音速を超える衝撃波のエネルギーが、宇宙飛行の推進力となる。名古屋大学未来材料・システム研究所は、宇宙航空研究開発機構(
「より安全に、長時間の稼働に耐えうるものにしていく」。笠原教授は研究室のメンバーと、エンジンの改良作業を続けている。
デトネーションエンジンの仕組みはこうだ。メタンガスと酸素の混合ガスを爆発的に燃焼させ、エンジン内部に、秒速2キロ・メートルもの燃焼を伴う衝撃波「デトネーション波」を発生させる。衝撃波は高圧の燃焼ガスを生成、それが噴き出し、ロケットの推進力となる。
従来のエンジンは、燃料の圧縮と燃焼を別々に行っていた。デトネーションエンジンは、両者を同時に行うことで、
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笠原教授らは、衝撃波を一定間隔で次々と発生させる「パルスデトネーションエンジン」と、円筒構造内で衝撃波を回転させ、連続して発生させる「回転デトネーションエンジン」を組み合わせたシステムを開発。主に「回転」でロケットを飛ばし、「パルス」で姿勢の制御を行う。
昨年7月27日には、デトネーションエンジンの宇宙飛行の実証実験に、世界で初めて成功した。JAXAが鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所から、笠原教授ら開発のシステムを搭載した観測ロケット「S520」31号機を打ち上げたのだ。笠原教授はコントロールルームで、「祈るような気持ちでロケットの状態を監視していた」という。
飛行中のエンジンの状態などを記録したデータはカプセルに入れられ、打ち上げから約40分後、奄美大島沖に着水して無事「帰還」。ヘリコプターで回収されたとの連絡をメールで受け取った笠原教授は、ホッと胸をなで下ろした。
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チームは初回の飛行データを改良に生かし、早ければ2024年7月、再び観測ロケットによる実験を行う。初回はガス燃料を使い、回転デトネーションエンジンで6秒間、パルスデトネーションエンジンで2秒間×3回噴射させた。次回は、より長時間の飛行の実現に向け、ガス燃料より体積が小さく、大量に積載できる液体燃料に切り替える。エンジンだけでなく、燃料のタンクや供給系を一から設計し、システムの総合的な見直しを進めている。
成功すれば、いよいよ地球周回軌道上での実証実験が見えてくる。「簡単には私たちの技術をまねすることはできない。世界の先頭を走っている」と胸を張る。
「このシステムを搭載したロケットが、月や火星のさらに向こう側へ飛ぶようになれば。いずれは、太陽系外の惑星の探査も可能になるだろう」。ぐっと未来をたぐり寄せた手応えを胸に、笠原教授は、宇宙のかなたへ思いをはせている。(原田展)
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