
F1マシンが2ストロークに!?
2014年から1.6リッターV型6気筒ガソリンターボ・エンジンを積んでいるF1は、2025年に新しいパワーユニットに切り替える予定だ。2020年1月にイギリス・バーミンガムで開催されたモータースポーツ関連のカンファレンスで、フォーミュラ1のテクニカルディレクターを務めるパット・シモンズ氏は、新しいパワーユニットの候補として「2ストローク対向ピストンエンジン」を検討していることを明らかにした。 この発言が世間に与えたインパクトがあまりに大きかったからなのか、その後、主に商業面でF1を管理するフォーミュラ1も、ルール面でF1を統括するFIA(国際自動車連盟)も、新しいパワーユニットに関しては固く口を閉ざしている。 シモンズ氏は先のカンファレンスで、「2ストローク対向ピストンエンジンはとても効率が高く環境にやさしい」と、発言したものだから、情報を耳にした人たちが騒いだのも当然だ。「F1に2ストローク?」「2ストロークが環境にやさしい?」と。 なぜなら、かつては排気量の小さな乗用車に採用例が多かった2ストローク・エンジンは環境に悪く、排ガス規制に対応できないから、消えていったのである。いわば、淘汰された、あるいは淘汰されつつある古い技術だ。それを“環境にやさしい”として復活させるとはどういうことだろうか?
2ストローク・エンジンのマルとバツ
現在、ガソリン・エンジンと呼んでいるエンジンのほとんどは、4ストローク・エンジンである。クランクシャフトが2回転(ピストンが上死点と下死点の間を2往復)する間に吸気~圧縮~燃焼・膨張~排気の4行程をおこない、ガソリンに含まれる化学エネルギーをいったん圧力に変換し、機械エネルギーに置き換える。 一方、2ストローク・エンジンは1回転(ピストン1往復)で1回燃焼する。ピストンが下死点付近に達したところで掃気(排気と吸気)をおこない、下死点から上死点に向かう上昇行程で圧縮。上死点から下死点に向かう下降行程で燃焼~膨張~排気をおこなう。 4ストローク・エンジンのような傘バルブを開閉して吸気と排気の出し入れをおこなうのではなく、ガソリンと空気が混ざった混合気はいったんクランクケースに取り込み、ピストンが下に降りると開く口(ポート)を使って燃焼室に送り込む仕組みだ。 2ストローク・エンジンは4ストローク・エンジンのように各行程をきっちりわけず、半分の行程で4つの役割を強引にこなすので、無理が生じる。吸気と排気の線引きがあいまいなのが一例で、排気と一緒に混合気(生ガス)が排出されてしまうし(独特の臭いの原因だ)、オイルも混入する。これらは構造的にも燃焼サイクル的にもいかんともしがたく、だから、厳しくなる一方の排ガス規制に対応できなくなって消えていった。 では、なぜ一時期2ストローク・エンジンがもてはやされたのか? というと、4ストローク・エンジンとおなじ排気量なら、原理的には2倍の出力を出せるからだ。出力とは、言い換えれば仕事量である。4ストローク・エンジンはクランクシャフト2回転(ピストン2往復)で1回燃焼し、仕事をする。一方、2ストローク・エンジンは1回転(ピストン1往復)で1回燃焼する。4ストローク・エンジンが1回休んでいる間も2ストローク・エンジンは仕事をするので、2倍のパワーが出る理屈だ。 それに、4ストローク・エンジンのような複雑なバルブ駆動システムが要らないので安く作れるし、軽くできる。整理すると、2ストローク・エンジンの4ストローク・エンジンに対する強みは、小型、軽量、高出力、低コストとなる。法規上小さな排気量しか認められず、商品上安く作らなければならない軽自動車に2ストローク・エンジンが好まれたのは、こうした特徴による。 ただ、排ガス性能に関してはいかんともしがたく、現在は乗用車に比べて地球環境に与える影響が小さな小型屋外作業機械を中心に生き延びている(そこにも、排ガス規制の動きが強まっているが)。小型屋外作業機械とは、チェンソーやパワーブロワー(落ち葉を集めたりするのに使う)、刈払機などを指す。
からの記事と詳細 ( 2ストローク・エンジンに未来はあるのか?(GQ JAPAN) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース )
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