日本銀行が四半期ごとに実施している企業短期経済観測調査(短観)の6月調査で、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス14と、3月の前回調査から9ポイント改善した。改善は4期連続で、2018年12月調査(プラス19)以来の高水準。市場予想はプラス16だった。
世界経済の回復が進む中、大企業・製造業では16業種のうち、化学や非鉄金属、はん用機械、電気機械など14業種で改善。一方、世界的な半導体不足の影響が出た自動車は、前回から7ポイント悪化のプラス3だった。
大企業・非製造業はプラス1と前回から2ポイント改善し、5期ぶりにプラス圏に転じた。娯楽業を含む対個人サービスや運輸・郵便など12業種中8業種で改善した。ただ、新型コロナウイルス感染症の企業心理への悪影響は全体として和らぐ方向にあっても、非製造業の回復ペースは製造業に比べて鈍い。
先行きは大企業・製造業がプラス13と1ポイントの悪化が見込まれている。日銀によると、木材・木製品、化学、食料品などで原材料価格の高騰による企業収益への影響を懸念する声が出ている。
キーポイント |
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エコノミストの見方
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員:
- 企業が景気の先行きに関して警戒感を緩めているのが見て取れる
- 国内でのワクチン接種の広がりや海外経済の回復に伴った需要増などが主因となり、業況感の改善につながっている
- 業況感の改善は今後も続くとみられ、景気の回復もよりしっかりしたものになることが予想される
- 設備投資は、デジタル化など投資ニーズがある中で企業収益の予想も改善しており、しっかりとした計画になっている
詳細(日銀の説明)
- 製造業は輸出・生産が増加する下で改善が継続している。IT関連で幅広い業種で改善が見られた。機械関連では国内設備投資の持ち直しの好影響を指摘する声もある一方、自動車の悪化は半導体不足の影響
- 非製造業は緩やかに改善が続いているが、業種によってまちまち。コロナ再拡大や緊急事態宣言を受けて業況判断を下げている先もあるが、前年度に比べれば改善しているとの声も
- 先行きはおおむね横ばいだが、改善を見込む先では半導体不足の影響緩和を期待する声も。悪化を予想する先は引き続きコロナの下での不透明感のほか、原材料価格の高騰による収益悪化を懸念する声が聞かれた
- 設備投資は大企業の20年度の実績が過去平均を下回るやや大きめの下方修正で着地した一方、21年度計画は過去平均を上回る伸び率となっている
- 販売・仕入価格は、原材料価格の上昇を受けて仕入価格が上がっており、一部には販売価格に転嫁する動きも
背景
- 米国や中国を中心にワクチン接種が進展する中で、海外経済は回復力を強め、外需は好調を維持。出遅れていた国内のワクチン接種にも加速の動き
- 黒田東彦日銀総裁は6月の金融政策決定会合後の会見で、海外経済の回復を背景に先行きは「前にみていたよりも、明るい展望を持ち得る」と発言
(詳細を追加し、エコノミストコメントを差し替えて更新しました)
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