マツダは14日、同社が世界で初めて量産化に成功した「ロータリーエンジン」を発電機として搭載したプラグインハイブリッド車(PHV)「MX-30」を11月に国内で発売すると発表した。エンジンの軽量化で航続距離を伸ばし、価格も423万5千円からと電気自動車(EV)モデルよりも約27万円抑えた。消費者に多様な選択肢を提供する。
マツダは今回、新しいロータリーエンジンを開発した。2012年にロータリーエンジンを搭載した車両の生産を終了しており、復活は11年ぶり。欧州と日本のみでの販売を計画する。既に欧州では1月から予約受け付けを始めており、「着実に予約をもらっている」(上藤和佳子主査)。国内では年間約2万台の駆動ユニットを生産できる体制を整えており、国内での月間販売台数は300台を目指す。
エンジンを使わない場合の航続距離は107キロメートル。ロータリーエンジンで発電することで約800キロメートル走行できるという。出力が同規模の一般的なガソリンエンジンに比べ、今回開発したロータリーエンジンは2割小さい。車両設計の自由度が高いうえに軽量化できるため、EV走行での航続距離を伸ばすことができたとしている。
1日の走行距離が100キロメートル未満の顧客が9割以上を占めると見込み、EV走行の航続距離は100キロメートルを目標に開発した。「EVのように使いながら長距離走行も充電の心配なく出かけたいというニーズに応える」(上藤主査)
価格は423万5千円からとEVモデルの最低価格(約450万円)より抑えた。コストを抑えられた背景の一つが工程の集約だ。これまで生産していたロータリーエンジンと比べ、加工工程を50から9に集約。1台の工作機械で燃焼室や外枠の加工ができるようにした。
軽量化も大幅に進んだ。今回、MX-30に搭載するロータリーエンジンは12年に生産を終了したロータリーエンジン搭載車のRX-8に比べて、15キログラム軽量化した。エンジンに使う素材を鉄からアルミに変更した。
本社工場(広島市)で生産する。スポーツカー「ロードスター」や小型の多目的スポーツ車(SUV)「CX-30」などを生産しているラインで製造する。限られた設備で複数の車種を製造する「混流生産」で効率化した。
ただ、収益化のハードルは高い。マツダは30年に世界販売の25〜40%をEVにする計画。小島岳二取締役は「将来的にはEVに収れんされていくだろうと思うが、その過程でプラグインハイブリッド車が必要となる」と話す。PHVやHVなどを幅広くそろえて電動化シフトに対応する。
世界のPHV市場は中期的に拡大する見通しで、米アリックスパートナーズは27年の世界の新車販売が9370万台で、EVが全体の23%、PHVが7%と予測する。PHVは27年に650万台規模で、23年比で6割増とみる。
今回のロータリーエンジン搭載のPHVは小型車向けに開発されており、大型SUV「CX-60」や「CX-90」は一般的なエンジンを使ったPHVを展開する。経営資源が限られる中でも、ロータリーエンジンの研究開発を続けてきた。
小島氏は「ロータリーはマツダの歩んできた歴史そのもの」と話す。今後は水素エンジン車やカーボンニュートラル燃料への対応も検討する。
(淡海美帆)
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