三菱電機が鉄道車両向け空調機器の製造過程で、長年にわたって出荷前に必要な検査を怠ったり架空のデータを記入したりしていたことが関係者への取材で判明した。不正な検査は35年以上前から繰り返されていたとみられる。同社は「安全性に問題はない」としているが、詳しい社内調査や顧客への説明に着手した。
関係者によると、空調機器は長崎製作所(長崎県時津町)で製造し、JRや私鉄など全国の鉄道会社に納入している。快適な温度、湿度を保つための制御機能や省エネ性能のほか、防水や電圧の変動などへの耐久性も求められる。
同製作所はこれらの性能について、出荷前に顧客が指定する方法で検査をする契約を顧客と交わしていたが、実際は指定された方法とは異なる条件で検査したり、一部の検査をしないまま架空の検査結果を成績書に記入したりしていた。こうした不正は少なくとも1985年から続いていたという。現在使われている製品のうち、少なくとも数百件以上が対象になるとみられる。
三菱電機は今年6月中旬に不正を把握。実態を確認するため社内調査を始めた。これまでに顧客から不具合に関する指摘などはないとみられるものの、検査の不備が疑われる空調機器の出荷をすでに停止し、JRなど一部の納入先へ説明するとともに、経済産業省にも報告している。
三菱電機は毎日新聞の取材に「調査を進めているのは事実。製品そのものの安全、機能、性能には影響がないことを確認している」と回答した。
同社のホームページでは自社の空調機器について「製作、納入、保守までトータルに提供し、国内で高いシェアを誇る。その信頼性から、日本国内の新幹線、特急、通勤電車などはもとより、ニューヨークやロンドンの地下鉄車両、欧州の高速車両など、海外での鉄道にも採用されている」と説明している。
三菱電機では、2018年にも鉄道車両などに使う産業用ゴムを製造する子会社が必要な検査を行わず、品質基準を満たさないゴム部品を出荷していたことが発覚。今年5月には安全認証の基準を満たさない電気制御部品を国内外に計215万台出荷していたことが明らかになっている。【井川諒太郎】
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