000km超をノンストップで飛び続ける直行便

オーストラリアの航空最大手・カンタス航空は、2025年末にシドニー・ロンドン、シドニー・ニューヨークを直行便で結ぶ、定期路線を開設する。

2路線のうち、より長いシドニー・ロンドン間は1万7000kmを超える世界最長の定期航空路線で、約20時間の長距離フライトになる。現在同区間は、飛行機の性能的に燃料の補給が必要なことからシンガポールを経由しているが、直行便によって約4時間短縮される。なお、現時点で最長路線はシンガポール航空のシンガポール・ニューヨーク間(フライトは約19時間)である。

約20時間の長距離フライトはなぜ可能になったのか。その理由は航空機の性能、とりわけ高性能エンジンを積んだ新機材を導入したことが大きい。

現行機に比べ、推力26%、燃費25%向上した最新エンジン

世界最長路線には、双発エンジン機の「エアバスA350-1000」が新しく採用された。2025年後半から12機の導入を予定している。

これはエアバス製のワイドボディ(双通路機)で、A350型の中で胴体が最も長い長胴型だ。全長73.79m、最大座席数440席、航続距離は1万6100kmに達する。この機体の特徴は、より推力の高いエンジン「トレントXWB-97」(ロールス・ロイス製)を採用したことである。これが決め手になったと言っていい。

現在のシドニー・ロンドン便は2007年に運航開始した。オール2階建てのエアバスA380-800型機(エンジンはロールス・ロイス製・トレント900)を使用し、シンガポール経由で運航している。現行機と旧式エンジンの性能を比べてみよう。

トレントXWB-97の推力は9万7000ポンドでトレント900の推力比で26%アップしている。ロールス・ロイスの資料によると、新しい高温タービン技術やより大きなエンジンコア、ファンの空力特性の組み合わせで推力を増加させた。機体の空力改善やエンジンにより、従来機に比べて燃費は25%削減できた。

なお、シドニー・ロンドン間の「世界最長路線」開設にいたる検証路線として活用されているパース・ロンドン便(パースは豪州南西の都市、1万4498km、所要時間18時間)では、ボーイング787-9型機(エンジンはロールス・ロイス製のトレント1000)が使われている。こちらと比較しても推力は30%向上している。

ロールス・ロイス「Delivering value through innovation」より

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