ベスト・デザイン911
吉田 その衝撃吸収パンパーをさらに巧妙にデザインしたのが、964ともいえる。930のバンパーをさらに進めて、ボディに一体化した。
スズキ 個人的には、これがベストデザイン911だと思う。
ーー964といえば、カレラ4が初めて出た911でもあります。
吉田 最初のカレラ4は本当に曲がらなかった。年を経るごとに確実に曲がるようになっていったけど、本当にハンドリングがほめられるカレラ4は993になってからだ。
スズキ でも、993になると、まったくちがうクルマだから。
吉田 サーキットで各世代の911を乗り較べると、シャシーが一気に進化した感があるのは、930から964になったとき。964と較べると、930は重心が高いというか、リア・エンジンの悪い意味での恐怖感がまだ残っている。
スズキ ポルシェが経営的にいちばんキツかったのが964の時代だ。964ターボの開発のとき、トヨタからエンジニアを呼んで「カイゼン」して、工数を40%減らしました……なんて自慢していたな。
吉田 完全にハンドメイドだった356から911になったときもそうだけど、911でもモデルが替わるたびに、「ポルシェはまた利幅を増やした」と思わせる部分はある。
ーー911が新しくなるたびに「またコスト・ダウンした」と言い切るエンスージァストもいますよね。
吉田 ……そうとは思いつつも、911の場合は、クルマが確実によくなるから納得してしまうんだ。
スズキ でも、964は今から見ると素直に魅力的だ。911全体の進化過程では中途半端かもしれないけど、それゆえの魅力もある。昔ながらの911の味がありつつも、パワステとエアコンがつく。
吉田 普通に乗るのに必要な装備がすべて備わっていながら、ナローに通じる味わいもしっかりある。
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