◆「ハイブリッドのくせに燃費悪いじゃん!」と大騒ぎしないでほしい
今回のワンポイント確認は、「あのロータリーエンジンが復活したけれど、発電だけに使うってどういうこと?」である。
最初にきっぱりお伝えすると、マツダ『MX-30 ロータリーEV』は電気自動車(以下、EV)である。名前にもそうある。たしかに、モーターとエンジンが搭載されているのでハイブリッド(以下、HV)だし(エンジンが発電するやり方は、日産『ノート』と同じシリーズハイブリッド)、コンセントから充電もできるHVはプラグインハイブリッド(以下、PHEV)と呼ぶ。そういう意味ではこのクルマもPHEVなのだが、しかし、コンセプトが違う。軸足が完全にEVなのだ。
マツダ MX-30 ロータリーEVなので、改めて最初にきっぱりお伝えすると、カタログ燃費の15.4km/リットルという数値を見て「うわ、HVのくせに燃費悪いじゃん!」と大騒ぎしないでほしい。日々の生活はEVゆえに、安価な電気で事足りる。遠出のときに充電設備を探して胃がめくれる思いをしないよう、リスクマネージメント的にエンジンが発電するのである。比較的安い電気を使うことに重きを置かれているため、経済的にも悪くない。
走行モードは3つ。EVで走り、バッテリー残量が45%を切るとエンジンが始動して発電する「ノーマル」。電気だけでバッテリーの電力がなくなるまで走る「EV」。そして、走りながら設定したバッテリー残量まで充電する「チャージ」である。
◆ロータリーエンジンの「音」は?
マツダ MX-30 ロータリーEVマツダのこだわりであるドラポジがしっかりとれる運転席に座り、スイッチをオンにしてノーマルモードで走り始めると、まず、静かさにため息が出る。EVは総じて静かなのだが、アクセルペダルの踏みやすさというか、踏んだときの加速していく感覚のリニアさというか、違和感のなさに一瞬で安心してしまい、よけい静かに感じられるという表現がしっくりくる。
ハンドルを握りながら左にあるパドルシフトを操作すると、下り坂ではエンジンブレーキのように、いや、比較できないほどなめらかに速度を抑えられる。下り坂は速度が上がって怖いという人もこれなら怖くない。逆に上り坂では、右側にあるパドルシフトを操作すれば軽々と進む。アクセルが軽くなるので高速走行中などにこうしておけば、燃費(電費)がよくなるのではと期待したが、アクセルを離したときの回生ブレーキでためる電気も少なくなるので、トータルでは効果はないらしい。
マツダ MX-30 ロータリーEVノーマルモードで走り続け、バッテリー残量の表示が45%以下になったところで、ロータリーエンジンの出番である。ところが、高速走行中では、風きり音とロードノイズ(タイヤが路面に当たって出す音)とがごちゃまぜになって、ぼーっと走っていると気が付かないほどだ。速度を下げると、やっと、ロータリーエンジンの音が聞き分けられる。低くうなるような音。一般道ではあきらかに音が耳に届くけれど、エンジンがかかってもかからなくても、かかる瞬間も、振動はなく、操作性もアクセルペダルの踏力の変化もない。
白状すると、エンジンがかかって、もしくは、チャージモードにして強制的にエンジンをかけて充電を始めると、アクセルが重い?という気がした。けれど、確認するとそのような事実はなく私の気のせいだった。エンジン音の重みとほんの少し変わる車内空間の雰囲気に、そういう気にさせてられていたようだ。
また、エンジンがかかっている時間は、予想よりはるかに短い。ちょこっと充電したら休む。またかかって休む。そのたびに、ロータリーエンジンを示すおにぎりマークと充電中のライトニングマークがインパネに出るのだが、ちょいちょいっという感じなのである。ロータリーエンジンの特性で、一気にどかんと発電して充電できるため、エンジンを動かす時間が短くなるようだ。
◆安心して長距離ドライブしたくなるEV
マツダ MX-30 ロータリーEVMX-30は、ボディサイズも手ごろだし、なにより、コーナリングが安定している優等生なクルマ。注意点はドアが観音開きということだ。後ろのドアは、前ドアを開けないと、開くことができない。小さな子どもは勝手に降りられないし、前後開けば開口部が広く、後席からの乗り降りは楽になるけれど、人の行動パターンによっては使いにくいこともあるだろう。
今回のワンポイント確認、「あのロータリーエンジンが復活したけれど、発電だけに使うってどういうこと?」は、ロータリーエンジンの特性を活かしたEVは、安心して長距離ドライブしたくなるEV。MX-30だけでなく、早くほかの車種にも展開してくれないかな、である。
マツダ MX-30 ロータリーEV■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。最新刊は「法律がわかる!桃太郎こども裁判」(すべて講談社)。
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