エンジンの大変革を経た軽自動車
税金、保険、ランニングコストと維持費が安く、車体サイズもコンパクトであることから、軽自動車は日本独自の車両規格として多くの人に重宝がられ、親しまれてきた。現代の主流は、660ccのエンジンを使い、スペース効率に優れたFF方式でまとめられている。だが、その歴史を振り返ると、まったく異なる形態をたどってきたことが分かる。軽自動車の進化の流れには敬服するばかりだ。
黎明期から三つ巴のスズキ、スバル、ホンダ
軽自動車の発端は、1955年に登場したスズキ・スズライトだった。
だが、当時の国民車構想に沿ったかたちで要求性能を満たしたのは、富士重工(現スバル)が1958年に作り上げたスバル360だ。求めやすい価格設定とした上で、大人4人が乗れる車内空間、乗員を快適に移動させることができる十分な動力性能と、要求性能の敷居は高かったが、航空機メーカーが母体となる富士重工だけあって、合理設計による高性能、軽量化の技術には幾多の工夫があった。
後部にエンジンを搭載して高い居住性を確保
そのひとつが、決められたボディサイズを可能な限り有効に使うためのスペースユーティリティ術だった。エンジン/トランスミッションのパワートレーン系を可能な限りコンパクトにレイアウトすることで、その分を乗員の居住空間に振り分けよう。こんな思想が生み出した駆動方式がリアエンジン/リアドライブ(RR)方式だ。ちなみにスズライトはフロントアクスル前にエンジンを積むフロントエンジン/フロントドライブ(FF)方式だった。
エンジンは、4サイクルより軽量コンパクトで、出力性能でも有利な空冷2サイクル方式を選択。車体も、1グラムでも軽く強く作らなければならない航空機メーカーらしい発想、手法で、たとえば2つの構造部位で3つの機能を受け持つ合理設計で作られていた。こういうところが富士重工の真骨頂だったと言えるだろう。
パワートレーン系をコンパクトにまとめるという点では、フロントエンジン/フロントドライブ(FF)方式も同じではないか、という見方もある。だが、駆動輪と操舵輪が同じタイヤとなるFF方式の場合、エンジン出力を正確に伝える等速ジョイントが必要で、当時はまだこの技術が未成熟だったのだ。結果的に残る選択肢はRR方式というわけである。
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