個性的な911
今年のオートモビルカウンシルでも、空冷時代のポルシェ911は複数台展示されていた。しかも、911の空冷モデルに限定した展示コーナーもあったほど。
その場で購入出来るヘリテージカー販売コーナーにも複数の911があったが、もっともユニークだったのは、空冷911用のエアコンキットを開発・販売している「コアスピード」ブースで見かけた、GT2スタイルの993だった。
注目すべきは、プライスボードに小さく記されている「LS1」の文字だ。
ベース車両は911カレラ(993)のティプトロニック仕様。
数年前からオートモビルカウンシルに出展しているコアスピードは、個性的な空冷911を展示することでも知られている。
2019年のオートモビルカウンシルでは、1970年型911に、カレラRSRのような前後フレア・フェンダーを与え、かつ930ターボ用のエンジンを搭載したデモカー「Classic Porsche Turbo RSR Restomod」を展示し、話題を集めた。
昨年は、1983年型911SCをもとに、“往年のラリースタイル”をテーマに製作された「Baja Frosch(バハ・フロシュ)」を展示。車高を大幅にリフトアップしたワイルドな姿は、印象的だった。
リアに搭載されるエンジンは、かつてのシボレー「カマロ」や「コルベット」に搭載されたゼネラルモーターズ製5.7リッターV型8気筒ガソリンOHV。
そして今年のブースにひっそりと置かれていたのは、最後の空冷911である993の改造車だった。ポルシェのイベントなどではしばしば見かける、GT2ルックの1台。前回、前々回の展示車と比べれば、見た目の個性はそれほど強くない。
「いったいコアスピードは、どんな911で度肝を抜こうとしてくるだろうか?」と、勝手に期待していた筆者は、ちょっと肩透かしを食らった感も……。
ところが展示用の小さなボードをよくよく読んでみると「LS1 Powered Porsche 993」とあった。
GM製V8エンジンを搭載!
この“LS1”が意味するのは? コアスピードの大坪代表に訊いた。
なんと、展示されている993のテールエンドには、シボレーのV型8気筒ガソリン・エンジン「LS1」を搭載しているというから驚いた。
V型8気筒ガソリン・エンジン「LS1」を搭載したシボレー「コルベット」(5代目)。
© GM
LS1は、かつて「カマロ」や「コルベット」などに搭載されたゼネラルモーターズ製5.7リッターV型8気筒ガソリンOHVだ。
大排気量ゆえに、「おそらく外寸も相当なサイズだろう……」と、考える人は多いだろう。しかし、実際は天地が低く、カムシャフトをブロック側に置くOHVであることからヘッドも小さい。しかもLS1は総アルミ合金製だから、重量も993のオリジナル・エンジンとあまり変わらないという。
ちなみにアメリカでは、LS1用のチューニングキットが多数販売されているそうだ。展示されている993のLS1もチューニングが施されているそうで、最高出力は500psほどに達するという。
展示車のリアに搭載されたLS1はチューニングが施されていた。最高出力は約500psに達する。
価格は990万円
展示車両は、後輪駆動+ティプトロニック(AT)仕様の「993カレラ」がベースだ。「どうせ大改造を施すのだから……」と、993系の911シリーズではもっとも安価に入手できる個体を選んだという。
トランスミッションは水冷911の開祖「996」シリーズで使われたゲトラク社製G50型6速MTに換装された。LS1との連結のために、ベルハウジングに取り付けるアダプターを新造したそうだ。また、エンジンや補器類のレイアウトは苦労を重ねたとのこと。
フロントシートはバケットタイプに換装されている。
ステアリング・ホイールはMOMOに換装。
アメリカ製の鍛造アロイホイール「FIKSE forged」を履く。
リアのエンジンフードを開けると、まるでメーカー純正であるかのごとく、LS1エンジンがきれいに収まっているのが印象的だった。
アメリカでは、911にV型8気筒エンジンをコンバートする前例はいくつもあるようだ。「日本人があまりしないようなモディファイを、“ジャパン・クオリティ”で仕上げてみたい」という大坪代表の想いは、この1台に体現されていたように思う。
展示車の価格は990万円。装着されていたアメリカ製の鍛造アロイホイール「FIKSE forged」だけでもけっこうな金額(1本10〜15万円か)となってしまうはずだし、完成度も高いから、この価格はリーズナブルかもしれない。
文と写真・武田公実
からの記事と詳細 ( アメリカンV8エンジンを搭載したポルシェ911に注目! - GQ JAPAN )
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