Monday, March 22, 2021

「狙い打ち時短命令は違憲・違法」 グローバルダイニングが“104円”の損害賠償求めて東京都を提訴した理由 - ITmedia

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 国内外で「モンスーンカフェ」や「権八」など飲食店41店舗を経営するグローバルダイニングは3月22日、東京都の営業時間短縮命令は違法として、都を相手取り損害賠償を求めて提訴した。訴訟の目的は「お金の問題ではない」との理由から、損害賠償請求額は104円としている。

 グローバルダイニングの長谷川耕造社長と弁護団は提訴後に記者会見し、東京都がグローバルダイニングを2つの意味で「狙い打ち」したことに対して違法性を訴えた。

 1つは都内で2000店舗以上が営業時間短縮の要請に協力しなかったにもかかわらず、命令を出した店舗のほとんどがグローバルダイニングの店舗であること。もう1つは、グローバルダイニングが行政指導に応じない考えなどをネット上で発信したことを理由に、東京都が命令を出したことだ。

 長谷川社長は「営業の自由と表現の自由、それに法の下の平等に違反している」と憤る。提訴に至ったグローバルダイニングの主張を聞いた。

グローバルダイニングの長谷川耕造社長と弁護団

初の「命令」 26店舗がグローバルダイニング

 グローバルダイニングの長谷川社長と弁護団は3月22日、東京都を相手取り損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に起こし、会見に応じた。提訴に至った直接の原因は、東京都が新型コロナウイルス特別措置法(以下、コロナ特措法)に基づき、グローバルダイニングが経営する26店舗に対して、3月18日から21日まで営業を午後8時までとする命令を出したことだった。

 グローバルダイニングは、2度目の緊急事態宣言が2021年1月8日に出て以降、東京都の営業時間短縮要請に応じない姿勢をとっていた。「正当な理由」があるとして、東京都には弁明書を提出。自社のWebサイトやSNSなどで、社としての考えを表明するとともに、東京都に提出した書面なども公開していた。

グローバルダイニング公式Webサイト

 コロナ特措法の改正法は2月13日に施行され、営業時間短縮の要請に正当な理由なく応じないものに対し、命令を出すことが可能になった。命令に違反した場合は、行政罰として罰金が課される。都内で2000店舗以上が要請に応じずに、午後8時以降も営業を続けていた。

 3月15日、グローバルダイニングに、東京都から営業時間短縮命令の事前通知書が届いた。東京都が命令を出す理由は次のようなものだった。

 『対象施設は、20時以降も対象施設を使用して飲食店の営業を継続し、客の来店を促すことで、飲食につながる人の流れを増大させ、市中の感染リスクを高めている。加えて、緊急事態宣言に応じない旨を強く発信するなど、他の飲食店の20時以降の営業継続を誘発するおそれがある』

 つまり、グローバルダイニングが、要請に対する考えを表明して、いわば表現の自由を行使したことで、追随する飲食店が現れかねないというのが、命令の理由になっているのだ。この事前通知書を読んだとき、長谷川社長は「あぜんとした」という。

 そして3月18日、東京都からグローバルダイニングに対し、都内で営業する店舗のうち、26店舗に営業時間短縮の命令が出た。命令を受けて、緊急事態宣言が解除される21日までの4日間、午後8時までの時間短縮営業に切り替えた。ところが、長谷川社長はニュースを見て驚く。

 「発令された事業所が27カ所で、そのうち26カ所が当社ということで、憲法で保障されている表現の自由と法の下の平等に違反しているのではないかと(の思いが)、確信に変わりました。これは民主主義国家として看過できません」

要請に応じて会社の経営は困難

 飲食店は新型コロナの影響で、1回目の緊急事態宣言以降、大幅な売上減に苦しんでいる。グローバルダイニングは20年12月期の決算で、15億円の赤字を計上。「投資に使うわけでもないお金を13億円借りて、生き延びてきた状態」(長谷川社長)という。

 店舗数や規模も大きい同社にとっては、緊急事態宣言中、要請に応じた店舗に支払われていた1店舗あたり6万円の協力金は、ほぼ意味がない。長谷川社長は命令によって営業時間を短縮した4日間の損害は「4000万円から5000万円にのぼる可能性がある」と明かす。要請に応じていたら、会社の経営を維持できなかった可能性がある。これがグローバルダイニングが要請に応じなかった理由の1つだ。

 しかし東京都は、要請に応じることが会社の経営を困難にするというグローバルダイニングの主張を、「正当な理由」とは認めなかった。

 グローバルダイニングでは、訴状で他にも「正当な理由」を主張している。その1つが要請自体が行政指導であること。法令違反をしているから要請するわけではない。あくまで任意の対応を求めるものだ。弁護団は、「正当な理由なく行政指導に応じないことが命令の要件であるという設定自体が、法令の仕組みとして破綻している」と主張する。

 さらに、飲食店が主要な感染経路である明確な根拠もない中で、営業を一律に制限することを可能にするコロナ特措法は、営業の自由を侵害するもので憲法違反だという主張も展開する。弁護団の倉持麟太郎弁護士は、今回の訴訟は「コロナ禍で露呈された日本の民主主義の脆弱さを問うもの」と説明する。

 「コロナ禍が始まって、昨年2月と3月に行われた学校の一斉休校は、本当に権限が総理大臣にあったのでしょうか。また、緊急事態宣言が本当に必要なのかどうかも、事後的な検証がなされていません。特措法の改正については国会で実質的な審議もなされていません。原告は命令には従っていますが、司法の場で命令について争っていきたいと考えています」

グローバルダイニングの展開する飲食店(出所:グローバルダイニング公式Webサイト)

損害賠償請求額は「104円」

 今回の訴訟では、損害賠償請求額を104円としている。長谷川社長は「提訴したのはお金の問題ではなかったので、弁護団にお任せした」と話す。弁護団の説明によると、1店舗あたり1日1円の損害賠償を請求する計算で、26店舗の4日分として、104円を導き出したという。

 また、グローバルダイニングは、裁判に対する共感を広げようと、裁判費用の支援を呼びかけるクラウドファンディングを始めた。訴訟にかかる事務的費用や交通費に充てるほか、コロナ禍と緊急事態宣言によって日常が奪われた人々に還元するという。

 東京都による営業時間短縮命令は、3月19日までにグローバルダイニングの26店舗を含む32施設に対して出された。提訴されたことについて東京都は、「特措法の手続きを踏んで命令に至った。訴状を見ていないため、コメントは差し控えさせていただきたい」と話している。

 グローバルダイニングの提訴によって、コロナ禍での行政による制限をめぐる問題が、初めて法廷で争われることになる。

グローバルダイニングは、裁判に対する共感を広げようと、裁判費用の支援を呼びかけるクラウドファンディングを始めた(リリースより)

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